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グレイプバインというバンドが、想像以上にすごい存在であることがわかったことについて

どうも。

こないだ言ってた「最近聴いてるバンド」というのは

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グレイプバイン!

制約があり「全アルバム」ということではないんですが、以前から僕のブログでやってなぜかウケのいい(笑)、邦楽アーティストのアルバム(ほとんど)全作リスニング体験、ユーミン、ラルク、サザンに続いて第4弾がグレイプバインで行くことにします!

でも、冷静に考えて、ようやく「本来の沢田太陽」っぽいアーティストだと思いません(笑)?今までは、僕が語ることでの意外性で反響があったと思ってるんですけど、やっぱりバインみたいな、僕が好きそうだと思われがちなオルタナっぽいバンド、これをどうとらえているか、というのも大事な見方だと思いましてね。

 「なぜバイン?」ということですが、キッカケはやっぱり、これですね。

今、トップに掲載している、この「邦楽オールタイム・ベストアルバム」の企画において、もっとも多くのアルバムを投票されたアーティストがグレイプバインだった、という、事前に全く予想されなかった事実が浮上したからなんですね。これ、結構、投票した人たちのあいだで話題になってたんですね。

ということもあり

この邦楽アルバムを企画したJMXさんが「グレイプバイン総選挙」という企画を立ち上げたんですね。そうしたら、これに237人って言ってたかな。すごい数の人が参加したんですって。

 で、僕も「こういう機会でもないと、なかなか全部アルバム聞く機会もないからな」と思って、参加しようとしたら

ブラジル、サブスクに4枚入ってない!

これで一瞬ひるんで参加やめようかとも思ったんですけど、「不完全ならそれなりの対処でいいじゃないか」と思って、デビューから現在まで振り返って、ある分は全部聞いたんですね。

そうしたら

ここまで、すごいバンドだったんだ!

という、気づきがありました。そのことについて語っていきますね。

まず、個人的な経験で言いますと、グレイプバインを最初に聞いたのは1997年。まさに

デビューEPとなった、この「覚醒」の頃からです。これ聴いたときに、「なんて、すごいバンドがでてきたんだ!」と衝撃でしたね。この当時、日本でようやくオルタナティヴなロックが根付きつつあったんですけど、グランジとブリットポップの両方の魅力をギター・サウンドでリアルに表現できる日本のロックバンド、まだまだ少なかったんですよ。僕の場合は、やっぱり根本が今も昔も洋楽ロックリスナーなので、それはそれはうれしかったですよ。この当時、NHK-FMで「ライブビート」って番組、はじめたばかりでしたけど、もう、これ聴いて早速出演オファーかけましたからね。あのときの瞬間風速では一番好きなバンドでした。

 で、ライブビートには1998年2月19日の収録の日に出て、その収録の終わった直後にはじめてナンバーガールの「School Girl Bye Bye」聴いてそれですべてが変わったとこもあるんですけど(笑)、でもバインはやっぱ僕の中ではプライオリティ高くて。

 デビュー・アルバムの「退屈の花」は、そうした極めて趣味性の高いサウンドを「日本の今のオリジナルのロック」に変換する手前、若干、洋楽の趣味性、落ちたな、という印象だったんですけど

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この「Lifetime」というセカンド・アルバムは、「90sロックのハイライト」とでもいうべき傑作でしたね。パール・ジャムのマイク・マクレディみたいなサイケデリックなギターの音色に、ノエル・ギャラガーみたいなギターのフレージング、オーシャン・カラーシーンやポール・ウェラーのギタリストのスティーヴ・クラドックのグルーヴ感。特にネオモッズ系の人が好みそうな感じですね。これらの趣味性がいかんなく発揮されている上に、彼らのトレードマークになる亀井亨のサビでの哀愁の決めメロディ。このバランスの取られ方が絶妙なんですよね。それから、ちょうどこのころは、日本の音楽シーンに驚くほどに優れたニューカマーが続々現れたころでもあって。なので、そうした歴史ドラマ的な観点で見ても、このアルバムは外せないですね。邦楽オールタイムでバインの最高位(57位)を記録したのも妥当です。

ただ、ここから先が、当時の僕個人的な印象がよくなかったというか。次の「Here」はまだレベルの高いアルバムで、アレンジの多様性もあるアルバムだとは思うんですけど、その次の「Circulator」ってアルバムが僕、ダメでして。なんか、あの当時のトラヴィスとかコールドプレイみたいな叙情派UKロックみたいにまったりした感じになって。出てきたときのエッジに少しかけて守りに入ってるみたいに聞こえたんですよね。で、ちょうど僕がフリーになって洋楽専門になったこともあって、ここからバイン、聞かなくなってたんですよね。

が!

 実は、ここから先が面白かったことに気がついてなかった・・・。

 ここが今回、最大の発見でしたね。

グレイプバインって、僕は長いこと、「初期から完成されていたバンド」だと思い込んでたんですね。やっぱり今聴いても、デビューからあの当時の90sの洋楽ロックの旬なギター・ロック・サウンドを完璧に聞かせていたバンドって振り返ってもなかなかないし。あと、メンバーの音楽の趣味も、かなりマニアックなクラシック・ロックで。通常、そういうタイプのバンドだと、えてして古い音楽と比べて自分たちの音楽の完成度をはかりがちだから、勢い、自分たちの世界に入りすぎて、「現在の、自分たち以外のリスナーに伝える」ということがおろそかになりがちなんですね。「ライブビート」やってるときに、そういうマニア性の域を出ないバンドもたくさん見てきていたので、そういう懸念をバインに感じてたところも、もしかしてあったかもしれません。

 しかし、今、改めて聴いてみて、ここからが本当に面白いんですよ、このバンド。

まず

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この「Another Sky 」ってアルバム。ここからベースの西原氏が抜けて3人体制になるんですけど、このあたりからギター・サウンドがちょっと変わってきて、曲によってXTCみたいな感じも出てきたり、あと、サニーデイ・サービスのサポート・キーボードだった高野勲の鍵盤アレンジが多彩なことが、バインのサウンドの幅広げてたりして、まず、これが面白いなと思っていたら

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この「イデアの水槽」って2003年のアルバムで、ついに吹っ切れたか、というか。これはもう、これまでのこのバンドの「ここまででいいや」と思っていたところ、英語だと「コンフォート・ゾーン」って言い方をするんですけど、それをあらゆる観点で破った、「自己内パンク」みたいなアルバムですね。1曲目の「豚の皿」って曲からいきなり「OKコンピューター」のときのレディオヘッドのようなドロドロしたグルーヴと展開の大きな曲で、それ以降も田中和将、かなりソウルフルな歌い方する人ですけど、彼がこれまでになくシャウトするようになって、これまで聞かれなかったパンクっぽい曲も歌うようになったりして。ソウルっぽい曲をやるにしても、今までよりもさらに濃くしたりとかもして。全てにおいて濃度が濃くなりましたね。

 で、残念なことに、次のミニ・アルバムは聞けたんですけど、その次の「Deracine」「From A Smalltown」が僕の国のサブスクになくてですね。シングル曲しか断片で聞けなかったんですね。この辺りがちゃんと分析できなくて惜しかったんですけどね。とりわけ「From〜」は今日でもライブでの披露頻度が高いアルバムでかなりファン人気の高い作品だとは聞いてはいたんですが。

 その2枚のアルバムを経て、

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この「Sing」ってアルバムに驚きましたね。これ、仮に2020年の今のアメリカのインディのバンドから出てきたとしても、かなり評判いい作品だと思いますよ!

 なんかすごく、ビッグ・シーフとか、今のああいうバンドを思い浮かべさせるものがあるというか。フォークっぽい曲ひとつとるにしても、これまでの日本のロックバンドっぽいそれとなんか違うというかね。レディオヘッドでいうなら「OK Computer」、1曲似た曲があるんですけど「Kid A」もある上に、この当時で最新アルバムだった「In Rainbows」のニュアンスも感じさせたし。あと、全体にウィルコとかスプーンとかの、当時のUSのインディロックの感触がありますね、これ。

そして、さらにこれが

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この「真昼のストレンジランド」というアルバムで、それがさらに高まってですね。とりわけこのアルバムだと

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この西川弘剛のギターの炸裂ぶりが素晴らしいですね。これに限らず、彼のギター・スタイルってすごく立体的かつクリエイティヴで大好きですね。さっきも言ったパールジャムのマイク・マクレディにレディオヘッドのジョニー・グリーンウッド、ウィルコのネルス・クラインといった、いずれもかなりの名手ですけど、すごいこういう人たちのプレイを自分なりに吸収して体得してる感じがしますね。こういうプレイヤー、バンドにいたら、そりゃ、強いよなと改めて思いましたね。

「ずいぶん、音楽的な成長を遂げたんだなあ」としみじみ思いながら聞いていくと

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この「Burning Tree」ってアルバムでは、エレクトロにまで表現を広げてね。ただ、正直な話、僕自身の意見ではありますが、「ここまでは行かなくていいかな」というとこではあります。ベーシックなバンドサウンドでの表現の方がいい味が出るバンドだし、こういうサウンドならスーパーカーとかくるりの方が上だと思うので、彼らにこれは期待しないというかね。

その意味では

「Sing」以降にバンドとしていろいろ試した後に、田中っぽいソウル回帰をしたみたいなアルバムの近作2つ、いいですね。特にこの曲あたりは。薬師丸ひろ子の「Woman Wの悲劇」とサビのメロディ、一緒ではありますが(笑)。本当に器用にいろんなことできるバンドだなあと思う次第です。

・・と、こういうバンド変遷なんですけどね。

今回、改めて聴いてみて感じたことをまとめてみたいと思います。

まず

プロデューサー選択が大正解だった

ここ、でかいと思いますね。

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彼らの場合、「イデアの水槽」までが根岸孝旨、「真昼のストレンジランド」までが長田進なんですが、2人ともに90sの奥田民生の重要なブレーンなんですね。その頃の奥田民生って言ったら、僕らみたいな洋楽をメインに聴いてきたリスナーからしてみたら、フリッパーズの2人に次ぐくらいの重要なアーティストでしたからね。そのサウンド作るのに貢献してきた2人ですよ。この2人が離れるかその前くらいから民生の方には全く興味がなくなっちゃったんですけど、その分のサウンドの創作エネルギーがバインに行ってたんだな、というのが今回聴いててすごくはっきりわかりましたね。

それから、あとはやっぱり

もともと完成度高かったバンドが試みた進化の努力

これが大きいですよね。田中のヴォーカル、西川のギター、亀井のソングライティング。病気を理由に惜しまれながら脱退したけど西原も。素質の時点で魅力的だったのに、そこで自己満足せずにバンドサウンドを高めようと試みた、その姿勢。立派だと思いますね。

 ぶっちゃけ、「SIng」が出た2008年くらいから今日までの評価で見てみるならば、「その期間に発表された音源」ということでいうなら、90s以前にデビューしたベテランの中では、バインくらい良いのって坂本慎太郎さんくらいじゃないのかな。あと、サニーデイの曽我部くんの復調もその時期なら評判はいいですけど、僕はその比較でいうならバインの方が勢いある感じがするし、同じ時期ならくるりよりも上でしょうね。僕、大半、その時期に日本いなかったからわからないんですけど、そのあたりって日本ではどうだったんでしょう?そこは、オリコンのチャートの最高位だけでは推理できない世界なので、よくわからないのですが。

「そこまで潜在的にすごいバンドなら、そりゃ、オールタイムのアルバムに自然に投票したくもなるよな」」

 結果的に、こういう結論に達しましたよ。実力がもとから高い上に、ここ10年ちょいが充実してるから、マスコミの騒ぎ方は地味でも邦楽オールタイムで上位にくるんだな、という感じで。

「なんで今まで、あんまり派手な感じで日本を代表するバンドみたいに扱われてなかったんだろう」と自分なりに考えてみたんですけど、思うに

歌詞への共感

ここで割を食っていたところはあるんじゃないのかな、と思いますね。特に男性側の方からですね。

田中和将の書く、男女関係をメインにした歌詞って、女の子のウケは良いと思うんですけど、「野郎の共感」となると話は別で。特にスヌーザー読者あたりに顕著ではあったんですけど「僕らの日常」ってとこに、あまりにも音楽通のリスナーの優先順位が置かれすぎていたというか。そういうとこでいえば、スーパーカーとかくるりの方が共感されやすかったし、ナンバーガールの向井も言葉の発明のセンスに加えてその要素があったから人気だったと思うしね。そこのところで結果的に損してたんじゃないのかな、と思います。でも、そういう感覚なら、時代とともに年を重ねて「ある世代のもの」にもなるわけだから、そういう感覚への共感が鈍ると今後バイン、強いかもしれないなと思いますけどね。

最後に、僕が投票した内容、書いておきますね。

Top 10 Songs Of Grapevine

Glare
疾走
ぼくらなら
いけすかない
ナツノヒカリ
風の歌
その未来
Core
Silverado

Top 10 Albums Of Grapevine

Sing
真昼のストレンジランド
Lifetime
イデアの水槽
Another Sky
愚かな者の語ること
Everyman Everywhere
Here
All The Light
覚醒

こんな感じですけどね。「真昼」と「Lifetime」は順位、何回か書き直してるので、どっちが2位で提出したか、自信ないんですけどね(笑)。

 そうこうしてるうちに、グレイプバイン総選挙、アルバムは結果出ましたね。「SIng」が1位のようです。やっぱりなあ。前に選んだ僕の「平成のアルバム50選」。ちょっと修正してこのアルバム、入れたくなってきてます(笑)。それプラス、あと何枚か入れ替えたいんだよなあ。マガジンとして売る前に実行しようかなあ。

あと、バイン選挙は結果気になる方はJMXさんのツイッターに出てるので、興味のある方は見ることをお勧めしますよ。





 





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