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全オリジナル・アルバム FromワーストToベスト(第33回) フー・ファイターズ 10位〜1位

どうも。

では、昨日、最後にお約束した通り

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From ワースト Toベストをフー・ファイターズでやってみたいと思います。今回、彼ら、この企画をやるのに非常にちょうどいいんですよね。なにせ、今回のアルバムが通算で10枚めになるわけですからね。上のようにちょうどいい具合に写真にも収まりますしね。あと、前からぜひやってみたいと思っていたバンドでもありました。

では、フー・ファイターズのFromワーストToベスト、行ってみましょう。まずは第10位から!

10.Sonic Highways (2014 US#2 UK#2)

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ワースト第10位は2014年発表の「Sonic Highways」。このアルバムはなにがいけなかったのかというと、これの前作が彼らのキャリア史上、最大級の成功だったんですよね。ツアーなんて2年くらいやってたし、その流れで10数年きてなかった南米までも来てくれたりして。ただ、その成功のあと、「次」に向けてのヴィジョンがいまひとつ定まり切らないうちに出してしまったアルバムですね、これは。先行シングルの「Something From Nothing」がメタルからの影響を指摘されていましたけど、別にそれがテーマなわけでもないし。「各曲にゲストを招いて8曲」と一応フォーマットはあるんですけど、ただ、デス・キャブ・フォー・キューティのベン・ギバードからゲイリー・クラークJr、カントリーのザック・ブラウンまでいろいろ呼んではみたものの、その共演の意外性に頼り切って、自分たちが「こうしたい!」という強い意思みたいなものが感じられなかったし。これ、今の感覚なら、むしろアルバムでなくEPで終わった方がよかったタイプの作品ですね。こないだブリング・ミー・ザ・ホライズンが「Post Human Survival Horror」でやったようなやり方で。そうした方が、このアルバムにとっては幸せだったんじゃないかな。

9.In Your Honor (2005 US#2 UK#2)

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9位は2005年の「In Your Honor」。これの前作にあたるアルバムをデイヴ・グロール、やたらお気に召さなかったようで、とにかく「ソングライティングの充実」を求めて作ったアルバムでしたね。その結果、「ロックサイド」と「アコースティック・サイド」で10曲の、2枚組計20曲のアルバムができてしまいました。僕自身は、彼が不満だという前のアルバムになんの違和感もなかったのでこの言動にまず驚いたんですけど、上がった結果を聞いてさらに違和感でしたね。20曲作ってリハビリしたつもりだったんでしょうけど、後世まで残ってる曲って「Best Of You」と、テイラー・ホーキンスの作った「Cold Day In The Sun」くらいと、かけた労力の割にインパクトの少ないアルバムになったような気がしてます。あと、「動」と「静」サイドをわけたことにより、「動」の部分が大仰になりすぎたのも個人的にはあまり好きじゃなかったかな。ラウド・ロック・ファンからのウケがこのころにすごくよくなったような気がするのもこの流れがあったからではないかと思います。

8.Echoes,Silence,Patience & Grace (2007 US#3 UK#1)

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8位は「Echoes,Silence, Patience &Grace」。9位のアルバムの次の作品ですね。これも基本路線は前作と変わりません。このアルバムは2枚組でこそないですが、アルバムの前半にハードな曲、後半にアコースティックな曲を多めに固めてます。前作からわずか2年でこれを、アコースティック・ライブ・アルバムの「Skin And Bones」をはさみながら勢いで作ったことからも、デイヴの中でこの「動&静」のモードがよほど熱かったのでしょう。ただ、このアプローチ、個人的にはさらに違和感ありましたねえ。「Pretender」が大ヒットしたことで一般ファンにはこのアルバムのハードな路線、受け入れられた感じはしましたけど、僕が90sから愛し続けた痛快なロックンロールとはやはり違うというか。ただ、それでもこっちの方が前作より好きなのは、曲のむだが少ないことに加え、後半のアコースティック・パートに強いマニア性を感じたから。とりわけ、バンジョーのインストによる「Ballad Of The Beaconsfield Miners」、そして続く「Statues」でトライしたニール・ヤング風のアーシーなフォーク・テイスト。このあたりには、よりフォークの真髄まで嗅ぎ取ってやろうとするデイヴの探究心の強さが伺えて、やはり憎めないですね。 

7.One By One (2002 US#3 UK#1)

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7位は「One By One」。デイヴ自身が長いこと「嫌いだ」といい続けているアルバムなので、ファンの印象がよくないアルバムなんですが、僕自身はなぜに彼がこのアルバムをそこまで嫌うのかがよくわかっていません。それどころか、彼らにとって非常に大事なアンセムが2曲あるんですけどね。ひとつは、ライブのショー・オープナーにしばし選ばれる「All My Life」、そしてそして、今やロックにとっての「911」以降の大きなポリティカル・アンセムで、彼ら自身も最近大統領選絡みで2回パフォーマンスを行っている「Times Like These」。この2曲がある限り、半永久的に重要なはずなんですけどね。ひとつ言えることがあるとするならば、このアルバムが2nd、3rdの延長線上にあって新機軸がないこと。そこのところにデイヴなりの不満があるのではないかなと、勝手に推測したりもするんですけどね。あと、その2曲以外が公にプレイされることが少ないせいで、久しぶりに聞き返した時に、「ああ、たしかにこの曲、あったね!」と、デイヴに愛され損ねた曲の輝きが損なわれて聞こえた、というのはあるような気はしましたね。ただ、本人が嫌うほど、悪いアルバムではないと思います。

6.Medicine At Midnight (2021)

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そして最新作「Medicine At Midnight」が6位です。今回のアルバムですが、前回のアルバム同様、これまでの彼らにない果敢な挑戦をしています。その基軸となるのは「ダンス」ですね。彼ら史上、10枚目にして初めて作った「横ノリ」のアルバムです。冒頭から女性コーラスを大胆にフィーチャーした70sのサザンロック風味のある「Making A Fire」にはじまり、ラテン・パーカッションを使ったグルーヴィーな「Cloudspotter」、ストーンズの「女たち」あたりを彷彿とさせる歌謡ロック調のタイトル曲と、前半にサプライズ要素が詰まってます。こういう曲を作ってしまうと、さすがに世界有数の人気バンドです、同時にもっとも保守的なタイプのハードなロックファンも多数つけてる彼ら(8位と9位のアルバムが好きじゃないのはそういう人が典型的に好きだからです。欧米圏だと目立つのです)なので嫌がる人も少なうないんですが、デイヴをはじめ本人たち自身が全くそんなことを気にしてなさそうなのがいいです。それによく聞けば、前作のアートな路線を受け継ぐ「Shame Shame」、ハードな「No Son Of Mine」、そして90sからの王道フー・ファイターズ節が聞ける「Love Dies Young」としっかりあるわけで。あと、今、彼らがこうした路線に踏み切れるのは、「ロックンロールのアルバムならいつだって作る自信」があり、そこに力強く戻るための実験なのではないのかなと思います。

5.Concrete & Gold (2017 US#1 UK#1)

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そして5位が、その「前作」にあたります、「Concrete & Gold」。このアルバムで彼らは、グレッグ・カースティンとタッグを組み始めるわけです。カースティンというと、代表作がアデルとかSiaといったポップなイメージがあったので、出る前から「フーファイ、セルアウトか?」などという声もちらほら聞こえてはきてたんですが、あがってきた作品を聞いて僕は「フー・ファイターズが9枚目のアルバムでとうとうコンフォート・ゾーン破りにきた」と、すごく興奮しましたね。デイヴ自身が「スレイヤーの作ったサージェントペパーズみたいな作品が作りたかった」というコメントがあるんですけど、実際にそうなったかどうかは別(「Run」にだけそれは感じますが)にして、彼らの向かっている方向がハードな方面から、スプーンに代表される渋めのインディ・ロックの方面に向かったことが伺えて嬉しかったですね。彼らの後期の代表曲の「The Sky Is A Neighborhood」に代表される後期ビートルズ色はかなり濃厚です。そして、その雰囲気を加えた形でのいつもの彼ららしい爽快ロックンロール「The Line」なども名曲です。カースティンが加わったことで、バンドとしての限界を超え出しているのはいいことだと思います。

4. The Colour & The Shape (1997 US#10 UK#3)

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4位は、これはちょっとサプライズかもしれません。「The Colour And The Shape」。「ええっ!それが1位じゃないの?」と思われる方も多いかもしれません。そりゃ、そうでしょう。世間一般ではこれが最高傑作説は多いものだし、僕自身もかなり長いこと、そう思ってきましたから。「Monkey Wrench 」「My Hero」、そして、これをやらないとライブが終われない彼ら最大の人気曲の「Everlong」。この3曲がある時点で最高傑作にしたいというのはわかります。僕はそこにアコースティックの名曲「Waliking After You」をつけたいです。ただ、これは昔からそう思っていたし、今回聞き返してもまた思ったんですけど、「ああ、My Heroまでまだかなあ」「早く飛ばしてEverlong聴きたいなあ」と思ってしまう自分の姿をどうしても否定できないのがこのアルバム、最大の弱点です。つまり、無駄に曲数多くて、捨て曲も少なくない、ということです。90年代のCD大全盛期の時代って、ブラーなんかが特に顕著でしたけど、アルバムにめいっぱい曲詰め込む習性があったんですけど、そのあんまりよくないところをこのアルバムに感じます。あと、出た年が97年でしょ?この年、名盤ラッシュで、それあげていくと、このアルバム、その中の上位に入り損ねること、多いんですよ。ということで、これをあえて1位から外してます。


3.Foo Fighters (1995 US#23 UK#3)

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そして3位にデビュー・アルバム、「Foo Fighters」が入りました。これは個人的には非常に思い出が多いアルバムですね。あの当時、自分も含めてニルヴァーナが消滅したことに意気消沈していた人が多かったものですが、まさか、あのバンドのドラマーだったデイヴが、こんなにもハイレベルなアルバムをフロントマンとして作ってくるとは誰が予想したか。しかも、楽曲レベルは、それまでのグランジ・バンドよりもむしろ高いくらいで、当時のアメリカのバンドだと、まだ出たてのウィーザーくらいしかなかった。それくらいに説得力のある強いメロディ、当時から書いてましたね。「This Is A Call」「I'll Stick Around」「Big Me」の冒頭3連発でも持っていかれますが、中盤の「Floaty」なんかも力強い曲です。この当時から、いろんな店舗間に対応できる器用なソングライターのイメージがありましたね。また、このアルバムは「ロック史上最大のデモテープ」なんて言われ方もした、基本、デイヴひとりで録音した宅録アルバムなんですが、今、改めて聞き返すと、やっぱり腕利きのドラマーですね。ドラムの出力センスが他のアーティ

2.Wasting Light (2011 US#1 UK#1)

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2位がこのアルバムですね。「Wasting Light」。今日のフー・ファイターズがあるのは、このアルバムがあるからだと、僕は信じて疑っていません。このアルバムは、「ラウド&アコースティック」な前2作を受けて作られたアルバムですけど、そこでのソングライティング機能を2つに分けるでなしに1曲1曲に凝縮した結果、90sのときとは少しテイストの違う、別のフー・ファイターズ・アンセムが次々と生まれた。そんな趣のアルバムでしたね。90sのときよりは引き締まって硬派、だけど、00sのときほど過剰でない、より密度の濃い、力強いロックンロールが彼らから聞かれるようになったと思います。「Rope」「These Days」「White Limo」そして「Walk」といったあたりは、2009年にベスト盤が出て以降の彼らの外せない定番になってるとも思いますしね。これ、よく覚えてるのは、当時飛ぶ鳥落とすTVオン・ザ・レディオのアルバムと同タイミングでレヴューして、内容がこっちの方がいいとわかったときにすごく興奮して。そうしたら予想があたって彼ら、10s年代を生き延びた最大の90sバンドになりましたね。この10年ものあいだ、レッチリもグリーン・デイもこのクオリティのアルバム、作れなかったんでね。その意味で彼らを、「アメリカのロック界のキング」にまで押し上げたのは、まぎれもなく、このアルバムです。

1.There's Nothing Left To Lose (1999 US#10 UK#10)

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そして1位ですが、「やっぱり、これ」というか、「これからはこのアルバムこそをフー・ファイターズの最高傑作といい続けて行きたい!」と思う、1999年作の「There's Nothing Left To Lose」。これをあげたいと思います。このアルバムも「Learn To Fly」「Breakout」「Next Year」「Stacked Actor」「Generator」と名曲揃いなんですけど、このアルバムは適度に短めだし、この前のアルバムで感じられる「Everlong、まだかなあ」な瞬間がほとんどない。捨て曲がほとんどないんですよね。だからアルバム全体、すごく締まって聞こえます。加えて、このアルバムから、デイヴ、ネイト・メンデルに加えて、前作では実はまだドラム叩いてなかった名手テイラー・ホーキンスが叩き始め、さらにギターにクリス・シフレという、今日のフー・ファイターズの核が揃った記念すべきアルバムなんですよね。もう、デイヴがドラム鬼しごきをしてドラマーが辞めてしまうこともこれでなくなってしまったわけです。さらに、「1999年に出た」というのが、実はこれ、かなり大きな意味があります。あの年は「ウッドストック99」でリンプ・ビズキットがヴァイオレント・パーティでオルタナティヴ・ロックの顔に泥を塗り、ブリトニーやバックストリート・ボーイズのアイドル・ブームで、トランプ政権時なんかよりもはるかにひどい極右テイストが一般社会に狂乱の渦を巻いていたんですね。そんな中、NINやフィオナ・アップルが「苦悩の90s」の総決算みたいなアルバムを出して評判は今日再評価されてるほどのクオリティにかかわらず固定ファン以外に全く売れなかった。そこにこのアルバムが90sのオルタナの良心をポジティヴな形で見せてふみとどまり、00s、10sに反撃し、さらには彼ら自身がロックのリーダー的な存在にまで至る下地を築いた。その意味ですごく重要なんですよね。「もし、これがなかったら今頃は・・・」とゾッとすることもあるくらいです。



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