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「ドライブ・マイ・カー」がオスカーで「作品賞」のノミネートこそを絶対狙うべき6つの理由

どうも。

今日はこういう話をしましょう。

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日本映画「ドライブ・マイ・カー」が国際的に受けてますよね。これ、僕も国際的な映画関係のニュース見てますけど、受け、かなりすごいんですよ、実際!

日本の報道だと、コアな映画関係のもの以外での騒がれ方、どうなのでしょう。

 僕が、「これはちょっと手ぬるいな」と思った日本の報道は

https://www.asahi.com/articles/ASPDG2SCXPDGUHBI007.html

この「ゴールデン・グローブ賞候補に」という報道ですね。なんかあたかも「ノミネートされて快挙だ」くらいの感じで。これだと、正直、甘いです。

だって、この映画、

今年のあらゆる「外国語映画賞」の筆頭候補です!


なので「ノミネートされて当然」であり、「ノミネートされない方がすごくおかしい」くらいの感じなんです。むしろ受賞してはじめて喜ぶべきくらいの次元です。

 僕から言わさせてもらうと

オスカーの作品賞にノミネートさせるくらいじゃないとダメ!


もう、大げさでなく、それくらいの扱いを受けてます。

こうなると当然

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オスカーへの期待もがぜん高まるわけです。この映画、国際長編映画賞、一昨年まで外国語映画賞と呼ばれていた部門の日本代表になってます。これの「おくりびと」以来の日本映画の受賞。まあ、これももちろん栄誉なことではあるんですけど

いっそのこと、作品賞のノミネートを狙うべき!


そう強く思うので、今回、「なぜドライブ・マイ・カー」はオスカーの作品賞にノミネートされなければならないのか。そのことについて語ってみようかと思います。

 ちなみに僕なんですけど、まだ、肝心なこの映画を見れてません。残念ながら、まだブラジルには上陸してません。「なのに、そんなことを?」と思われるかもしれませんが、こういう映画賞のノミネートというのは、「ただ作品が良いから」だけでは通用しない世界です。そこには、映画関係者の根回しがかなり必要となってくる世界です。とりわけオスカーの場合は前哨戦ですね。12月から全米各地で1ヶ月以上も続く前哨戦。これの成績の悪い作品でオスカーのノミネートというのは、まずありえません。

 僕の場合、このブログでもうすでに、オスカーに関しては10年以上も前から前哨戦、いやその前の予想段階からのウォッチャーです。その経験を踏まえて、「ドライブ・マイ・カー」がなぜオスカーの作品賞にノミネートされてしかるべき作品なのか、それを語っていきましょう。


①国際的に今年随一の評価

まずは、こういうものから見ていきましょう。

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これ、先日話題になりました、バラック・オバマ元大統領がツイッター上で発表した今年のベスト映画。この方、「本当に元大統領だったのか?」ってくらい、映画とか音楽の趣味が批評家並みのセンスで驚くんですけど、そのオバマ氏が筆頭に選んでいたのが「ドライブ・マイ・カー」だったんですよね。

でも、今年、こういう人はオバマさんだけじゃありません。

それはこういう統計でも明らかです。

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アメリカのレビュー総合サイトで、僕の全米映画興行成績でもデータで使ってます「metacritic」。ここが、2021年の各映画メディアの年間ベストをまとめて集計したチャートがあるんですけど、「ドライブ・マイ・カー」、なんと2位なんですよ!しかも今年の世界中の映画の中においてですよ。すごいでしょ?

 ただ、映画の批評サイトというのは、オスカーよりも通常、もっとアート色が濃くてインディにも寄っています。あと、非英語の映画により親切です。だからこういう結果になっているというのもあるんですけど、それにしても2位は快挙ですよ。

②オスカー前哨戦で重要な映画賞で複数の作品賞

「どんなに映画の内容が良くても、オスカーの前哨戦で健闘しないとオスカーにはノミネートされない」。僕は先ほど、そう言いましたよね。

普段、日本映画ですと、こういう前哨戦でも、その各地の映画賞でも「外国語映画賞」だけのノミネートで普通です。

が!

この映画、前哨戦でもすでに大健闘してるんですよ!

それを今から説明しますとですね

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なんとニューヨーク映画批評家協会賞、ロサンゼルス映画批評家協会賞、ボストン映画批評家協会賞と、3つの老舗批評家協会賞で作品賞なんですよ!

ボストンに至っては監督賞、主演男優賞、脚本賞の4冠、ロサンゼルスでも脚本賞との2冠です。

あと外国語映画賞ならシカゴ、セントルイス、ダラス・フォートワース、ワシントンDCで受賞しています。

すごいでしょ?だから「外国語映画賞は受賞して当然の勢い」なんです。

しかもこれ、もともと注目されたきっかけがカンヌ映画祭での脚本賞でしょ。そこを考えても、すでにかなりグレード、でかいんですよね。

これだけすでに受賞実績あるんだったら、オスカーで作品賞狙っても決しておかしくはありません。

③ノミネート確定映画が少なく、まだ作品賞に枠がある

その、注目のオスカーの作品賞。これについて今度は語っていきましょう。

まず、オスカーの作品賞なんですが、例年、9作、もしくは8作品のノミネートです。

が!

今年、現時点でノミネート確定の作品はまだ少ない!!

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今年、今のところリードしているのはこの3本。「パワー・オブ・ザ・ドッグ」「Licorice Pizza」「ウェストサイド・ストーリー」。この3つくらいですね。この3本が実際にいろんな部門で争っている状態ですね。

そこに

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そこに「有力候補と目されながら、意外と前哨戦では強くない」2本の「ベルファスト」と「ドリームプラン」、それから「DUNE」、そして想像以上に前哨戦で健闘している「Tick Tick Boom」の4本。これが第2グループですね。このあたりは「ノミネートの可能性は高いけど、サプライズ落選があっても不思議ではない集団」ですね。

でも、まだここまでで7作品。つまり

1枠、ないし2枠、まだチャンスがある!

ここに「ドライブ・マイ・カー」が入ってこれるかなんですよね。

現状、ライバルになるのは

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サンダンスで受けたろうあ者の感動物語「コーダ あいのうた」があるくらいです。これがノミネートされても、まだもう1作品可能性がある。

となるとですね、もうほかに有力候補がないんです!

 ということで、今年の、正直なところあまり強くない作品賞の候補に「ドライブ・マイ・カー」、割って入るの、かなりチャンスがあるんですよね。

④「パラサイト」の記憶が、まだ生々しい

ただ、「作品賞にチャンスがあると言っても、英語じゃない作品でそれは可能なのか?」という問題が、とりわけ昔からありました。

 特にまだ作品賞ノミネートが5本の時代はそれが顕著でしたね。非英語で優れた作品は、監督賞や脚本、脚色賞でなんとかノミネート。そういうパターンが多かったものでした。

が!

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そのパターンを大きく破ったのが「パラサイト」でした。外国語映画賞だけでなく、監督賞や脚本賞もとれば、ついには作品賞まで受賞してしまった。ものすごい快挙ですよね。

 これが起こったのがほんの2年前です。そこに「ドライブ・マイ・カー」ときたらどうなるか。

「ああ、アジア映画、このところ勢いあるね」と、オスカーのノミネートの票を入れる人にはアピールしやすいんですよね。「パラサイト」という例外的な成功作が生まれた。しかも、それがまたしてもアジアの作品。となると、説得力にはなるんですよね。

 この受けるイメージを生かして、巧みにキャンペーンかけていけば、作品賞ノミネートで票を投じる人も結構出やすいはずなんですけどね。

⑤村上春樹は国際的にも非常に有名

それから、この「ドライブ・マイ・カー」、国際的な利点なら、もう、映画の作品以前にあるんですよね。

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村上春樹ですから!

もう、「ハルキ・ムラカミ」っていえば、世界のどこの人でも通じます。彼の作品の映画化でもっとも成功した、と言われれば、それはもう、相当有利です。なにせ、ずっと長いこと、「今年こそノーベル文学賞、受賞か?」と言われ続けてたような人ですよ。もう、その時点でかなりアピールになるんですよね。そこも強調してキャンペーン張れば良いと思います。

⑥今回ノミネート逃すと、国際映画界における韓国映画との印象の差を縮めらないままになる


①から⑤の流れで読んでいって、「じゃあ、ドライブ・マイ・カー、チャンスあるんじゃん!」と思っていただいたら幸いですけどね。実際、まだまだこれからノミネート発表のある2月までプロモーションしてアピールしていけば、作品賞のノミネート、十分可能だと思いますので。

 逆にですね、今回のこの絶好のチャンスを逃してしまうとですね、せっかく日本映画が韓国映画にクオリティ的に太刀打ちできることを世界に証明できる機会を失ってしまうんですよね。

 そんなチャンス、なかなかないですよ。そこを生かさないと、今回みたいな日本映画へのオスカー最大賞への接近。この次、いつ起こるんですか?

 そうじゃなくても

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音楽ではBTSの世界中のチャートでのナンバーワンに、ドラマだと「イカゲーム」の現象的成功。これが「パラサイト」のオスカー作品賞受賞に立て続いて起こってるわけです。エンタメ全体の勢いで日本が韓国に国際的アピールで勝てることは現状残念ながらありません。そこを折角、「日本だってこんなにすごいの作れるんだ」とアピールできるときにそれをフルに発揮できないのなら、日本のエンタメのアピールが子供向けアニメとか、そういうのだけに押し込められかねませんからね。そのイメージを変える意味でも、今回はなんとか作品賞にノミネートされてほしいんですよね。

それにはやっぱり、業界の後押しが必要なんですよね。ぶっちゃけ、一昨年の「パラサイト」の前哨戦での成功は、それでも今回の「ドライブ・マイ・カー」よりも残念ながらかなり上でした。もっと多くの賞を受賞して、前哨戦の時点でトップクラスでしたからね。

 あのとき「パラサイト」があの快挙にこぎつけられたのも、やっぱり、前哨戦での韓国映画界の業界関係者の根回しと投票者へのアピール活動が大事なんですよね。そこまでの準備が果たして日本の関係者にできているか、というと正直な話、疑問なんですよね。

今回仮に作品賞にノミネートできなかったら、厳しい言い方にはなりますが、日本の業界の積極性のなさが理由にはなるでしょうね。そうならないように頑張ってほしいものです。


ちなみに、「ドライブ・マイ・カー」、作品賞にノミネートされても、作品賞で最有力なのは「パワー・オブ・ザ・ドッグ」になるような気はしてます。この映画のレビューも近日中に考えてますよ。


 








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