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連載 ロックのヒット曲が出なくなる史(4) 追い風を生かせず、インディ・ロックが急失速した10年代前半

どうも。

では、連載、「ロックのヒット曲が出なくなる史」、4回目に行きましょう。

今回は、2000年代の末期から2010年代の前半の話をしましょう。

 今からは、なかなかそう考えにくいかもしれませんが、実はこの時期、

①インディ・ロック、追い風状態だった!


 2008年頃にヴァンパイア・ウィークエンドとかMGMTといった、ニューヨークからの新しいおしゃれなバンドが注目を浴びます。

 ちょうどこの時期がですね、出版不況も重なって、それまでロックスター量産してきたNMEの時代から、アメリカのサイト、ピッチフォークの時代へと切り替わっていくことになります。

 この頃、インディのバンドそのものがヒップな時代でした。それは

myspaceのブームとかありましたしね。明日のスター探しが、SNSサービスでフリーで聴けるところから見つけることができる。そんな一攫千金的な夢があった時代でした。

 ちょうどこの頃に、ロックの風向きがガラッと変わるんですよ。というのは、(3)のところで話した、90年代末からアメリカのオルタナティヴ・ロック・ラジオ局を支配し続けていたニュー・メタルがほほフォーマットから絶滅したからです。これまでニュー・メタルをメインでかけてたような局は、マッチョなスポーツ専門局に変わった、などという話も聞いてます。

 そこで、ちょうどラジオ局が新しいスターを求め始めていて、新しい新人バンドに白羽の矢を立てようとしていたんですね。そこでピッチフォークが推すタイプのアーティストも注目されはじめてですね。

https://www.youtube.com/watch?v=-83qrKGZ3ps

Bon Iverとかフリート・フォクシーズみたいな、玄人ウケする渋いバンドも売れ始めたりもします。

②ヒットがいろんなところから相次ぎ、グラミーでさえウケた


特に2009年から10年くらい、ちょうど年代の切り替わりの時に、なんかやたらヒットが出たんですよね。

フランスからもイギリスからもオーストラリアからも売れてくるアーティストが立て続けに出てましたからね。

そして驚きはこれでしたよね。

2011年のグラミー賞でアーケイド・ファイアが「Suburbs」で、大波乱のアルバム・オブ・ジ・イヤーを受賞した瞬間ですね!これ、本当に衝撃でした。それこそ「ピッチフォークが持ち上げた権化」のような存在がですよ。

ブラック・キーズもグラミー強かったんですよね。2013年2月のグラミーでは3部門だったかな、受賞もしてます。

③2011〜14年はシングル・ヒットもいっぱいだった!


そして2011年から14年にっかけてはシングル・チャートの上位に入るようなヒット曲も連発されていくんですよね。

その口火を切ったのが

やっぱ、フォスター・ザ・ピープルの「Pumped Up Kicks」の存在は大きかったですよね。これが全米3位のヒット曲になったのは本当にびっくりでした。

それに続いて

2012年の4月には、この2曲が全米1位を順にとったんですからねえ。これもかなりの驚きでした。ちょうどうちの息子が生まれた頃なのでよく覚えてます。

funで、横で眼鏡かけてギター持って立ってるの、今をときめく大プロデューサー、ジャック・アントノフなんですよね。その頃、そんな注目なんてもちろんしてませんでしたけど。

アルバムは毎回売れますけど、ラナ・デル・レイの現状、唯一の世界的大ヒット曲が出たのもこの頃ですね。

ラナとかフローレンス&ザ・マシーンとかセイント・ヴィンセントみたいな才女が注目されるようになってきたのも、この辺りですよね。

https://www.youtube.com/watch?v=PVjiKRfKpPI

この頃、シンガーソングライターっぽい人も売れるようになってて、ホージャーのこの曲も世界的に大ヒットしましたね。

④ただ、パッとせず、失速してしまったのはなぜなのか・・・

 ・・と、ここまで見ていくと、状況がかなりよくなっていたよういに見えるでしょ?ところが2015年にもなると、ロック、大失速して、ここからが大変になるんですよね・・・。その原因は一体何なのか。

 ひとつは、やっぱ売り出すアーティストに微妙に華がなかったんですよね・・。そこが、地味好みのピッチフォークのスター作る限界でね。

 これは僕もずっと思っていました。だって

このあたりのバンドが「時代を作る」と言われても、「それはいくらなんでも無理あるだろ・・・」と思いましたからね。音がロウファイすぎる時点ではマスには不向きだろうと思ってましたからね・・・。

 まあ、そこはさすがにキラーズとキングス・オブ・レオンみたいな、シングル・ヒット出せるポテンシャルのあったバンドにデビューから一貫して低評価し続けたピッチフォークらしいセンスですけどね。

 あと、ラウドロックが売れなくなり、エモのブームまで去ってしまったあと、やんちゃな子や若い子がロックから離れてEDMに行ったりしたことで、ロックファンそのものに活力がなくなったんですよね。これも本当に痛かった。

 あと、ヒットしたものでカリスマ性のあるアーティストが少なくなってしまった。ここも注目すべきなんですよね。上にあげたもので、カリスマ人気で引っ張っていけたのって、ラナとか、テイム・インパーラとか、あとヴァンパイア・ウィークエンドくらいかなあ。アーケイド・ファイアが予想外の急失速したのも響いてると思います。前に別記事で書きましたが、天狗になったらダメってことですよね。

そうやってシーンが地味だから

結局のところ、アメリカのメジャーがマーケティングで人工的にこしらえたようなイマジン・ドラゴンズがロックとして一番売れてしまうような状況ができてしまうんですよね。

 すごくお高いピッチフォークみたいなメディアが主導権握った結果、アメリカで一番売れてるロックがイマジン・ドラゴンズとかトウェンティ・ワン・パイロッツみたいなモダンな産業ロックバンドになってしまった。これはものすごい皮肉だと、僕は捉えています。

⑤この年がなかったらと思うとゾッとする2013年


2015年以降くらいから長く続いた(と過去形にしてみます)、ロックの停滞を見るに、「この年がなかったら一巻の終わりだったんじゃないか」と思うのが2013年ですね。この年がなんとかロックを救ってくれてるというか。

 まず、この年は

この当時まだ17歳だったLordeの「Royals」。これがビルボードのシングル・チャートで7週1位をとったのは大事件でしたね。これを「インディ・ポップ」と解釈する人もいましたが、インディ・ロックで全然ありですよ。

このLordeと同じ年に

HAIMも

ウルフ・アリスもデビューを飾っています。

そして

THE 1975のデビューですよ!彼らいなかったらと思うと、希望なかったですよね。特に2016年から18年あたりは、もう数少ない希望だったので。本当に「ありがとう!」という感じですね。

 そして、2010年代のロック最大のヒット・アルバムだと言い切っていいでしょう、アークティック・モンキーズの「AM」が出た年です!これがいかにロックファンに、今後への希望、期待を込めて愛され続けているかは、これまでも何度となく言った、Spotify内での驚異のロングヒット、全英チャートで発売9年後もまだトップ10に入っていることからも明らかで す。最新作もほとんどの国でトップ10入りましたからね。

 まだ30代半ばだし、彼らを中心にまだロックに期待をかけたい人も少なくないと思ってます。

 では、次回、5回目で最終回です。


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