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欧米のリスナーと実際に意見交換して感じた「ロックの危機」の実際のところ

どうも。

このところ、日曜の投稿に問題提起っぽいことを書くことが少なくないんですけど、今日もそんな感じでいきましょうかね。

たまにやる「ロックの危機」ということについて、また話そうかと思います。

先日、こんなことがありました。

3月3日、アメリカの音楽サイトStereogumの記事で、マルーン5のアダム・レヴィーン「もうバンドなんてない。今や絶滅種だ」という発言をしたんですね。

これに関して、ちょっと普段からの持論を言っておこうと思って、英語で投稿してみました。

「それはアメリカでのことだろ。イギリスのチャートをチェックしなよ。去年からたくさんのバンドが1位とってるよ。アメリカの問題はロック系のラジオがいい曲をかけないことだよ。テイム・インパーラとかフリート・フォクシーズ、ボニーヴェア、フィービー・ブリッジャーズとかさ」

この僕の根拠というのは

こういう風に過去にも書いてきたことです。アメリカのチャートというのはラジオで決まるのに、今、アメリカはロック系のラジオが信頼されず求心力がないから力を失っていることイギリスでは去年からものすごいロックの猛反撃が起きていること。これはまぎれもない事実だし、共感されたからこそ、ネット記事への投稿なのに「いいね」を39ももらえたと思います。

実際、僕の投稿に対しても

「もっといいバンドの例、使いなよ。You Me At Six、ブリング・ミー・ザ・ホライゾン、ビフィ・クライロ、アイドルズ、今度の金曜にはアーキテクツも1位だよ」と返したアーロンくんというイギリス人の投稿者もいました。

これ、かなり音楽通の返答なんですよ。実際、全部1位取った、かなりハード目な音のバンドですからね。

去年の夏から、イギリスのバンドのアルバム・チャートの実績、すごいんですよ。去年の6月以降の例をならべていくとですと。

1位・・・アイドルズ、ビフィ・クライロ、ヤングブラッド、You Me At Six、ブリング・ミー・ザ・ホライゾン、フー・ファイターズ、モグワイ、アーキテクツ

2位・・・スポーツ・チーム、フォンテーンズDC、デクラン・マッケンナ、グラス・アニマルズ、マキシモ・パーク

3位・・シー・ガールズ、ペイル・ウェイヴス

4位・・ブラック・カントリー・ニュー・ロード、スリートフォード・モッド

5位・・クリーパー

6位・・フィービー・ブリッジャーズ

8位・・ビーバドゥービー、シェイム

僕にとっては、ソロとかバンドとか関係ないので「ロック」というくくりにしてますけど、20アーティスト以上トップ10に入ってます。しかもその半分近くは20代のバンドですよ。

たしかに、こういうバンドたちからシングル・ヒットを聞かないので、それで目立たないところはあるものの、ここまでアルバム・チャートに毎週のようになにかしらのロック・アーティストが上位に入る状況はできてるんですよね。この状況で「バンドが死んだ」とはさすがに言えないですよね。

だから、アメリカだってやり方次第なんですよね。ロック・ファンが戻ってくるようなラジオの選曲、そのオンエアが増えない限りアメリカ国内での知名度が上がらないわけですから。

だから僕は上の投稿で、すでにアメリカのアルバム・チャートの上位に入って実績のあるアーティストの名前をあげたつもりだったんですよ。少なくとも、批評媒体、ネットの音楽ファンのある一定のコンセンサスを得た名前だと思って書いたわけですよね。

そしたら、どんなリプ返ってきたと思います?

「でも、どれもそんなにロックじゃないよな」って返されたんですよね。

そのあと、一部の投稿者とこの彼が議論になって「テイム・インパーラがロックか否か論」になってですね。

テイム・インパーラって、今の30代のバンドで音楽的な先進性でいけば一番かっこいいバンドですよ。そのバンドをポップバンド呼ばわりですからね。ちょっとあきれましたね。日本のロックファンのあいだでもそれはびっくりするんじゃないかな。その彼の投稿に「いいね」した人も9人いたというね。

だから、こう返してやったんですよ。

「彼らがロックバンドじゃないなら誰がロックバンドなの?ニッケルバックか?」って。

そしたら、この投稿者、「そうだ」って答えたんですよね・・・。

まあ、こういう会話になってしまうのも、これ、以前のコラムでも書いたんですけど、2000年代にアメリカのロック系のラジオ局がラウド・ロックに特化して他の音楽締め出しちゃった名残なんですよね、これ。

これに関しては僕も非常に辛酸なめてたからよくわかります。だって、この時代って、他の世界的にはストロークスだ、フランツ・フェルディナンドだキラーズだって感じで流行ってたのに、そういうアーティストより、アメリカでしか名前聞かない、今や誰も覚えてやしないポスト・グランジとかポップ・パンクのバンドの方が曲、かかってたんですからね。あの偏りたるや、本当にひどかったですからね。

だから、その10年くらいで育った人って、「ロックがうるさくなくちゃロックじゃない」みたいなことを主張したがるんですよね。というか、それこそが今、キッズにダサい認定されて人気落ちてるというのにね。アメリカの現行のラジオ局ではラウドなものは今はもうほとんどかけてません。

 で、その後も世の中的にはアーケイド・ファイアとか、ヴァンパイア・ウィークエンド、フリート・フォクシーズみたいな、いわゆるピッチフォークが押したようなインディ・バンドはラジオでは全く押されず、いきあたりっばったりにフォスター・ザ・ピープルとかホージャーの一発ヒット作るのに貢献したくらいで、それもアーティスト単位で押そうとかじゃなかったし。で、結局、イマジン・ドラゴンズとかtwenty one pilotsとかパニック・アット・ザ・ディスコみたいな、シーンに属さない、言い方悪いけどレコード会社とラジオが結託して押した産業ロック色の強いバンドは成功させるんですけど、こういうバンドには彼らが育ってきた草の根的なシーンみたいなものが全然ないから横に全く広がらない。だから、今もってアメリカのロックのラジオが何流したいのかわからないんです。

だって、一方で「ギターがうるさく鳴ってないといやだ」「インディ・ロックみたいなのはいやだ」みたいなこと言って聞く耳持たないロック系のリスナーがアメリカにはかなり一定数いるってことでしょ?こんなんじゃ、ロックファン、まとまりませんよ。今や、ネットの批評媒体で音楽探してるロックファンを多いんだし、イギリスのBBCはそうした批評媒体の旬をとらえてヘヴィ・ローテーション決めたりしてるので、アメリカもいい加減でそれを踏襲しろ、とも思うんですけどね。だって、いくらロックが長い歴史の変遷でいろんなサブジャンルが流行ったとはいえ、いつの時代も旬なサウンドが一番尊べられるべきであって。そこに旧世代のロックファンが干渉しすぎるから混乱してろくなことにならないんです。

こんあ感じじゃ、今、僕が一番押してほしいと思っている女性のロックが受け入れられるかも不安ですよ。だって、「ギターがうるさくなくちゃロックじゃない」なら、「女にロックは歌えない」なんてセクシストみたいなこというやつ出てきてもおかしくないじゃないですか。

もう、今のアメリカのロック系のラジオには、そうした旧世代の自分本位のわがままな意見流されたりせずに、今のかっこいいとこにこだわってシーン作ることを考えてほしいです。

ただ、ここまでイギリス持ち上げましたけど、イギリスのリスナーも、困ったタイプはいます。

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イギリス人プロデューサーのスティーヴン・ストリート。ブラーの「パークライフ」をプロデュースした人なんですが、彼が「2000年代はギターバンドにとって最後の見せ場だった」と語ったんですね。これが上のアダムの話の次の日でしたね。

これも当然、反論を多く生んでいたんですけど

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ジョニー・ライトさんという人と僕が議論しまして、彼が僕のあげたチャート・アクションに対して「でもモグワイとかマキシモ・パークみたいなベテランが売れたのであって若手が売れてないじゃないか」と言って、僕が「20代の若手で売れたのなんていくらでもいるよ」「それに、今、70代でも最高傑作が出せるような時代に40代のバンドだって十分若いよ」と例をあげて反論してたりした後に「だけどホワイト・ストライプスのSeven Nation ArmyとかヤーヤーヤーズのMapsとかフランツ・フェルディナンドのTake Me Out」みたいなヒットが今はないじゃないか、と言ってきたんですね。

もう、これもねえ。僕、これらのヒット曲のときに、まさにHard To Explainでこういう曲ばっかりかけるDJパーティやって賑わってもいたから、自慢もこめて、それこそ「今はダメ」という言い方もできる立場にはあるんですよ。でも、そういう上の世代からの下の世代へのダメ出しが良い芽さえ摘みかねないのを僕は知ってます。

だから、こう返しました。

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「比較なんて意味をもたないよ。各世代にそれぞれの時代のリアリティがあるんだから。90年代にさえ、60年代や70年代の方がロックはよかったってベイビーブーマーならいたし、彼らのいう通りかもしれないけど、それで?」

実際、今日の若いリスナーにとっては90sが一番大きな影響力になってたりもしますけど、そんな時代だって上の世代はダメ出ししようとしてましたしね。

たしかに今、ヒットのほとんどはSpotifyから出てて、そのほとんどがアメリカからのヒットに独占されています。それはトラップとかエモラップが大半でロックはなし。その影響が他の国も若い人たちにも及んでいる。それも事実だとは思うし、そこはまだこれからの課題だとは僕も思います。

だけど、その一方で


このグラス・アニマルズの「Heat Waves」みたいにオーストラリアのシングル・チャートで2週1位とった曲もでてきています。彼らはイギリスのバンドですけど、本国でも20位手前、さらにアメリカでさえも60位台にあがってきています。シングル・ヒットでさえも希望が消えたわけじゃないんです。

だけど、この曲も、さっき「テイム・インパーラはロックじゃない」の論持ってるような人には受け入れられないかもしれません。なにせ、今様のR&Bの影響受けた曲ですからね。

僕、今年のはじめにですね

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さっきと同じフェイスブックのインディ・ロックのグループであがった「The 1975はクソバンド」スレがたったときに反論したんですね。このグループ、平均年齢が高めで90sの世代がおおいんですけど、もう、ものすごい叩き放題だったんですよ。日本におけるThe 1975人気を考えたら嘘のようですけどね。彼らは音楽を表現する言葉もよくしらない感じでただ「ポップバンド」という表現だけでけなそうとしてたんですね。

だから僕は「彼らはプリファブ・スプラウト、ブルー・ナイル、スクリッティ・ポリッティ、インエクセスといった忘れられてたニュー・ウェイヴバンドの持っていたエッセンスを使って、R&Bやシティ・ポップ・リバイバルのファンにアピールしたんだから、そこは認めないといけないと思うよ」と返しておきました。

なんかねえ、今の欧米のロックファン、R&Bのエッセンスの吸収がうまくないですね。特に90sからしか音楽を聞いてないインディ・ロック・ファン。30、40代ですね。これ、逆に僕みたいな80s体験者には有利なんですよね。だってあの当時はAORもホール&オーツみたいものが人気あったし、ニュー・ウェイヴにもR&Bの影響は強かったですからね。逆に20代以下の若い世代にしてみたら、R&Bのエッセンスの吸収がうまいからこそ、1975もテイム・インパーラも、グラス・アニマルズも若いオーディエンスに届いているのに、それがポップのひとことで片付けられるんだもん。

これは5日に元ロッキングオン編集長の粉川しのさんとツイッター上で会話した時に彼女が発した発言なんですけど、これ、正しいと思います。これ、「欧米のインディ・ファンの頭の硬さ」も、かなりロック不振に影響与えてますね。

これ、不思議なことに、この件に関しては日本が対応うまかったんですよね。髭ダンみたいなバンドが顔になってシティ・ポップが一般的に大きなものになるくらい浸透したわけだし、星野源や藤井風みたいなアーティストがR&Bの影響受けつつ、それをバンド的な音でやろうとして、これもかなりマスで注目されてますよね。それで「あいつはポップに走った」なんて言われずに、進んだイメージで見られてて。だから他の国でバンドが危機って言われてる中、日本はバンドでもシングル・ヒットがちゃんと生まれてますよね?しかも、R&Bに感化されてサウンドの幅も広げて。

案外、日本が「バンドの危機脱出」のヒント、出してるんじゃないかとさえ思ったりもしてますね。

まあ、いずれにせよ、今年、まだまだロックはすごく楽しみですよ。だって、4月から6月にかけて

「もう今から楽しみでしかない!」と思える曲を出してるアーティストがこうやって揃ってますからね。



























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