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全オリジナル・アルバム Fromワーストtoベスト(第46回)AC/DC. 17~1位

どうも。

では、今年に入って2回目のFromワーストToベスト。

今回、ついにこの人たちいきます!

はい!AC/DCです。今までやってなかったことの方が不思議なくらい、僕の書いてるものを古くから見ていらっしゃる方には、もうおなじみかとも思いますけど、人類が生んだ最高のロケンローなバンド、とうとういきます。

本当は当初、新作の出るジューダス・プリーストも考えたんですけど、プリーストってサブスクで聞けないものが4枚くらいあって、まあ、確かにそれが人気なさそうではあったんですけど、そこで気乗りがしなくなって、「やろうと思えばいつでもできる」状態でいたAC/DCがアナログ盤再発のキャンペーン始めたので、この機会にやろうかと思った次第です。

アルバムは、AC/DCの場合、見方によって複数の解釈できるんですけど、今回はこの17枚で行ってみたいと思います。早速17位から見てみましょう。


17.Fly On The Wall (1985 US#32  UK#7)

17位は「Fly On The Wall」。俗に言うスランプ期の作品ですね。80年代、数年間、振るわない時期があったのです。でも、それは今からしたら自業自得。特にセルフ・プロデュース期の2作目のこれはアイデンティティ・クライシスまで感じますね。なんか、音がモコッとして音の分離が変で、彼らの持ち味である小気味いいスピード感がなく、それこそこの時期のメタルブームのB級、C級のバンドみたいな聞こえ方なんですよね。あと、ドラマーがこのアルバムで変わってるんですけど、当時22歳で入ったサイモン・ライトって人の叩き方が力任せに乱暴で、それがAC/DC固有の緩やかなグルーヴを殺してしまってるんですよね。これも嫌ですね。彼らみたいなロックンロール・レジェンドでもこんなに自分を見失うことってあるんだなと思わせる意味では貴重かもしれません。

16.For Those About To Rock (1981 US#1 UK#3)

16位は、これは驚く人、いらっしゃるかもしれません、「悪魔の招待状」。
「全米1位のアルバムになんてことを」と思う人もいらっしゃるかもしれません。ただ、彼らが持っていた良いものを見失わせることになったのが僕はこのアルバムだと思っています。なんか全体をヘヴィに作りすぎて、かつオーバー・プロデュースなんですよね。音が変に分厚く、重く、長年カレッラを聞いてる耳には不自然なバックコーラスもあって。「なんかAC/DCをレッド・ツェッペリンみたいにしようとしてないか」という違和感を聞いていて感じます。もっともこれをプロデュースしたロバート・ジョン・マット・ラングはAC/DCとはこれっきりで、この2年後にデフ・レパードの「炎のターゲット」というアルバムで一世を風靡することになるんですけど、マット・ラング自身が当時の最新テクノロジーを駆使できるだけ駆使した作り込んだ作品、作りたくてたまらなかったんでしょうね。でも、その実験台としてAC/DCはふさわしくなかったんだと思います。ただ、それでも、アルバムのタイトル曲は彼らのライブにおける永遠のクロージング・ソングであり、その意味では不可欠なんですけどね。

15.Flick Of The Switch (1983 US#15 UK #4)

15位はFlick Of The Switch、邦題は「征服者」。これは「悪魔の招待状」の次作で、初のセルフ・プロデュース作です。このアルバムでは、この前作のような違うバンドのような大仰な作りはなく、彼らの持味であるラフでロウ(Raw、生々しい)な感じで作られているし、「Rising Power」「Flick Of The Switch」「Nervous Shakedown」といったキャッチーな曲も収められている分、この前作よりは好きです。ただ、この時期の傾向で彼ら自身がちょっとヘヴィな方向から抜けられず、持ったりとした抜けの悪さを感じずにはいられないんですよね。その辺りは本人たちも気にしてるからなのか、これと、ワーストにあげたFly On The Wallが振り返られることって、ほぼないですよね。でも、僕にとってAC/DCで好きじゃないと思うのはせいぜいこの3枚くらいで、これ以降は普通にファンとして大好きなアルバムばかりですね。

14.'74 Jailbreak (1984. US#76)

14位は「74 Jailbreak」。これはリリースこそ1984年ですけど、これは過去の音源の編集盤でして、1曲めの「Jailbreak」は1976年に本国のみでリリースされていたオーストラリアでの「Dirty Deeds Done Dirt Cheap」に入っていた曲。そして残り4曲が、オーストラリアでのデビュー作になります1975年作のデビュー・アルバム「High Voltage」に収録されています。Jailbreakに関しては、もうすでにAC/DCのサウンドが確立されて以降の曲なんですけど、オージー盤デビュー作の頃って、まだ彼らにせよ、マルコムとアンガスの兄貴でプロデューサーを務めたジョージ・ヤング、さらに彼が60年代に「オーストラリアのビートルズ」と呼ばれたイージービーツ在籍時のコンビで共同プロデューサーのハリー・ヴァンダ、その誰もが試行錯誤の頃で、他の4曲のサウンドがゆるゆるで後の彼らのような鋭さがないんですよね。ただ、その中の1曲でヴァン・モリソンがかつて在籍した伝説のバンドThemの「Baby Please Dont Go」をカバーしてるように、彼らのルーツが「ブルージーでソウルフルな、エッジの効いたブリティッシュ・ビートのバンド」であることがはっきり確認できます。その意味では彼らを知る上ではかなり貴重だと思います。

13.Rock Or Bust (2014 US#3 UK#3)

13位は「Rock or Bust」。これは現時点で2番目に最新のアルバムですね。パールジャムやレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンを手がけていたブレンダン・オブライエンがプロデュースを手がけるようになって2作目です。この6年前に出た前作がキャリア史上屈指の大成功を収め、サウンドそのものは安定した中で出した作品でしたけど、その裏ではリーダーのマルコムの病気が悪化して痴呆症の症状まで出たことからヤング兄弟の長男(と言っても20歳以上離れてる)の息子、スティーヴィーがマルコムの穴を埋めてリズムギターを務めました。そしてツアー前にはドラマーのフィル・ラッドに殺人未遂の容疑がかかりツアーに出れなくなり、さらに今度はブライアン・ジョンソンに耳の病気が発覚。ガンズ&ローゼズのアクセル・ローズが代役を務めるなど満身創痍でした。なんかそういうこともあって、安定して以降のアルバムの中では悲しい思い出が上回ります。あと、ブレンダンで音がすっきりしたんですけど、このアルバムは幾分、綺麗に作りすぎかな、という印象もあります。

12.Blow Up Your Video (1988 US#12 UK#2)

12位は1988年の「Blow Up Your Video」。長く不調が続いていたAC/DC絵したが、1986年のサントラでの新曲「Who Made Who」で彼らの持ち味である軽快さを取り戻し、その勢いが反映された痛快なアルバム。チャート・アクションでも久々に勢いを取り戻しました。何を隠そう、僕が彼らを本格t気に聴き始めたのはこのアルバムからで、この当時に「Heatseeker」「Thats The Way I Wanna Rockn Roll」の冒頭2曲はかなり何度も繰り返して聞いたものです。そうした思い出もあるのでもう少し上位にしたいところでしたけど、聞き返すと、今の耳ではまだちょっと違和感あるんですよね。オーバー・プロデュースになってたところは10年ぶりにタッグを組んだヴァンダ&ヤングの手腕によりシンプルに戻ってるんですけど、サイモン・ライトのドラムが強すぎてそこが気になるんですよね。でも、いずれにせよ、復活の狼煙がここから上がったことは確かです。

11.Stiff Upper Lip (2000 US#7  UK#12)

11位は「Stiff Upper Lip」。これは欧米でこそ大きな話題がないため、地味なチャート・アクションで終わったアルバムではあるんですけど、日本のAC/DCファンにとってみれば、ものすごく意義のあるアルバムです。このアルバムのツアーで19年ぶりのジャパン・ツアーを実現させたんですから!忘れもしない2001年2月、横浜アリーナに2日とも見に行きました。このアルバムは本人たちも地味だと思ったのか、このツアーで披露されたのはタイトル曲1曲のみだったんですよね。でも、この前作で昔ながらのAC/DCのシグネチャー・サウンドを取り戻し、それをヤング兄弟5男(マルコム6男のアンガス7男)、スティーヴが今回はハリー・ヴァンダ抜きで12年ぶりにプロデュース。基本に立ち返りたくなる時はいつも兄貴のところに戻って「シンプル・イズ・ザ・ベスト」になるのがAC/DCの習性でもあります。

10.Dirty Deeds Done Dirt Cheap (1976 US#3)

10位は「悪事と地獄」。オーストラリアでは3枚目、国際的には2枚目にあたるアルバム。このアルバムは彼らが「バック・イン・ブラック」で世界的にビッグになった後にアメリカで再発され、時の勢いで全米3位まで上がるヒットになってます。また、タイトル曲がジョーン・ジェットにカバーされて1990年に全米トップ40ヒットになったことでも有名です。・・なんですけど、僕が今回そこまで上位にあげてないのはですね、この時期の彼ら、まだ今みたいに方向性が完全に固まってなかった感じがするからなんですよね。すでに彼らのシグネチャー・サウンドである、硬質のブルージーなギター・リフで小気味よくグイグイ押すスタイルは生まれてはいるんですけど、当時のボン・スコットがなまじうまいヴォーカリストであったせいなのか、ミドル・テンポの曲とか、スロー・バラード調の曲、Aメロ、Bメロで物語調の曲とか、ちょっと今でいうAC/DCというイメージと違う曲もあるんですよね。このアルバムで聞かれたそうした部分にこだわらずにスパっとロックンロールに舵を切ったのがその後の成功につながったのかなとは今にして思いますけどね。


9.Power Up (2020 US#1  UK#1)

9位は「Power Up」。現時点での最新作ですね。これが出た時は、当初はなかなか明るい気分で迎えられなかったですね。2017年にリーダーのマルコム、そしてプロデュースも手掛けていたジョージのヤング兄弟が死去。さらには「Rock Or Bust」の際の騒ぎもあったわけでしょ。加えてリリースされたのはパンデミックの真っ只中。世の中的にはロックンロールなんて完全に死んでた。いい予感も何もしなかった。なので、その当時はあまり熱心に聞く気になれなかったんですよね。でも、レコーディングには刑期を終えたフィルも、病気の良くなったブライアンも参加。そして耳を傾ければ、いつも通りのはずのロックンロールが不屈に鳴り響いている。しかもそれが、悲しみやトラブルを吹き飛ばすかのような明朗さと前向きさが感じられる、文字通りの「パワーアップ」の内容でパフォーマンスにもキレがあるんですよね。今年これから、パンデミックの時にやり損ねたこのアルバムのツアーを始めるんですけど、フィルとベースのクリフ・ウィリアムズが結局若い人に変わっちゃうんですけど、最新アンセムの「Shot In The Dark」などとともに盛り上げてくれると思います。

8.The Razors Edge (1990 US#2 UK#4)

8位は「The Razors Edge」。1990年、世が80s半ばから続いたメタル・ブームの際に、AC/DCがその時代の象徴する大ヒット曲、今でも頻繁によくします特大アンセム「Thunder Struck」を含んでいるのがこのアルバム。これは彼らにとって「Back in Black」以来の大ヒットになりまして、全米アルバム・チャートで2位まで返り咲くほどになりました。ただ、当時、僕はこのアルバムのことがなかなか好きになれませんでした。このアルバム、プロデューサーがボン・ジョヴィやエアロスミスでおなじみのブルース・フェアバーン。この時点で売りに来てるのはわかったし、いざ聴いてみたらオーバー・プロデュースに聞こえて。さらに「You Shook Me All Night Long」のあからさまの二番煎じの「Money Talks」が全米トップ40ヒットにもなったりして。ちょっと複雑でしたね。ただ今聞き返すと、確かにスキンヘッド・ドラマーのクリス・スレイドの力一杯叩いたスネアへの「ドーンッ!」という音はいかにも当時の時代の産物っぽくて嫌なんですけど、タイトル通りの「カミソリのエッジ」のようなアンガスとマルコムのギターのエッジはしっかり尖ってるし、「Fire Your Gun」「Are You Ready」とリフの感覚の冴えた良質ロックンロールは揃ってるし、彼らの状態自体はすごくいいんですよね。そのことはメタリカやブラック・クロウズ、パンテラと行ったモスクワ公演や、彼らのライブ盤の最高傑作であるイギリスのドニントン・パークでのライヴがこの時期だったことにも象徴されているかと思います。


7.Ballbreaker (1995 US#4 UK#6)

7位は「Ballbreaker」。「The Razors Edge」のよさはわかるようになってきてはいるんですけど、でも僕はやっぱこっちですね。やはり、このアルバムこそがAC/DCのサウンドを本来の70sの時のサウンドに取り戻してくれた作品だし、それが今日まで続いていることに意義があります。その立役者がリック・ルービンですね。彼のことはランDMCからビースティ・ボーイズ、スレイヤー、さらにはレッチリと手掛け心からクールだと思って尊敬していたし、そんなオルタナを代表するプロデューサーがAC/DCと組むと聞いて当時いてもたってもいられなかったものです。その予告となったのが映画「ラスト・アクション・ヒーロー」での「Big Gun」で、その時点でかなり削ぎ落としたサウンドになっていたんですごく期待して。そこから2年近く経ってこのアルバムが届けられました。ただ、その時はもう、削ぎ落としすぎ逆にかなり地味に聞こえたものでした。メンバーがレコーディングを振り返るに、リック・ルービンって黙々と同じプレーを何度も繰り返して要求するのですごく仕事がしにくかったそうです。それゆえ彼らはこれ1回しか仕事してないんですけど、このアルバムでつかんだ感触は好きだったのか、これ以降、エンジニアのマイク・フレイザーは今日までずっと変わらずに仕事してますね。あと、このアルバムでフィル・ラッドがドラマーとして復帰。派手に叩かない、リフに呼応した合いの手のようなグルーヴィーなリズムが戻ってきて、それも彼らのサウンドの原点回帰の大きな要因となっていますね。

6.Black Ice (2008 US#1 UK1)

6位は「Black Ice」。AC/DCが今日まで知られるような、世界の誰もが認めるロックンロールの巨人と認知されるようになったのはこのアルバムが故だったような気が今でもします。お膳立ては揃ってたんですよ。これまではメタル側で大物とされていたところ90sになってブラック・サバスと並ぶかそれ以上の勢いでオルタナティヴ・ロックの側から評価されるようになり、00sに入ると今度はロックンロール・リバイバルでハイヴスやジェットといったバンドたちからリスペクトを受け、ガレージ・ロックンロールのパイオニア的な見られ方もされるようになっっていました。そういうリスペクトが高まるのを貯めに貯めて待つこと8年、レコード会社もソニーに移籍してリリースしたら全世界的にナンバー1。AC/DC後進国と長らく言われてきた日本でさえもトップ10に入る快挙でした。このアルバムなんですけど、「Ballbreaker」以降に昔ながらのスタイルにまた戻ってそれが固まったところで、「Razors Edge」みたいなわかりやすい曲調で作ったアルバムという感じですね。「Rockn Roll Train」は間違いなく21世紀の彼ら最大のキラー・チューンだし、その他にも「Big John」「War Machine」といったわかりやすい曲目白押しで。プロデュースは今作からブレンダン・オブライエン。パールジャムやRATMを手掛けた時から極力生の状態に写実的に近い音作りをする人ですけど、スネアの皮の振動までリアルに捉えた生々しさとギター
の尖りはさすが。あと、だんだんしゃがれ声がいきすぎてマージ・シンプソンみたいになっていたブライアンをかなり丁寧に歌わせるようにさせた功績も大きいです。

5.Powerage (1978 US#133 UK#23)

5位は「Powerage」。ここからはボン・スコット期の作品が続きますが、もちろんこれもその一つですね。このアルバムはボン期のAC/DCのなかでは最も過小評価されたアルバムなんじゃないかな。ファンからの人気は高いんですけど、当の本人たちの評価が低いというか。ライブでここからの曲、あんまりやらないんですよね。「Rockn Roll Damnation 」「Riff Raff」「Sin City」とキラーになりそうな曲はあるし、名ライブ盤「ギター殺人事件」はこのツアーのときの録音なんですけどね。あと、ファストなロックンロールでもただの高音絶叫にならずにコントロールでき、ソウルフルに歌うことの出来るボンの真骨頂でもあると思います。彼らはヤング兄弟の兄さんのバンド、イージービーツがもともとモッズ界隈でも活躍したバンドでしたけど、スモール・フェイシズの延長上的な感じでも行けるんですよね。スティーブ・マリオット的というか。そういう観点からの評価ももっとほしいなと思っています。

4.Highway To Hell (1979.US#14 UK#8)

4位は「Highway To Hell」。これは彼らの中でも大人気作ですよね。人によっては1位の人もいると思います。これまで兄貴にプロデュースしてもらってたところをロバート・ジョン・マット・ラングに切り替え、切れ味鋭い生身のロックンロールに重厚さと輪郭を加え、国際大ブレイク直前にボンが不慮の死を遂げてしまう。しかも「地獄へのハイウェイ」という象徴的な名のアルバムで。このドラマ性がAC/DCを伝説化足らしめているところは間違いなくあると思います。曲の方も有名すぎるタイトル曲から「Shot Down In Flame」、のちにストーカーのシリアル・キラーを結果的に犯罪に駆り立てる要因とされて問題にもなった「Night Prowler」と代表曲も少なくありません。ただ、上位の三枚に比べたら、やや過大評価な側面もあるのかなとは本音のところでは思います。

3.High Voltage (Internacional) (1976 US#146)

3位は「High Voltage 」。AC/DCの国際デビュー中でもアルバムですね。これは、このアルバムのためにレコーディングされたものではなく、本国オーストラリアで前年に出た2枚のアルバム「High Voltage」「TNT」の2枚の編集盤です。で、紛らわしいんですけど、「TNT」のときに明らかにバンドとしての確変が起こってまして、そこからここに「TNT」「High Voltage」「The Jack」「Live Wire」そして映画「スクール・オブ・ロック」のクロージング曲でも有名な「It's A Long Way To The Top」と、後の代表曲がつまってます。デビュー直後の頃は、実際に「オージー・パブロック」とも呼ばれていたブルージーな緩めのロックンロールが目立ってたんですけど、「TNT」の時点でドクター・フィールグッドをさらに鋭角的にしたようなアンガスのギターの切れ味と、マルコムの幻覚的なリフのスタイルがこの時点で完成してるんですよね。AC/DC、とかく「マンネリだ」と言われますが、それはこの時点で既にスタイルが完成されていて、いじる必要がなかったからではないかと思います。

2.Let There Be Rock (1977 US#154 UK#17)

2位は「ロック魂」。1977年発表の国際的にはサード・アルバムとなるアルバムです。これはAC/DCファンにとっては極めて大事なアルバムです。なんてったって、ライブにおいて何10年もハイライト、アンコール前のラスト位置に必ず演奏する「Whole Lotta Rosie」と「Let There Be Rock」があるわけですから。これ語ってるだけで「ダタラ、ダラダラ、アンガス!」と頭の中で鳴りますからね。あと、「Hell Ain't A Bad Place To Be」「Dog Eat Dog」もライブでは定番。そう考えたら、もうロックンロールの大定番中のアルバムとしてもっと語られるべきだと思うんですけど、ファン以外の知名度が低いのが僕は前から不満です。AC/DCが「マンネリ」と言われる所以になったのがこのアルバムですね。それまでは必ずしもファストなリフでグイグイ押すロックンロールだけでもなかったんですけど、そこへの特化がはじまったのが本作です。そして、このアルバムからベースにクリフ・ウイリアムズが加入。彼は最新作「Power Up」を最後にお役御免となりました。今までありがとう!

1.Back In Black (1980 US#4 UK#1)

そして第1位は、もう今さら改めて言うことでもないかもしるないんですが、当然の「Back In Black」です。これはもう、AC/DCに限った話でなく、一般的にすごい話ですからね。発売40年で全世界での売り上げが5000万枚以上。ビルボードのアルバム・チャートへのランクイン数がまうすぐ600週。タイトル曲「Back In Black」「You Shook Me All Night Long」が10億ストリーム超。さらに、ロゴがロックTとして独り歩きもしているし、かのカート・コベインまでもが「欠点のない完璧なアルバム」と言いきったとか、とにかく伝説に事欠かないアルバムです。

ただ、これが出たときバンドは崖っぷちだったんですよね。名ヴォーカリスト、ボン・スコットを失って。一か八かで、スコットランドのブギーロック・バンド、ジョーディでグラムロック期に売れてたシンガー、ブライアン・ジョンソンを入れてみたなら、驚異的なしゃがれ声でそれがインパクトになり、新たな強いアイデンティティになって。そして、ボンの喪失ロス、そしてバンド建て直しの厳しいテンションのなか、彼らはオープニングのレクイエム「Hells Bells」でこれまでにないへヴぃさを獲得し、
「Shoot To Thrill」をはじめとしたAC/DC印のロックンロールを取り混ぜながらも、レッド・ツェッペリンに肉薄するへヴィ・リフのロックンロールの決定版の「Back In Black」、逆にこれまでになかった軽快かつ明朗な「You Shook Me All Night Long」、そしてまだロックンロールが騒音と言われていた時代の名残を残す名アンセム「Rockn Roll Ain't Noise Pollution 」まで、得意のマンネリ芸を存分に生かしながらも、同時に絶妙な緩急でこれまでにない多様性をも生み出し、それが古典化へとつながった。起死回生への必死の努力はロック史に永遠と刻まれる軌跡となったわけです。

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