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ジョージ・フロイド事件を予見まで! 今、もっとも聴くべきはラン・ザ・ジュエルズ

どうも。

このブログでも、黒人男性ジョージ・フロイド氏の白人警官による殺害事件と、そこに端を発した全米規模での抗議行動に関しては二度ほど触れさせていただいています。聞いた話によると、日本にはトランプが口走った「講義してるのは暴力的なアンチ・ファシスト」という部分だけをとって、実際に立ち上がったひとたちが何に対して抗議しようとしてるのかも理解しようとせず、「BlackLives Matter」を支援しようとしたら「おまえ、黒人でも、セレブでもないくせに」と冷笑を浴びせるような人もいるらしいですね。そういう話を聞くと、「本当に、人の立場に立ってものを考えることができなくなって人がいるんだな」と思って悲しくなりますけどね。そういう人は、自分が人生で差別されるわけがないという過信のもとで生きて、人を思いやることもできなくなった人なんでしょうね。まあ、アメリカのレイシストもそんな感じといえばそんな感じでしょうが。

だけど、少なくとも僕のブログには、ジョージ・フロイド事件関係の投稿へのアクセス数は非常に高いし、ツイッターのTLでもその話題で埋まってる日も珍しくないので、前にも話した1992年のロス暴動のときよりも、日本人でも圧倒的に関心高くなっている、そうであると願いたい、と思いたくなるような状況もあります。前向きにとらえたいものです。

そして、そんなときだからこそ聞きたい音楽もあります。

もう、まさにドンピシャなタイミングで出た、これです!

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この「RTJ4」というアルバム。アーティストはこの2人

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ラン・ザ・ジュエルズですね。

2010年代という時代は、ケンドリック・ラマーを筆頭に、黒人の置かれた立場への機器や警鐘を鳴らすシリアスなリリックや、インディペンデントな創作性を持ったサウンドのヒップホップがまた評価されるような時代になりましたが、そこで浮上してきたのが、これまでアンダーグラウンドで実績を作ってきた実力派ベテランがしっかり評価を浴びるようになったことですね。

この2人にしても、黒人の方はキラー・マイクと言って、元は全盛期のアウトキャストのアルバムに参加するなど、アトランタのシーンで元から評判だった人。一方、白人のELーPの方は、知る人ぞ知る、長年にわたってニューヨークのアンダーグラウンド・ヒップホップを支えてきたレーベル、Definitive Jaxxの代表的なプロデューサーですよ。その筋ではずっと高い評価を受け続けてきたベテランの2人が、今、40を超えてオーバーグラウンドでもしっかり評価されてきています

 今回のアルバムは、そんな、かねてからポリティカルなリリックを提示してきた彼らが、自身の創造性のピークを背景に、今のこの混乱と、正義を求めた怒りのあふれる時代にふさわしいアルバムをドロップしてきたわけです!楽しみでないはずがありません。

まずはこれからきいてください。

これが先週のリリース直後、歌詞検索サイトgeniusでもっとも聞かれた曲にもなったんですけど、驚くべき歌詞が出てきます。

And every day on evening news they feed you fear for free
And you so numb you watch the cops choke out a man like me
And 'til my voice goes from a shriek to whisper, "I can't breathe"
And you sit there in the house on couch and watch it on TV
The most you give's a Twitter rant and call it a tragedy

そして夕方のニュースはタダで恐怖を植え付ける
警察が俺みたいな野郎の首を絞めることも見慣れちまう
そして俺の声は悲鳴から「息できねえ」とささやきにかわり
キミはそれをカウチに座りながらテレビで見るんだ
そしてツイッターでの議論が起こり人はそれを悲劇と言うんだ

この曲はまさにその

I Can't Breathe

この一説がでてきたことで、かなりの話題を呼んだんですね。geniusって全米1位になるタイプの若いラッパーかアイドルが圧倒的に人気なのに、デイリー・チャートで彼らのようなベテランがいきなり1位になったのには、こういう話題性があったがゆえです。

「I can't breathe=息ができない」、これ、まさに、ジョージ・フロイドさんが白人警官に首を膝でおさえつけられながら最後に言った言葉です。

キラー・マイクは別の事件を題材に、去年、このリリックを書いたというのですが、この事件がいかに、特別なものではなく、いつ起こってもおかしくなかったことを示す事例だということを証明していると思います。

さらに別の曲ではこうも言ってます

これはファレル・ウイリアムズとRATМのザック・デ・ラ・ロチャ参加の豪華な曲なんですが、ここで今度はEL−Pが

Where murderous chokehold cops still earnin' a livin'
Funny how some say money don't matter
That's rich now, isn't it, get it? Comedy

首を絞める警官はまだ生活できている
「金は問題じゃない」なんて笑わせるな
それどころか連中は金持ちだ。お笑い草だぜ

これもジョージ・フロイドさんを殺害してしまった警官、デレク・ショーヴィン容疑者を思い浮かべるとゾッとするというかね。

さらに

a hunnid cops outside
I could shoot at them or put one between my eyes
Chose the latter, it don't matter, it ain't suicide
And if the news say it was that's a goddamn lie
I can't let the pigs kill me, I got too much pride

外に警察の群れができていたら
俺は奴らを撃つべきか。それとも俺の眉間を撃つべきか。
俺なら後者を選ぶ。問題ないぜ。それは自殺じゃない。
もしニュースが自殺と言うならそれは嘘だ。
豚みたいな連中に殺されるほど俺のプライドは腐っちゃいない

これも、黒人たちがいかに白人警官に対しての強迫観念のもとに生きているかを示しているリリックだと思います。

このアルバム、この白人警官の問題の他にも、児童虐待や、ネオ・リベラル的な企業経営を皮肉ったものまで、アメリカ社会に潜む問題に痛烈にメスを入れてます。今ならネットでgeniusはじめ歌詞検索サイトも充実してるので、ぜひリリックを読みながら理解して欲しい1枚です。

あと、EL−Pの作る、硬質なたたみかけるリズムと浮遊感のコントラストが鮮やかなトラックはかなり音の一つ一つの鮮度が高いです。これも最近のトラップやエモ・ラップのコピペされたトラック・メイキングに飽きた耳には新鮮に聞こえるはずです。

あと、さっきのファレルやザックのほかにも、DJプレミア、2チェインズ、クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジのジョッシュ・ホーミなど、参加陣も豪華です。ぜひ聞いてみてください。









 

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