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バート・バカラック 珠玉のベストテン

どうも。

では、遅れてしまいましたが

予告していました、バート・バカラックのランキング、行きましょう。筒美京平先生が「心のベストテン」なら、バカラックなら何が良いだろうと考えたんですが、イージー・リスニング的なイメージで考えて「珠玉の」で行こうかと思います。ちょっと昔の通販っぽい感じというか(笑)。

僕が「バカラック好きなら是非聴いてほしい!」と
思う10曲をピックアップしてますが、本来とても10曲で収まるような人ではないので20位から11位を先に発表しようと思います。

20.I Just Don't  Know What To Do With Myself/The White Stripes (2003)
19.A House Is Not A Home/Luther Vandross (1981)
18.Do You Know The Way To San Jose/Dionne Warwick (1968)
17.Always Something There To Remind Me/Sandie Shaw (1964)
16Arthur's Theme/Christopher Cross (1981)

15.Raindrops Keep Falling On My Head/BJ Thomas (1970)
14.My Little Red Book/Manfred Mann (1965)
13.Promises,Promises/Dionne Warwick (1968)
12.Are You There With Another Girl/Dionne Warwick (1965)

11.On My Own/Patti LaBelle & Michael McDonald (1986)

こんな感じですね。

やっぱり僕の場合、「バカラックの最大のシンガーはディオンヌ・ワーウィック」という考えがあるので、どうしても彼女の曲が多くなるんですよね。トップ10では、それでも2曲に抑えてますけど。

ここで2曲だけ触れておきましょう。

14位のマンフレッド・マンですね。バカラックはビートルズの「Baby Its You」にも見られるように、ブリティッシュ・ビートのバンドによるカバーもあったんですけど、これはブームの人気バンドの一つマンフレッド・マンに映画「何かいいことないかい、子猫ちゃん」の際に提供した曲です。

3コードのギターバンドがプレイする曲としてはエラくバカラックのてくせみたいなコードと展開目白押しで、演奏しにくそうな曲なんですが、
そこがいいんです(笑)。

これを翌1966年、ロサンゼルスの伝説のバンド、ラヴ、本当はドアーズじゃなくて彼らがレーベルのイチオシだったということで語られがちな彼らがこれをアヴァンギャルドにカバーしまして、全米チャートで52位のヒットにして、その後の「ダ・カーポ」「フォーエヴァー・チェンジズ」という名盤に備えます。

そして11位のこの曲。僕、こないだの追悼特集の際にも書きましたが、1980年代に3曲の全米1位を出した、バカラックの当時の妻、キャロル・ベイヤー・セイガーとのコラボ曲はアダルト・コンテンポラリー色が強すぎて正直好きじゃないんですけど、この曲は素敵なソウル・バラード。高音の伸びが素晴らしいパティと、フェイク部分の独創性の素晴らしいマクドナルドのスモーキー・ヴォイスとの絡みが絶妙です。

トップ10に行く前にあえて言っておきますと、もう、ほとんど60sです。やはり、この時期にバカラックが確立した楽曲パターンこそが最強です。なので、「雨に濡れても」や「ニューヨーク・シティ・セレナーデ」がお好きな方には向いていないかもしれませんが、コアなバカラック・ファンのツボは突いているような気はしてます。

では、10位から行きましょう。

10.Anyone Who Had A Heart/Dionne Warwick (1963 US#8 UK#42)

10位はディオンヌ・ワーウィック。バカラックと当時の専門作詞家ハル・デヴィッド、そしてその最高の解釈者ディオンヌによるトリオの最初の全米トップ10曲がまさにこれで、アメリカでのビートルズ・ブームと全くの同時期に存在感を放っていました。

 この当時、若い女性シンガーで全米チャートに入ると言えば、恋に恋するはっちゃけたアメリカン・ガールなイメージだったところ、この曲が持つダークな陰影は当時の他の曲と並べて聞くと明らかに異端で、そこに関係代名詞を使った(Anyone who had a heart、心ある誰か)という洒落た文学的フレーズを落とし込むセンスも光ってます。これがバカラックにとって初の全米トップ10でこそありませんが、快進撃はここからはじまります。

9.This Guy's In Love With You/Herb Alpert (1968 US#1 UK#3)

9位はハーブ・あるパートの「This Guy's In Love With You」。60sのお洒落な大人たちの御用達アーティストがバカラック、そして彼が所属していたレーベルA&Mの社長でもあった、ライト・ジャズのトランペッター、ハーブ・アルパート。その二人がタッグを組んだラヴソングです。

バカラックのスタッカートの効いた洒落たジャズピアノにハーブの独特のくぐもったトランペットが乗るだけでゾクッとするんですけど、そこに決して上手いとはいえないハーブが愛した女の子への愛を不器用に歌う様が微笑ましいです。圧巻は最後のAメロのリフレインのバックで入る、これまで淡々としていた演奏が急転してゴージャスにドラマティックになるオケ・アレンジ。あれでハーブの高まる思いを絶妙に表現しています。全米1位、納得です。

8.God Give Me Strength/Elvis Costello & Burt Bacharach (1996)

8位はエルヴィス・コステロとバカラックの共演。今回のランクインでこれが最も新しい曲です。これは1996年、若き日のキャロル・キングをモデルにした映画「Grace Of My Heart」の挿入曲ですが、ここでの60sのオーラが蘇ったようなバカラックの曲調とアレンジ、そしてコステロの熱唱が話題を呼びました。

これ、歌詞もですね、すごくハル・デヴィッドのマナーを踏襲してましてですね、どこにでもありそうな失恋ソングなんですけど、そこで「神の力を!」の次元にまでドラマティックに高めてしまうのが60sバカラック・ソングの力技でもあったわけです。この曲で最注目されたコステロとバカラックは、翌年1997年の大ヒット・コメディ映画「オースティン・パワーズ」に出演。さらに二人は98年に共作アルバム「Painted From Memory」も発表。これも好評を得ましたね。

7.I Say A Little Prayer/Aretha Franklin (1968 US#10 UK#4)

https://www.youtube.com/watch?v=7Ifw8JhDBvs

7位はアレサ・フランクリンの「I Say A Little Prayer」。「小さな祈り」。これもバカラック人気ナンバーとしては不可欠な1曲です。

 この曲は1967年にディオンヌ・ワーウィックがヒットさせた曲のカバーなんですけど、原曲のイメージをしっかり踏襲しながらも、パワフルなアレサのサビでのハイトーンを振り絞るだけ振り絞った絶唱と、肉感的なフィーリングさえたずさえたバッキング・ヴォーカルとのコール&リスポンスが生むゴスペル的高揚感。これは、いきおいクールに抑制した感覚を持ち味としていたバカラックやディオンヌには出せなかった、これまえ無関係だったアーティストだからこそが生みうるケミストリーだと思います。


6.Alfie/Cilla Black (1966 US#95 UK#9)

6位はシラ・ブラックの「Alfie」。1966年、若き日の英国名優マイケル・ケインを一躍有名にした映画「アルフィー」の主題歌です。この曲、当初バカラックが歌わせたかったディオンヌのヴァージョンをはじめ、シェールなど、この当時に多くの共作ヒットが生まれてます。

映画はっきり覚えてないんですけど、彼女の曲だったはずです。シラはブリティッシュ・ビートの時代に各レーベルに必ず一人いた女の子ヴァージョンでビートルズと同じパーロフォンの所属。歌唱力の高さで人気でした。このヴァージョン、ディオンヌのヴァージョンに比べれば声に伸びはないんですが、ちょっとカチコチに聞こえるところがイギリス映画の主題歌には合っていたように思います。バカラック自身も一番好きな曲のようですけど、相当な歌唱力必要なダイナミックなサビはいつ聴いても圧巻です。


5.The Look Of Love/Dusty Springfield (1967 US#22)

5位はこれまたイギリス映画の挿入曲です。ダスティ・スプリングフィールドの「ザ・ルック・オブ・ラブ」。これは007の「カジノ・ロワイヤル」の中の1曲ですね。

ダスティもシラ同様、この当時のビートガールのひとりでフィリップスの所属でしたが、ことソウルフルな歌唱力では抜きん出ていた人です。そんな彼女はバカラック・なんばーを早くから取り上げていて「Wishing And Hoping」や後にホワイト・ストライプスのカバーでも再評価のあった「I Just Don't  Know What To Do With Myself」などのヒットもあるんですけど、この曲の持つ哀愁と、ダスティのスモーキー・ヴォイスから漏れる吐息のセクシーさとのケミストリーで、やはりこの曲になってしまいますね。バカラックの持つ映画とロンドンのイメージの象徴でもあります。


4.Make It Easy On Yourself/The Walker Brothers (1965 US#16 UK#1)

4位はウォーカー・ブラザーズの「Make It Easy On Yourself」、「涙でさようなら」。今やカルト・アーティストとして知られるようになったスコット・ウォーカーが、美しいバリトン声のアイドルだった時代の、これが最初のヒットです。ウォーカー・ブラザーズというのは、「バロックポップの雛形」みたいな形で90sに再評価されて、まさにアッシュがこの曲をサンプリングした「Candy」というすごくいいシングルも出してましたけど、意外や、数ある代表曲でバカラック作はこの曲だけなんですよね。

この曲はバカラックのメロディと、ハル・デヴィッドの失恋感情を沈着冷静な言葉に収めた流麗な言葉、それをフィル・スペクターのような壮大なオーケストレーション、そしてスコットのディープな美声とのケミストリーが最高ですね。少しでもバロック・ポップに興味がある人なら、これは避けては通れない1曲です。

3.What The World Needs Now Is Love/Jackie DeShannon (1965 US#8)

3位はジャッキー・デシャノンの「What The World Needs Now Is Love」。「世界は愛を求めている」。これを歌ったジャッキー・デシャノンは彼女自身がソングライター、フォークシンガーとして知られた人です。これはディオンヌ・ワーウィックが「歌詞が説教くさい」と断ったと言われていますが、そういう内容だからこそ、社会意識のより強い人の口で歌われ、それがはまってヒットした、ということのようです。1965年はボブ・ディランの「ライク・ア・ローリング・ストーン」などフォークの台頭年でもあります。

ただ、この曲はそういうメッセージも大事なんですけど、バカラックのピアノが作るワルツの曲調。これが必殺技としてとにかく効いてるんですよね。このパターンって、その後のシンガーソングライターにも応用されてて、エイミー・マンとか、彼女のプロデューサーだったジョン・ブライオンに受け継がれてますね。

2.(They Long To Be)Close To You/Carpenters (1970 US#1 UK#6)

2位はカーペンターズの「(They Long To Be) Close To You」。「遥かなる影」。これはもう、本当に美しい、構成も見事な名曲ですよね。

 カーペンターズというのは、さっきハーブ・アルパートのところで触れたレーベル、A&Mの抱えた、1970年当時の期待のアーティストだったんですよね。そういうこともあり、もともとは1964年にディオンヌ・ワーウィックのアルバムの収録曲だったこれが引っ張り出されてカーペンターズに歌われたんですけど、このアレンジの変わり方がとにかく大成功でした。兄リチャード・カーペンターズのピアノ・アレンジに、ゆったりとすきまをいかしながら入る名手ハル・ブレインのドラム。そしてカレンのアルトの美声。サビでのコール&レスポンスのハーモ二ー。2回目のサビ終わりでチャック・フィンドリーのトランペット・ソロ。そして、終わったかと思いきや、最後のリフレインで繰り返されるハーモニー。なにもかも完璧です。人の名曲を巧みなアレンジ解釈で歌うことのできる兄妹でしたけど、これは最高傑作ですね。

1.Walk On By/Dionne Warwick(1964 US#6 UK#9)

そして1位は、ディオンヌ・ワーウィックの「Walk On By」。やっぱりバカラックの名刺代わりの1曲といえば、どうしてもこれになりますね。

もちろん、バカラック&デヴィッドの曲の最高の歌い手はディオンヌにおいて他はいません。彼女の曲を1位にすべきだと思うんですが、もう、条件がすべて完璧なんですよね。これは別れた元彼の姿を見るたびに泣かずにいられない女性の心理を歌ったものなんですけど、「ツッ、チャ、ツツ、チャ!」のR&Bリズムから重めに始まって、Aメロ進んだ後に「彼が通り過ぎる」という話のところでトランペット。ここまでは比較的淡々としてるんですけど、Bメロの途中で「I break down and cry」の裏で、すごく感情的に暗いピアノがちょっと不協気味に畳み掛けるんですよね。洗練されながらもものすごく暗いんですよね。

そして2コーラス目からストリングスでAメロからすごくゴージャスになったあと、2回目のBメロ終わりには前述のピアノに加え、女性バックコーラスが主人公の心を代弁するように「止まらないで(Dont Stop)」と釘を刺し、まだ若くて線の細い声だったディオンヌがなき震えるような声でフェイクを歌う。短いフレーズの中での音楽ドラマの演出がとにかく絶妙なんですよね。バカラックのコードや楽器の知識、スケールの大きなアレンジ力ゆえに産み得たものだと思いますね。


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