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全オリジナル・アルバム FromワーストToベスト(第24回)カーティス・メイフィールド/ジ・インプレッションズ その2 10位-1位

どうも。

では、昨日の続き、行きましょう。

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10.Back To The World (1973 US#16)

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10位は「Back To The World」。これの前作で、キャリア史上最大の成功を収めたカーティスでしたけど、その好調さがこの次作にも反映されてますね。とにかく矢継ぎ早にキャッチーかつ、目につく黒人社会の問題に本能的に言及せずにはおられない状態になっているというか。タイトル曲に「Future Shock」、ともどもこの当時、70s前半を代表するソウル・アンセムだと思います。

9.Something To Believe In (1980 US#128)

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9位は「Something To Believe In」。70年代なかばからディスコ路線に傾いていたカーティスでしたが、さすがに1980年、もうブームは終わってしまったので、もうちょっと穏やかに抑えめな、アーバン路線できました。歌詞は社会的なものが戻ってこず、ラヴ・バラードばかりなのは残念ですが、この頃のカーティスは完全に「メロウ・グルーヴ・マスター」という感じで、今で言うシティ・ポップの名人芸を披露するキャラになってますね。その兆しは前作「Heartbeat」から目を出しているのですが、ここでそれが極まった感じですね。特に有名なのは「Tripping Out」。日本のシティ・ポップの代表曲、山下達郎の「甘く危険な香り」の原曲ですけど、これが有名なのはなにも日本だけじゃなく、R&Bマニアには比較的世界的に知られた(原曲の方が、です)曲ですよ。

8.New World Order (1996 UK#44)

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8位は「New World Order」。1990年にステージ上で自身の真上に照明が落ちてきた事故で、首から下が麻痺したカーティスでしたが、そこから奇跡のカムバックを遂げたアルバムですね。さすがにその状態では楽器はひきないわけですが、それでも全曲を彼が作曲、ナラダ・マイケル・ウォルデンやオーガナイズド・ノイズら、当時のR&B/ヒップホップの人気プロデューサーたちの助力を得て、従来30数分で終わる彼のアルバムとしてはめずらしい、1時間強の大作となりました。この当時、ヒップホップのサンプリング・ソースとして頻繁に昔の彼の曲が使われるようになっていたんですけど、その次代の流れに絶妙に合わせられる曲を作り、なおかつ、以前と悲しいことが続く黒人たちのストリートライフを愛を持って見つめる彼の姿がここには強く反映されています。この最後の傑作をもって、1999年、彼は58年の生涯を閉じます。

7.The Young Mods Forgotten Story (1969 US#104)

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7位は「The Young Mods Forgotten Story」。タイトルがなんかスタイル・カウンシル的ですが、たしかに90sには、ポール・ウェラーのファンみたいな方々が、このアルバムを、かなり長いことアナログだけだった気がしますが、探し求めていた気がします。音楽だけじゃなく、このジャケ写でのコートの着こなしもかっこいいですしね。このアルバムは、インプレッションズが自己レーベルのCurtomに移籍して2作目。サイケデリックなソウル路線がいたにつきはじめた頃の作品で、ここからホーンやストリングスじゃなくて、カーティスのギターを活かしたバンド・サウンドの骨太さが出てくる頃ですね。代表曲は「Choice Of Colors」。「もし色を選ぶことができたら、どの色を選ぶんだい、ブラザー」。これも当時の「ブラック・イズ・ビューティフル」「ブラック・パワー」の時代を代表する、誇るべきアンセムです。

6.The Impressions/The Impressions (1963 US#43)

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6位はジ・インプレッションズのデビュー・アルバム。カーティスと言えば、どうしても1970年代初頭のソロのイメージが強いんですけど、60s前半、インプレッションズでも「シカゴ・ソウルを代表するヴォーカル・グループ」としてもかなりの成功を収めたものです。それは、もう、この時点でかなりのオリジナリティを備えていたから。「Gypsy Woman」「It's All Right」の2曲の全米トップ10シングルをいきなり生んだアルバムですけど、このときからカーティス、プロデューサー能力あったんじゃないかと思わせるアレンジ力なんですよね。聞いてて「Spanish Harlem」の頃のフィル・スペクターとか「Stand By Me」の頃のリーバー&ストーラーを思い出すんですが、どっちともベンEキングですけど。あのストリングス+アルファなサウンドにゴスペルをまぶした感じ。あれは当時隆盛のモータウンにも、アトランティックにもなかった独自のもの。オリジナル・シンガーのジェリー・バトラーが抜けてすぐの作品だとは思えない完成度です。

5.(There's No Place Like) America Today (1975 US#120)

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5位は、これも70sソウルの名盤のほまれ高い1作ですね。「(There's No Place Like)America Today」。これは大昔のアメリカの有名なキャッチフレーズなんですが、その広告の前に、食事の配給で並ぶ貧しい黒人たちの行列を乗せているところに、黒人社会の現実を見せつけた、カーティスのアルバムの中でも最もビターかつシリアスな1枚です。スライ&ザ・ファミリー・ストーンに「暴動」という名盤がありますが、それのカーティス版かな。ここでのカーティスは、この前までで聞かれたファンキーなサウンドを控えめに、かなりシンガーソングライター色を濃くして、リズムも音数をかなり抜くことによって内生的な空気を作りだしています。冒頭の「Billy Jack」からいきなりストリートで射殺された男の悲しいストーリーからはじまり、愛に欠けた世を憂い、神に慈悲を求める切迫感あふれる切実なアルバム。カーティスがこのアルバム以降、ディスコ路線に走り、社会的な歌から離れたのは、どこかここで燃え尽きたことや、そうした作品であったにもかかわらず商業的に成功しなかったからではないのかと僕は睨んでます。

4.People Get Ready/The Impressions (1965 US#23)

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4位は「People Get Ready」。これはインプレッションズ初期の段階での最高傑作ですね。ここには、ボブ・マーリーをはじめ、数多くのアーティストにカバーされた名曲「People Get Ready」があるのですが、「みんなでヨルダン(神の栄光の国)に行こう」と歌われるこの曲は、苦難を耐え忍ぶ黒人たちに向けたエンパワリングな1曲であり、当時、公民権が施行されたばかりだった黒人社会における大きなアンセムにもなっています。それから、アルバム冒頭の「Woman's Got Soul」は、「女はうわべじゃない。中身が大事」と、マッチョな黒人社会において、いち早くフェミニスト的な視点を黒人男性の側で見せたことで、こちらも早くからの先駆性を感じさせます。アレンジ的にも、ゆったりとしたゴスペルのテンポでのストリングス・サウンドの流麗な完成度でいけば、やはりこちらに軍配があがりますね。この前作の「Keep On Pushing」も同様にメッセージ色の強いアルバムですけどね。ただ、ここでとどまらなかったのがさすがはカーティスといったところなんですが。

3.We're Winner/The Impressions (1968 US#35)

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ということで3位は、僕自身ではインプレッションズ時代の最高傑作と思っている「We're A Winner」。「People Get Ready」のあと、「このあと、どうしよう」というカーティスの迷いと試行錯誤が見え隠れしたアルバムが2枚続くんですけど、ついに壁をぶち破り、後のカーティス・ソロにつながったアルバムこそ、これです。ここでの彼らは、ストリングスとホーンのアレンジが、コード進行の幅は広がったからなのか、一気に多彩にあかぬけたし、そこにオルガンやサイロフォンの音を効果的にかぶせることによって、従来のソウル・ミュージックの枠を破ってます。それでその突破口となったシングルが「We're A Winner(我々が勝者)」でしょ。流れとしては完璧です。このアルバムの最後に、フィフス・ディメンションの「Up Up And Away」のカバーが収録されているんですけど、この曲のオリジナルをてがけているのがソフトロックの名プロデューサーのボーンズ・ハウ。ジャンルを超えたロックの影響が及んだ、ということなのかもしれません。

2.Superfly/Soundtrack (1972 US#1 UK#26)

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そして2位が、カーティス最大のヒット作でもある映画「スーパーフライ」のサントラです。このとき、ソウル・ミュージックにおえる最大のクリエイターのひとりでもあったカーティスが、同じく勢いのあった黒人による映画「ブラクスプロイテーション・ムーヴィー」と結びついた、アイザック・ヘイズの「シャフト」と並ぶ、時代を象徴するコラボレーションです。ここからはタイトル曲と「Freddies Dead」という2曲の全米トップ10曲も生まれますが、「Pusherman」「Give Me Your Love」「Eddie You Should Know Better」も幾度となくヒップホップのサンプリング・ソースとして選ばれていますから、もうブラック・ミュージックのヒストリーを語るには不可欠なアルバムです。70s前半の、ブラック・アートのひとつの到達点という意味では、マーヴィン・ゲイの「What's Going On」とかスティーヴィー・ワンダーの「Innervisions」とか、そういう名作たちと並ぶ傑作だと思います。ただ、何度もリメイクされる映画、これはなあ・・・というのはありますが。

というわけで1位に行きましょう。これです!

1.Curtis (1970 US#19 UK#30)

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ということで1位は、ソロ第1弾アルバム「Curtis」です。このアルバムでカーティスは、その後のトレードマークとなる、ワウワウ・ペダルを使ったサイケデリック・ギターにかなり太くなったベースラインを基軸に、多彩なホーンとストリングスのサウンドを展開しますが、この当時、もっとも先進的なソウル・サウンドですね。そして、歌詞がとにかく冴えてます。「地獄が真下にあったらみんなでそこに行くまでだ」と歌った冒頭の「(If There's A Hell Below) We All Are Gonna Go」と、アッパーなホーンに牽引される形でポジティヴに生きていくことを歌った讃歌「Move On Up」も有名ですが、流麗なラヴ・バラードの「Making Of You」や黒人の誇りを歌った「We People Who Are Darker Than Blue」、そして、この当時ではまだ夢物語だった「Miss Black America」。今や黒人がミス・アメリカになるだけでなく、アフリカの、フェード・ヘアカットの女性がミス・ユニバースを受賞する時代(あの瞬間、まさにこの曲思い出しました)を50年先駆けた意味でも感慨深いものがあります。70sのソウル・ミュージックのみならずポップ/ロックで見ても、これはタイムレスに不可欠な一作だと思います。


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