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短期連載「なぜ僕は邦画を見てこなかったのか」 ③「黒澤・小津・溝口」のBIG3の後に誰を見たらいいのかわからなかった

どうも。

では、連載、「なぜ僕は邦画を見てこなかったのか」の最終回、行きたいと思います。

70年代からの邦画に関してちょっと辛いことも書いてきてますけど、とはいえ僕も、邦画も多少見ています。

僕は音楽の方でロックやR&B、ヒップホップなどの過去のカタログ遡って聞くのが好きだし、洋画でも同様のアプローチをやってますけど、邦画でもそれをやってます。

誰を遡ったかというと、それはやっぱり

黒澤明、小津安二郎、溝口健二の、いわゆるビッグ3ですよ!

この3人に関してはですね、僕、全員好きです!

中でもj一人選べと言われたら

         溝口派です!

 一番見てるのは黒澤です。彼に関してはもう「映画の基礎」というか、「画家と小説家と戯曲家の才能が一つに集約されたらすごい映画監督が生まれるんだな」と、あの万能ぶりに驚きます。

 ただ、作風の好みで溝口なんですよね。溝口って、今の世界の映画界でも「フェミニズムがある以前からのフェミニスト監督」という呼び方が実際あるように、女性の目線から、リスペクトとプライドを描いてきた監督という気がしてですね。ベルイマンとかアルモドバルの作品にも同様の感触がありますけど、それを先駆けていたというか。3監督とも大学の時に凝ってみたんですけど、溝口の大映が当時あまりソフトが無くてですね。今、だいぶソフト化もされてるので、見てみたいんですよね。

 小津も全盛期の作品は一通り見てるんですが、僕の好みからしたらほのぼのしすぎかな(笑)。ただ、初期と晩年の作品を見てないので見たい気はしてます。

 この3監督なら基礎として主要作は少なくとも大体見てたんです。

が!

この3人の次に誰を見たらいいのか、20年以上もわからなかった!

 これ、本当に悩んだんですよね。

「その次に有名な人くらいから見たらいいんじゃない?」って思うでしょ。それが見つからなかったんですよ。

例えば、人によっては、黒澤・小津・溝口に足して「ビッグ4」と呼ぶ人もいる成瀬巳喜男。この人の映画に拒否反応が出ましてね(苦笑)。

見たことあるのは「めし」と「浮雲」だけではあるんですけど、この人、ヒロイン映画を撮っていると言っても、そこに溝口みたいな女性への敬意とかプライドとか、そういうのは描いているとは思えないで、ひたすらきつい男尊女卑の世界描くんですね。それがちょっと、あまりにもきつくて。溝口本人から「金ダマのない映画作る人」って呼ばれてたみたいですけど、わかります(笑)。

ただ、最近のこの人の作品評価が微妙に変わってきてて、戦前とか晩年が評価され始めてきてるようなので、トライはしてみようかと思ってます。

それから

大島渚と今村昌平。この2人も僕はあまり得意でなくてですね。

2人とも、作品の文学的、哲学的価値はわかるんですよ。でも、それを映像作品として積極的に見たいとは思わないタイプなんですよね。

 なんか人間の業みたいなものを生々しく描こうとしすぎるというか。今村さんに顕著なんですけど、「そこまでグロテスクに見たくないよ」って、いいメッセージ発してても先に拒絶反応の方が出てしまうというか。大島さんの場合は疲れるというか(笑)。「ああ、大島と今村でわからないなら、誰見たらいいんだよ・・」と僕を迷わせた大きな要因でした。

そして

          北野武!


彼に関しては複雑ですね。というのは、小中学校の頃には、僕にとって最高のコメディアンでしたから!世の中の矛盾つくギャグと、シュールなナンセンスさが大好きで、もうゲラゲラ笑ってたものです。映画監督になってヒット出した頃、もちろん大きく期待もしたわけです・・・が、「僕にはちょっと・・合わないかも・・・」となってしまったんですよねえ。

その原因はズバリ、「セリフの棒読み」。これに尽きます。「名優でも、たけしの映画に出ると途端に下手に見える」という言い方もよくされますけど、あの徹底して芝居っぽさを削るあまりに無表情なセリフの言い方になることが多くてですね。あれがどうしてもダメなんですよ、僕。やっぱり、ちゃんとしっかり演技してくれる役者さんが好きなんで。そこのところの好みで相容れないんですよね。

 今あげた、成瀬、大島、今村、北野辺りがダメとなると、本当に探すの難しかったんですよ。もう、真剣な話、「僕は邦画向いてないのかも」って、半ば悩んでましたから。「手の打ちようがない」とまで思ってました。

だから今回、「ドライブ・マイ・カー」を見るにあたり邦画探訪となった時、実はまた、この壁に当たってたんです(笑)。成瀬、今村、大島、見てやっぱり気持ちがついていかなくて。

そこで、アプローチを変えてみたんです。「監督の名前じゃなくて、前から見たいと思っていた映画の名前で見てみることにしよう」と。

そしたら、これが’当たって、面白いように見たい監督が見つかったんですよ!

それが、この辺りでした!

はい、川島雄三、市川崑、増村保造ですね。

いやあ、これは目からウロコでしたね。まさに見たかったのはこういう映画でした!

50年代の後半から60年代にかけての作品ですけど、いずれもすごく洗練されてて、風刺もすごく効いてて。あと、これらはたまたま大映配給の映画なんですけど、溝口が所属した大映だからなのか、女優さんの描き方がこの当時の日本映画の中で抜群ですね。男を手玉にとる姿が痛快です。

で、僕、知らなかったんですけど、この3監督とも、この10年くらいの再評価、すごく高いんですってね。わかる気がします。市川崑の「黒い十人の女」は渋谷系映画としての再評価は耳にしたことはあったんですけど。

その契機となってる理由の一つが

若尾文子の再評価がすごく進んでるんですってね。「しとやかな獣」しか観れてないんですけど、ここでも笑っちゃうくらい痛快ですもんね。これからまとめてみてみようかと思ってます。邦画の昔の女優さんのイメージ、根底的に買えるくらいのパワーがありそうなのは、なんとなく想像できます。

あと、この3監督ほどぐっとはこなかったんですけど、岡本喜八や鈴木清順にも興味抱いてます。大島、今村だけでなく、このあたりの人たちももう少し十分な注目集まるべきでしたね。

あと、1回目の時にも書きましたけど、

70年代だと、やっぱり長谷川和彦と深作欣二ですね。あの時代のテレビドラマの黄金期とリンクするタイプの作品作れる意味で。極上のエンタメ精神が前面に出てるのに、それだけに留まらない深いテーマ性も感じさせて。本来の「あるべき映画」作れる人たちだなと思ってます。

で、80sが、まだピンとくる監督を見つけ出せてなくて、ただ90s以降はチラホラ見つかり始めてます。

やっぱり普通に是枝裕和はいいと思います。「誰も知らない」と「万引き家族」しか見れてなく、「話の語り部として優れた人だな」と感心はしてたりしていて。「ブラジルで年に1本公開される映画」というのはイコール彼の映画です。それくらい今、「日本代表」になってる人ですけど、ただ、それはわかっていても、作品ディグしたい気持ちにまではまだなってないんですよね。

僕個人としては、是枝氏よりも

黒沢清の方が好みですね。

この人のことはだいぶ前からいろいろ話は聞いてて、「僕は好きそうだなあ」とかねてから思ってはいたんですけど、勘は当たってて、結構掘り下げたい気分になってます。

この「キュア」見るに、Jホラーにカウントされつつも、作り物っぽい安っぽさが全然なく、精神的に怖いんですよね。しかも、ホラーに頼らずともドラマ部分で芯が強いというか。その意味でデヴィッド・フィンチャーに近い人だな、との印象抱きました。

https://www.youtube.com/watch?v=z2rZVIE2oyQ


彼の映画なら、勢いで続けて見た、この「スパイの妻」、素晴らしかったですね。いわゆる戦争映画の一つではあるんですけど、美術的なところでの完成度が高い上に、今、ネトウヨが発狂しそうな内容で挑発的にグイグイ攻めるじゃないですか(笑)。「愛国心か、コスモポリタンか」という、今の時代にも通用するテーマ性を第二次世界大戦の日本で表現するという手法、なかなか見ないので「一本取られたな」と思いましたね。

これの脚本を

濱口竜介がやってると聞いて、「ドライブ・マイ・カー」への興味がさらに沸いています。

「ドライブ・マイ・カー」をまっさらな状態で見たいので、彼の過去作はあえて見ないで臨んだんですけど、これが作れるということは並大抵の才能ではないですね。すごく期待高まってます。

 ちょっと、この濱口監督と近い世代の監督さんのことが気になり始めていてですね。

海外でやたら評判聞いてた「リンダ リンダ リンダ」もすごく良かったですね。そういう名前のバンドがアメリカで生まれるくらいだから影響力もかなりのものですけど、僕はこれ、音楽面よりもむしろ、「リアリティの高さ」で評価しますね。特に会話ですね。本当に巷で「こういう喋り方で、こういう会話、普通にあるよなあ」ってとこで「へえ」となりました。

 こういう、予算があまりかかってないタイプの映画って、役者さんに素人使って棒読みさせたりするの、あれにかえってリアリティ感じないから好きじゃないんですけど、ここでの台詞回しがあまりにも自然で全く違和感ないんですよ。その中に、ペドゥナみたいな、本当に上手い女優さんが加わってるからバランスもいいんですよね。

これ作った山下敦弘も他の作品見たいなと思いましたね。どうやら70年台半ばの生まれから80sにかけてが世代的に面白そうで、まだこれから観る予定なんですけど、小耳に聞く話では西川美和、深田晃司あたりは見てみたいなあと思ってるところです。

・・といった感じでしょうか。明日見る「ドライブ・マイ・カー」がすごく楽しみで、良ければ日本映画の監督探索、もう少し延長して続きそうな気がしてます。





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