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「愛の不時着」も見終わった。 これも思いの丈を、10のポイントで語る(ネタバレ注意)

どうも。

たった今、これも見終わりました。

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はい。こないだも話したように、韓国で大ヒットして話題だったドラマ「愛の不時着」ですね。今はこれと、こないだここでも熱弁ふるった「梨泰院クラス」がKドラマの代表みたいに日本でも言われているみたいですが

いや〜、これも素晴らしかった!

というか、

完成度の高さでは、もう、これ、文句なし!

こう言い切れる作品でしたね。

これもぜひ、皆さんに見ていただきたい番組なので、今回も、見る予定のある方、または「見たい」と思われる方は、今回は読まないでください。もう既に見た、あるいは、「どうせ見ることはないだろう」と思う人のみ、ここからの文章を読んでください。

では、行きます。「愛の不時着」の一体、何が面白いのか。

①登場人物のバックグラウンドの掘り下げが見事

今回、まずなにがビックリかというと、脚本の構成、手際が本当に見事なんです!完全につじつまがあってて、唐突な出方をするものが全く見当たらないんですよ。

それを可能にしているのが、それぞれのキャラクターのバックグラウンドを細かいところまで詰めているところですね。

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たとえば、ヒロインのセリ。彼女はハングライダーの飛行の失敗で北朝鮮に間違って入国した女性ですけど、彼女は韓国を代表する若き女性企業家で、一見、欲しいものは何でも手にしてしまったように見える女性。でも、そんな彼女にも満たされないものがあった。それが「愛する男性」ということになるんですけど、なぜ、そうなるのか。それが幼い頃の複雑な家庭環境での育ちがそうさせてしまうんですけど、それをさかのぼりつつ話を進めるところがまず興味深いです。

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で、社交界の華である立場上、コミュニケーション能力が驚くほど高い。気配り上手な話術や、機転の早い賢さとユーモアのセンスで、遭難した先の北朝鮮の人々のハートをたちまちとらえてしまう、優れた動物的な感の持ち主でもある。それがあったからこそ、「韓国からの不審な侵入者」であったにもかかわらず、みんなが愛さずにはいられない。こういう設定はうまいなと思いましたね。

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相手役のジョンヒョクが迎えるんですけど、彼の設定もうまい。元は、ピアノの神童だったんだけど、7年前に起こった事件で優秀な軍人だった兄が亡くなってしまい、父親が軍のエライさんだったこともあって、従軍しなくてはならなくなった。しかも、親同士が勝手に決めた縁談までまとまっていた。ただ、本人としては、愛のない結婚に疑問を持っている。そこに突然、運命の人とも言えるセリが現れた・・・という設定です。

他の人も含め、こうしたバックグラウンドが、脚本家によって、かなり深いところまで行われた痕跡がはっきりと見て取れます。

②「これでもか!」というほど、ロマンティック!

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そして、この2人の恋愛が、ことのほかロマンティックです。「梨泰院クラス」のことを語った際、「全エピソードが生き様バトル」と書きましたが、それはこちらも負けてはいません。こっちの場合は、「いかに相手への愛を身をもって表すか」。この、思いやりの応酬で魅せますね。

セリとジョンヒョクの場合は、それを文字通り「命がけ」でやるんですね。だから生傷も耐えないし、命さえ失いそうにもなるんですけど、それほどまでに究極的に献身的。これが見ててですね、涙誘わずにいられないんですよ。

さらに

実は昔、無意識のうちに、スイスの風光明媚なところで会っていた!

もう、この「気取り」がすごいでしょ(笑)?こういうところはすごく「女の子の夢」ぽいところではあるんですけど、それを可視化させてしまう。しかも、その一瞬の出会いをふたりとも微かに覚えていたところに「赤い糸」を感じ、愛が更に深まらずにいられなくなる。このあたりが、全体の半分超えたあたりからかな、顕著になるんですけど、もう涙腺崩壊ですよ(笑)。

③「フェミニズムの観点から見た男性像」の打ち出しに成功

このですね、ジョンヒョクのキャラが

普段は口数少なく温厚でピアニストという、究極の文化系なのに、いざというときに抜群の運動神経で喧嘩に強く、守ってくれる。もう、絵に描いたような女性の理想像の具現化です。

でもねえ、これが、現在のようなポリコレの世の中では説得力を持つんですよね。そこに関しては、「男性目線のかっこいい男」よりもやっぱり輝いて見えるかなあ。男だったら「喧嘩は強い」ところまでは描けても、「ピアニスト」という発想にはなりにくいですからね。で、しかも、その理想像が、「最高にデキる女」のセリによるもの、という設定がいいんですよね。ただ、「守られる」だけじゃない。基本、守られないでも大丈夫なんだけど、人生の本当のピンチの際に肉体的にも精神的にも頼りになる男性像。このドラマは、男女2人の、人間的に成熟した姿同士を提示することに成功してますね。

あと、象徴的だったのは

セリがジョンヒョクをデパートの紳士服売り場でメイクオーバーさせるシーンがあるけど、これがもう、女の子からおばさままでがキャーキャー言いそうなセクシーさなんですよね。これは面白いと思いましたね。

だって、ロマンス映画でこういうシーンって言ったら、よくあるパターンとしては、例が古くて申し訳ないですが、「マイ・フェア・レディ」とか「麗しのサブリナ」とか、「男性が女性を美しくする」パターンでしたからね。このシーンが、それの男女逆パターンを表現したのは、これ、意識的だったような気がします。

④完全なる「恋のルーザー」を作らない

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あと、このドラマのロマンスはセリとジュンヒュクだけではありません。アルベルト・グーとダン、このふたりの、共にセリジュンヒュクには縁のなかった2人も恋をつのらせます。

怪しいビジネスで北朝鮮にやってきたグーは、本来は悪いやつで、韓国にいた頃にセリにフラレている。ダンの方は、見合い結婚で、「自動的にジョンヒョクと結婚するのが当たり前」だと思いこんでいた、プライドが高すぎて周囲の人から嫌われるタイプの女性。でも、この。本来なら悪役扱いになってもおかしくないこの2人が、グーの恋のアドバイスをきっかけに、求めていた愛に目覚め、それによって人としての良心を育んでいく。ここも見ものです。

ロマンスものって、いきおい、「主人公2人の愛だけが正義」みたいな感じに陥りがちなんですが、この、本来人気のないはずの2人が良いところを見せてロマンスを築く姿は、恋愛をどんな人でも平等であることを示しているようで夢があります。

⑤北朝鮮の人々に、人間的で温かい視点

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あと、このドラマの画期的なところは、舞台が北朝鮮であることなんですが、韓国の立場から、北朝鮮を「敵対するもの」として描くのではなく、「そこに生きている普通の人びとに罪はない」として、彼らをすごく純朴に描いているところですね。

この上の4人はジョンヒョクの部隊のメンバーなんですが、すごくユーモラスで、ジョンヒョクもセリも心から愛してます。当初、セリを嫌っていたはずの嫌韓キャラのリーダー格まで、突っ張りつつも、本当はセリに敬意は払ってる。後の3人もすごく愛らしい北朝鮮の若者で、それぞれ「イケメン君」「韓国ドラマ・ファン」「マザコン子供」とうまくキャラ分けされてます。


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あと、このジョンヒョクの管轄する地区の奥様連中、この人たちもいい人たちです。どこの世界も奥様たちは噂好き、詮索好きなことは示しつつも、いったんセリのことが好きになると、すごくかばって愛そうとする。彼女たちも上の中隊カルテットと同じく、「正しいこと」を信じたい人たち。こういう北朝鮮の描写はすごくフェアなように思いました。

あと

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本来、北朝鮮のネガティヴな側面であるはずの、「スパイ」「盗聴」なんですが、ここではそれも、ひとりのキャラクターによってプラスに転化されることで生かしてます。ただ、この職業は北朝鮮の人々のあいだでも嫌われてて、この写真の人もそれでしばしいじめを受けるのですが、そこをジョンヒョクの兄にしばし助けられ、その恩義でジョンヒョクとセリに尽くそうとする、大事なキャラクターにもなります。

彼らがすごく、ドラマの潤滑油的な役割を果たしてますね。

⑥コメディとして優秀

あと、これ、コメディとしての質がすごく高いんですよね。

セリとジョンヒョクのやりとりもロマティック・コメディ的ではあるんですが、前述の中隊、奥様連中も基本は「お笑い部隊」。やりとりを聞いてるとおかしいんですが、

その中でも

この「冬のソナタ」のチェ・ジウが、なんと本人役でいきなりカメオ出演して、韓国にやってきた中隊の韓国ドラマ好きのキャラクターとご対面、という、粋なジョークもあります。このときの彼の演技がいかにも、「おのぼりさん」的で、「俺、もう、死んでもいい!」って、完全にそこらにいる普通のファンになってるのが、一つの見せ場にもなってます。

あと、

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ダンのお母さんと、その弟のおじさん役の2人が、もう完全に「掛け合い漫才」の域で、すごく笑えます。謎の英語をくりだすざあます御婦人と、横でボケをかまし、御婦人から強烈なツッコミをうける軍人のおじさん。「うまいなあ」と思って見てみたら、なんとこの人たち、「パラサイト」のソン・ガンホの奥さん役と、気持ち悪い狂人役やってた、あの2人ですよ!この2人を、脇で「笑いの切り札」的に使ってるところも、これ、かなり贅沢です。

⑦本来、二の次のはずの、アクションとサスペンスの質が驚くほど高い

このドラマ、本来、ロマンティック・コメディのはずなんですが、やっぱり最近の韓国の技術はハリウッド並みですね。アクション・シーンとサスペンス・シーンのクオリティが、完全にテレビの域ではないんですよ!

これ、「梨泰院」みたときも思ったんですけど、車の使い方と効果音とサントラのインストの音響。これが技術的にハイレベルなんですよ。あと、アクション・シーンでの立ち回りの華麗さ。「ロマンティック・コメディなのに、そんなのいるの?」と思うくらいに、無駄に豪華なんですよ。

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あと、この悪役ね。こいつが怖い。彼が北朝鮮の、一般に思い浮かばれがちな北朝鮮のネガティヴなイメージを、「取り締まり」の名のもとに人々の幸せを奪い、自分には甘くて腐敗し放題のキャラで演じてるんですけど、こいつがなかなかくたばらなくてね(笑)。しかも、なかなか襲ってもこないから、この焦らされる感じが気持ち的に落ち着かなくてね。

⑧家族愛もしっかりアピール

あと、家族愛もしっかりアピールしてますね。セリの場合は、彼女が婚外子だったことが理由で、セリが一家の中で一番優秀だったにもかかわらず、長いこと気持ちを通じさせることができなかった母親。ジョンヒョクの場合は、「子供に圧力をかけて悪いな」とは思いつつも軍の習慣にもなかなかさからえない父親と、「息子の本意をかなえてあげたい」とする母親。

そしてダンの場合も、先程も言ったように、基本的にはバカっぽいんだけど、娘の幸せを願う気持ちはどの親にも負けないお母さんと、そのおじさん。ここも見てて、心掴まされる要素になってます。

⑨観光アピールにまで長けている

あと、細かいディテールでこのドラマ、なかなか「ニヤリ」なんですが、これ、ソウル観光としてのアピールもちゃっかりやってます。

その象徴となるのが、お店の存在ですね。

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この「bb.q」という名のローカル・フライド・チキン・チェーン、「一体、何回、出てくるんだよ(笑)!」とツッコミ入れたいくらい出てきます(笑)。これ、間違いなく、ものすごい宣伝になってる気がするんですけどね。

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あと、この「エンジェリナス」という、「韓国のスタバ」みたいなカフェですね。このドラマ。ハマった人で「韓国旅行の際には行きたい」と思った人、間違いなくいると思うんですけどね。もうすでに、このドラマでツアー組まれてる、という話も耳にしてます。

⑩最終回のそれぞれの落ちつき所が完璧

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と、このドラマ、ものすごく多角的な魅せ方ができる上に、「映画」「ドラマ」の撮影、演出の基礎値のおそろしく高いドラマなんですけど、それでも最終回がいまひとつだと、どんなドラマでも台無しになります。

ところが、この「愛の不時着」の場合

最終回の締め方が見事なんですよ!

これ、通常のエピソードも1時間20〜30分と、他のドラマより長めなんですけど、最終回、1時間51分あるんですよ。最初、「もう映画じゃん。そんなに一辺に見れるかなあ」とも思ってたんですけど、

それぞれのキャラクターの落ち着き先が、理にかなってて完璧!

これに関しては、もう「参った!」という感じでしたね。

僕も、足りない知恵を絞ってエンディング予想するじゃないですか。いいとこまではいったんですよ。でも、「そう締めるだろう」と思ったことを脚本はいったんそうなると見せかけて、「ああ、こっちで来たか!」という、よりベターな演出で終わります。しかも、セリとジョンヒョクのふたりだけでなく、本当に多いキャラクターほぼすべての人に気配りしながらね。

・・・という感じです。これ、一回、「梨泰院」とセットで見てください。韓国ドラマそのもののイメージも変わると思うし、いったんハマってしまうと、コロナ禍での生活を潤す存在にもなりますから。






























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