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全オリジナル・アルバム FromワーストToベスト(第27回) ポール・ウェラー/ザ・ジャム/スタイル・カウンシル その2 10位〜1位

どうも。

では、昨日の続き、行きましょう。

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はい。FromワーストToベスト。今回はポール・ウェラーの全キャリアに発表したアルバムにランキングをつけています。今日はいよいよトップ10の発表です。


10.On Sunset/Paul Weller (2020 UK中間発表時点では1位)

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第10位に、出たばかりの新作「On Sunset」です。昨日11位に選んだ「22 Dreams」から、ウェラーの深い音楽的造詣をフルに活かし、それらを若々しく表現する方向に行ってたんですけど、このアルバムはその流れにありながらも、より音数を絞って、音の隙間を活かしながらシンセやディストーションの響きを効果的に使いながらも、彼なりの歌のソウルを追求した感じのアルバムですね。このアルバムでウェラー、とうとう還暦超えてるんですけど、ここからまた新しいキャリアの章をはじめるくらいの意気込みを感じさせる力作ですね。現在、中間発表の時点では、このアルバム、全英1位なんですが、果たして正式に1位になれるか。もし達成したら、80年代以来、5ディケイド連続で1位の快記録ろなります。

9.The Gift/The Jam(1982 UK#1 US#82)

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9位はザ・ジャム時代のラスト・アルバム「The Gift」です。僕は「年代」で言うと、1981年から82年頃の彼らが一番好きなんです。シングルでいうと「Absolute Beginners」からラスト・シングルの「Beat Surrender」まで。この頃のホーンやオルガン交えたソウルフルなパンクが一番好きなんです。なんですけど、残念ながら、このアルバム、そうした素晴らしいシングルが収められずに、他の曲でポスト・パンクみたいな、あえてシングルと違うことやってみたりで、せっかくいい時期なのにベストな部分が今ひとつ活かされてないんですよね。あと、曲によってウェラーと、ブルース・フォクストン、リック・バックラーとの微妙な噛み合わなさも感じられて、「このリズムのパターンだと。ウェラーのお眼鏡にはもうかなわないかな」と思わせるときもあったりして。この時代のUKロックがシングルが強くなく、アルバムにフルな成果が出される時代だったら、もっと評価したかったんですけどね。まあ、それでも世界的にヒットした「悪意という名の街」があるだけ、十分価値はあると思うですけどね。

8.Our Favorite Shop/Style Council(1985 UK#1 US#123)

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8位はスタカン時代の代表作ですね。「Our Favorite Shop」。これも、今語った「The Gift」ほどではないんですけど「ここにShout To The Topがあったら、更に良かったのになあ」と思わせるところがありますね。国によってはボートラで入ってるんですけど。ただ、それを差し引いても、このアルバム、ちょっといろんな方向に行き過ぎではあるんですけど、この作品なりにまとまった、この時期のウェラーのソングライティングの充実を堪能できる作品です。アナログで言うA面は当時まだ珍しかったヒップホップとバロック・ポップを交互に混ぜ、B面はジャズやボサノバもフィーチャーした、軽快なポップ・ソウル・チューンが続く。後半の曲の流れ聴いてると、渋谷系の時代にデジャヴ感を感じた、その元の構成要素がそこにあります。また、s当時、「おしゃれの象徴」みたいに過剰にもてはやされたサウンドの反面、歌詞が一貫した、当時のサッチャリズム批判だったことも特筆すべきことですね。

7.Wake Up The Nation/Paul Weller (2010 UK#1)

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7位は「Wake Up The Nation」。これはもう、出たときから「ウェラー、若返った!」と話題になった1作でしたね。タイトル曲からして、ソロになって以降で最も速いパンキッシュな曲で、かなりディストーションも聞かせてて。そういう曲が続いたかと思うとテープの逆回転を細かく刻んだり、リズムのループを使ってみたり。それでいてソウル心もしっかり後半の方では忘れずに出てくるし。彼が過去のキャリア絵培った経験を、50歳を超えても全く衰えない肉体と共に、攻撃的に前へ前へ表現する。年令を重ねた人のロックの表現としてはこれ、理想的ですよ。彼はこの作品で、キャリア史上はじめてじゃなかったかな。マーキュリー・プライズにもノミネートされましたね。ここで引き締まって以降、彼は安定してますね。


6.All Mod Cons/The Jam (1978 UK#6)

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6位はザ・ジャムの「All Mod Cons」。通のウェラー・ファンはこれが1位じゃなきゃいけないようなところが実際にあるわけなんですけど、もちろんこれは素晴らしいアルバムです。これまで、「ブリティッシュ・ビートとパクのミッシング・リンク」みたいなロックンロールを鳴らしていたウェラー少年が、一方でテロを歌った「A Bomb In Wardour Street」や極右集会を批判した「Down In The TubeStation At Midnight」のような政治意識に目覚めた曲から、「English Rose」のようなアコースティックのバラードまで、リリック、ソングライティングで共に飛躍的成長を見せたアルバムであるのは認めます。でも、彼の音楽的成長がここでまだ始まったばかりなのも僕らは後の歴史で知っているので、ここをマックスにはさせたくないんですよね。ウェラーはここから多くのUKロック上の歴史を築いていくことになります。

5.Wild Wood /Paul Weller (1993 UK#2)

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そしてトップ5。まず5位に「Wild Wood」。これは93年、ちょうどイギリスのロック界でスエードやマニックスみたいな、昔ながらのオーセンティックなロックが再び台頭をはじめたときにウェラーが出した貫禄の模範例ですね。ヴィンテージな趣のある60s後半スタイルの、磨かれぬままゴツゴツとしながらもいざコードストロークをするとシャープな切れ味を聞かせるギターが奏でる、「ホワイト・アルバム」の頃のビートルズやトラフィックを彷彿とさせる、贅肉一切削ぎ落とした熟成のロックンロールにはゾクゾクしたものです。「サンフラワー」のイントロなんて今聴いても鳥肌ものだし、アコースティック・ソウル・ブルーズのタイトル曲には、洗練された時期を通過した後に、あえて熱く泥臭く歌うことを選んだ男の熱い決意をひしひしと感じるし。彼がここで示した道標こそ、この後に続く数年のブリティッシュ・ロック・リバイバルへと続かせたのだと、僕は疑ってませんけどね。

4.Cafe Bleu/Style Council(1984  UK#2  US#56)

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4位はスタカンで僕がベストだと思う作品ですね。「カフェ・ブリュ」。やっぱ僕にはこれが一番ですね。日本だと「Our Favorite Shop」の方が人気あると思うんですけど、ミック・タルボットのジャズ・キーボードとウェラーのケミストリーが最もあったのがこのアルバムだと思うし、ジャズを基調にアルバムの統一感が取れてる意味でもこっちですね。同じヒップホップとかファンク取り入れるにしてもこっちのほうが流れが自然です。あとウェラー的には、「もっとも全米進出に成功した作品」としても重要で、「My Ever Changing Moods」がシングルでも全米トップ40に入った記念の作品でもありますしね。ここからのもう一つのヒットが名バラード「You're the Best Thing」なのもいい。スタカン通じてやりたかった初期衝動が一番感じられる愛すべき作品ですね。

3.Stanley Road/Paul Weller (1995 UK#1)

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もう、ここから先は何が1位でもおかしくないですね。それくらい、ロックの歴史に残したいアルバムばっかりです。まず3位はソロ第3作「Stanley Road」。ブリットポップの時代に、ウェラーが「シーンの兄貴ぶり」を示したアルバムです。とにかくまずギターの音がシャープでかっこいい。弾いてるのスティーヴ・クラドックですが彼のバンド、オーシャン・カラー・シーンも翌年から5年くらい人気バンドでしたね。あと、ドクター・ジョンの「I Walk On Guilded Splinter」もやっている通り、肉厚で肉感的なファンク・グルーヴもここでは息づいているし。あと、「ウェラーでいうところのボウイのChanges」を思わせる自己レペゼン曲のソロ最大の代表曲「Changing Man」をはじめ「Out Of The SInking」「Broken Stones」「You Do Something To Me」と、ヒットしたキャッチーな曲も多いし。彼がこれを出した年にオアシスの名曲「Champagne Supernova」で、あの余韻の残るギター・ソロを弾いたのも、あの95年のUKロックの象徴でしたね。

2.Setting Sons/The Jam (1979 UK#4 US#137)

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 そして2位、実は途中まで1位で考えていたほど迷いました。ザ・ジャムの「Setting Sons」。パンク・ムーヴメントの中からキャリアをスタートさせたジャムが、シーンから完全に頭一歩抜け出したことを証明した1作で、ここから先はクラッシュ同様、シーンを引っ張る存在になります。このアルバムは、ウェラーのキャリア史上でも最もハードなアルバムですね。パンクロックの一つの完成形を、前作「All Mod Cons」で成長の跡を見せた巧みなソングライティングの彩と、これまで以上に力強くなったアタックの強い攻撃性と共に完成させましたね。「Private Hell」とか「Eton Rifles」なんて今聴いてもアガリますしね。あと、この時期はシングルの流れもよくて「Strange Town」「When You're Young」、名B面曲の「Butterfly Collector」もあって、これらの曲がアルバム未収録だったことが本当に惜しいんですが、それがなくても十分聞かせられるくらいに充実してたということですよね。今ではボートラとして聞けてなおいいですよ。

1.Sound Affects/The Jam (1980 UK#2 US#72)

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そして1位は、やっぱどうしてもこれになっちゃいますね。ウェラー自身が最高傑作にあげることもあります。ザ・ジャムの「Sound Affects」。キャリアの歴史的流れからしたら、これが妥当かな。なにせ、アルバム未収録のシングルにして最大の代表曲のひとつ「Going Underground」とここの先行シングルの「Start」が2曲連続全英1位で、シングルカットの「That's Entertainment」はその後、いろんなカバーも出る名アコースティック・チューン。ジャムの名刺代わりの名曲がここまで揃う時点でもう十分かなと。そして、このアルバムは「ジャム版リボルバー」と実際言われるくらい、楽器の鳴り音が本家ビートルズの「リボルバー」に近く、ギターのディストーションから、分離して際立たせたベースラインとか、ひとつひとつの音色からこだわった、きわめて計算され凝ったバンド・サウンドが聴かれますね。ここからグルーヴも、これまでのR&Bカバー以上に本当のグルーヴを獲得して、それがこの後の「Absolute Beginners」からスタカンに向けてのサウンド拡張にもつながるし。ジャムという3人の共同体のマックスのバランスで言えば明らかにここが頂点だし、ここでのサウンド、もっと今のバンド、活かせばいいのにというヒントもかなりありますね。







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