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70代で新たなキャリア・ハイ ひねくれアートポップの鬼才、スパークスにいま一度注目を!

どうも。

こないだ言ってた、「気になる4枚のアルバムから1枚」、何をやるか決めました。

どれも良いので迷いました。単純にアルバムの出来からしたら、パフューム・ジニアスがベストかな、とも思ったんですけど、「紹介する機会」ということで考えて

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このスパークスがいいんじゃないか、と思ったので、ちょっと特集、組んでみようかと思いました。

スパークスといえば、もう非常に息の長いアートポップ・デュオですね。ちょび髭のロンと、ユニセクシャルな歌声のヴォーカリスト、ラッセルの兄弟なんですが、ロンが今年で75歳、ラッセルが72歳と、2人ともに、もう70代に差し掛かっていますが、ここに来て、何度めかの全盛期に入っています!なので、ぜひ、多くの人にしってもらいたいと思って企画を組んでみました。

スパークス、イメージとしては「知る人ぞ知る」存在で、多くのロックファンが「フジロックとかで名前も聞いたことあるけど、どういう実績の人たちなのか、今ひとつよく知らない」という人も少なくないと思います。

で、実はですね、この人たち

ヒットを出していた時代は本当に短かったんです!

こういうイメージです。これが1974年。この曲が入った「Kimono My House」というアルバムが当時、全英トップ10に入るヒットになっています。

この当時はまだクラフトワークも売れる前で、「シンセを前面に出した、しかもアンドロジナスなポップ」ということでイメージとしては

ロキシー・ミュージックとか10ccとか、そういう人たちに近い、ときに「アート系グラムロック」に分類されるタイプの、いわば”プレ・ニュー・ウェイブ”みたいな捉えられ方をしてたようですね。

このスパークスですが、最初はメイル兄弟のデュオで5人組。しかも出身は多くの人が勘違いしがちなんですが、アメリカです。

これが1972年のデビュー当時なんですけど、オペラっぽいというか、中性的というか、そうしたイメージは、もうこのときから持っていることがわかりますね。プロデュースはトッド・ラングレンでもありました。

スパークスは1974年に「プロパガンダ」という、もうひとつのヒット作を出してるんですけど、全英トップ10クラスのヒットが出たのは実はここまでが最後でした。

ただ、そんな彼らはニュー・ウェイヴの時代にシンセ・ポップが注目されると、その先駆者として評価されるようになります。1979年には、ミュンヘン・サウンドでドナ・サマーをあてたジョルジオ・モロダーをプロデューサーに迎え、アルバム「Number One In Heaven」を出します。シンセ・ポップの商業的ブームに微妙に早かったためにヒットしませんでしたが、批評的にカルト名作になり、

80年代に入ると、ニュー・ウェイヴのアーティストの扱いで、アメリカで、大ヒットまでは行かないものの、ビルボードのアルバム・チャートでトップ100に入るくらいの人気にはなります。

僕もスパークスはこの頃に知って、この下の方のMVの「Cool Places」、これ、ゴーゴーズのジェーン・ウィードリンとのデュエット・ソングなんですが、僕はリアルタイムではこれでスパークス、知りました。

で、そこからコンスタントにアルバムは出すものの、ヒットには恵まれず。もう、ベテランということもあって

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90年代にはライノ・レコードから、このベスト盤、2枚組でしたけど出まして、これ、僕も当時買って愛聴しました。この時点だと、言い方は悪いんですけど、「70sと80sの過去のアーティストの偉大な軌跡」としてスパークス、見てるところがありました

が!

これが落とし穴でしたね。スパークス、

90sや00sにも力作、出し続けていたんです!


94年にはシングル「When Do I Get To Sing My Way」、2002年にはアルバム「Lil Beethoven」、06年にはアルバム「Hello Young Lovers」と評判のアルバムを出し続けます。このあたりのサウンド聞くと、彼らが一貫してやってきた、シンセポップとオペラの融合、これを職人的に突き止めて、その道の大家みたいになってますね。この頃、実はまめに来日していて、08年にはフジロックにも出て、それでコアな支持が出てきた印象もあります。

大衆的な注目は、2015年、フランツ・フェルディナンドとの共作アルバム「FFS」、これで若いリスナーの興味が広がったところがあって

そして2017年、アルバム「Hippopotamus」が、43年ぶりに全英トップ10に返り咲く大ヒットになります。このとき、この曲、「Edith Piaf」がBBCですごくよくかかってました。このアルバム、これまでの路線の円熟というか、兄弟共に70歳前後になったことで、その分の渋みを表現できるようになった、かなりの力作でした。

そして2020年、最新作「A Steady Drip Drip Drip」を発表しましたが、これもレヴュー総合サイトで軒並み80点以上を記録する大好評ぶりです。これも「Hippopotamus」の路線上になる、「熟成されたねじれポップ」の極みというか、職人芸の熟練ぶりに頭が下がる作品です。

今はうれしいことにサブスクという便利なものがあって、彼らのように、「アルバム・タイトル数の多いカルト・バンド」みたいな存在が、CDだったら店になかなか千分揃ってないし、何を買っていいのかわからないタイプのアーティストだったところが、今、スパークス、Spotifyに過去作全部ありますからね!

もし、これを読んで興味を持っていただけたら、彼らのまとめみたいなプレイリストもありますので、ぜひサブスクで体験してみてはいかがでしょうか。







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