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沢田太陽の2010年代ベスト・アルバム 50〜41位

どうも。

では、沢田太陽2010年代ベスト・アルバム。今日は50位から41位を見てみることにしましょう。

こんな感じになりました!

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はい。こう言う10枚になりました。

では早速、50位から行きましょう。

50.Wasting Light/Foo Fighters (2011)

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50位はフーファイターズ。この2010年代、フー・ファイターズは「ロックの盛り上げ役」ですごく頑張ってくれましたよね。デイヴ・グロールは、「ロックが以前ほど元気がない」ということに自覚的で、面白い発言したり、世代を超えてコラボしたり、とにかく常に話題を提供しようとしましたよね。その努力においてはナンバーワンと思ったので、この評価です。作品的にも、他の90sのオルタナティヴ・ロックのバンドの中では群を抜いてクオリティ・コントロールができていて、「マンネリ」と揶揄もされながら、良質な曲と、以前よりもちょっとハードめな曲でグイグイ勝負してきましたよね。この10年で一作だと、2017年の大胆なイメチェンは買った現時点での最新作も好きなんですけど、「Rope」「Walk」とキラー・チューンの並ぶこのアルバムで。

49. My Everything/Ariana Grande (2014)

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49位はアリアナ・グランデ。彼女も2010年代の顔の一人ですね。とりわけこのアルバム以降は世界中のヒットチャートの上位常連にもなってね。ビヨンセ、リアーナ、ガガ、ケイティ、テイラーって何も80年代生まれなんですが、90年代生まれで今筆頭格の人気の女性セレブだと思います。アリの場合、クオリティの高いアルバムが続き、その度に成長もしているんですけど、やっぱりインパクト的に「化けた!」と手応えのあったこのセカンドですね。彼女のヴォーカルが「マライアに憧れている」ところからグッとコントロールが効くようになったのもそうだし、そこに加えて彼女のメインソングライターになるイルヤ・サルマンザーデが今日随一の作曲家として頭角を現したのもこれだし。まだ後のアルバムほどサウンドに幅がないのも事実ですが、今聞いても「Problem」「Break Free」「Love Me Harder」といった曲のひらめきは他のアルバムでのヒット曲以上のものがありますしね。その成長を可能にする類稀なヴォーカル共々、2020sも楽しみです。

48.Astroworld/Travis Scott (2018)

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48位はトラヴィス・スコット。彼は今やトラップの代表ラッパーとしてフェスのヘッドライナーもやってしまうほどの大物になってますけど、当初、何が良いのかよくわからなかったんですよね。やっぱり、フューチャーの方がオリジネーターのイメージがあって、トラヴィスにラッパーとしての個性がどこまであるのかよくわからなかったから。ただ、2018年のこのアルバムで立場が逆転した印象がありますね。フューチャーがオリジネーターである分、ラップも、サウンドも、とにかく世界中でいろんな人からモノマネされているうち(特に、”ハナナ、ハナナ”みたいなフレーズね)に埋もれてしまいがちになっているのに比べ、トラヴィスはトラップ界に限らず、他のヒップホップはもちろん、ロック界にもコラボ相手求めて、サウンドをどんどん発展させようとする意欲があって。曲も、ヒットした「Sicko Mode」みたいに、1曲で3曲くらい別のもの足したみたいな変則的なものがあったりで、明らかに他のトラップより先に行こうとする気持ちが見えるのが頼もしいです。ヒップホップでのゲスト過多はしばし問題にもされますが、彼くらいキュレーター能力に優れているのであれば僕も文句はありません。

47.Visions Of A life/Wolf Alice (2017)

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47位はウルフ・アリス。エリー・ロズウェルをはじめとした彼ら、まだ人気がイギリス国内にとどまっていますが、もっと才能、気付かれて欲しいバンドの一つですね。とりわけ今、ギター・ロックのアンサンブルに乗る女性のロック・ヴォーカルでは今、屈指の才能だと思いますからね。マーキュリー・プライズ受賞作となったこのセカンドはその才能が遺憾なく発揮されたアルバムで、シューゲイザー、グランジ、ロックンロール、グルーヴィーなリズムに乗せての脱力ラップに加え、最後の2曲はレッド・ツェッペリン風の楽曲にもトライ(しかも1曲めはブリティッシュ・トラッド・フォークで2曲めがファンキーなハードロック)したりと器用だし。そんな多様性の中、エリーの、一見、か細く聞こえる声なんだけど、それも芯が通ってて一切のブレがないのが光ってますね。The 1975を抱え現在勢いに乗っているレーベル、ダーティ・ヒットですけど、2020sは彼女たちもワールドワイドにビッグにしてほしいと思っています。

46.High Violet/The National (2010)

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46位はザ・ナショナル。2010sの驚きの一つに、この40過ぎの遅咲きのベテラン・バンドが突如世界的な人気バンドになったことがあります。彼らを知ったのは2007年発表の「ボクサー」っていうアルバムで、あの時「”田舎のインターポール”みたいのが出てきたなあ」と、ジョイ・ディヴィジョンがアーシーなアメリカン・ロックやったみたいな、枯れたゴシック・テイストが気になったものでしたけど、その独自性を変えることなく、マット・バーニンガーの渋い低音の魅力を、よりレディキラーなナイスミドル的に響かせることによって、アダルトなオルタナティヴの代表格になっちゃいましたね。インターポールがサウンドがマンネリになって成長止まってしまったのとは対照的な10年だったかなと。悔しいんですけど(苦笑)。彼らもこの10年で4枚アルバムを出していて、どれもいいんですけど、やっぱり「Terrible Love」、そして「Bloodbuzz Ohio」と、ライブで重要な局面でプレイされる代表曲を持った本作で。

45.Meliora/Ghost (2015)

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45位はゴースト。スウェーデンの鬼才メタルバンドですね。僕が最初に彼らを見たのは2011年のロック・イン・リオをテレビで見た時、「なんだ、このガイコツ司祭みたいなのは?しかもサウンド、全然ハードじゃないじゃないか!?」という新鮮な驚きでしたけど、まさかその後、アルバムが出るたびに愛聴するバンドになるとは思っていませんでした。ラウドロックって、世界のヒットの中心から完全に乖離された状況になってる2010年代でしたけど、その中で新しい勢力としては、BMTHと彼らが頭一つ抜けてて、人があまり気がつかないうちに、世界中のアルバム・チャートで上位に来るようになってましたね。このバンド、何がいいかって、ギミックと音楽のギャップなんですよね。キャラ的には「法王パパ・エメリトゥス3世」とかワケわかんないキャラ設定してるのに、音楽は1970年代のアメリカのヘヴィ・メタルの元祖、ブルー・オイスター・カルトに範をとった、ハモンド・オルガン主体のヌメッと気持ち悪い、ディープ・パープルとUSプログレ時の初期スティクスの間くらいの、今のご時世、誰もやろうとしないサウンドを、2010年代の今に展開してて、それを新鮮に響かせててね。その独自性と、重箱の隅つくマニアックさが僕のツボにハマりましたね。何かが停滞してる時はやはりこれくらいの突飛な個性が必要だし、そういう精神性こそが次の何かをこじ開けるのではないかと僕は思っていますので。

44.2014 Forest Hills Drive/J Cole (2014)

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44位は大好きなラッパーです。Jコール。コールはインディのメディアがあまり騒がないので、ロックファンへの浸透がちょっと弱いんですけど、アメリカだと今では「ケンドリック・ラマーの最大のライバル」とみなしている人、実はかなり多いんですよ。僕もfacebookでのそういう書き込みを見て気になったのが興味持った最初でしたね。コールの場合、デビューして最初の方はそんなに個性が発揮されていたわけではないんですけど、2014年の、しかもクリスマスに近い時期に出したこのアルバムから唯一無二の路線を進み始めました。このアルバムで彼がやり始めたのは、「ゲスト参加一切ない」。つまり、ラップ、歌が全部彼だけによるものとなりました。それゆえに彼は本作で、「ノー・ゲストのヒップホップ・アルバムで20数年ぶりの全米1位」の記録を作り、以降も一貫されています。あと、リリックも、ここから「コミュニティ奉仕」の精神が強調されるようになってきて、黒人社会の問題に愛を持って真摯に向かい合う「魂のラップ」が際立つようになります。サウンドも70s前半のカーティス・メイフィールドあたりに範をとったようなオーガニックな路線が増えて、自分でもトラック作るようにもなって。ライブも自前のバンドでやるしね。サウンド的に斬新なことをやらない分、注目されにくく、過小評価もされがちなのですが、確固たるスタイルを持った人なので、やっていくうちに注目されていくはずです。

43.Ceremonials/Florence + The Machine (2011)

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43位はフローレンス&ザ・マシーン。前回の100〜51位の時にも言ったんですけど、今、海外のデケイド・ベストで、グライムス、カーリー・レイ・ジェプセン、スカイ・フェレイラみたいなタイプが多くランクインされているのですが、その一方で、フローレンスみたいな、今、どこの国のフェスでもヘッドライナーやってる女性が全く無視されている状態に僕は多少「イラッ」としています。だって、いざライブを見に行ったら、果たして誰に実力があるのか。アルバムを4枚出した時点で誰が最も平均点の高いアルバムを出しているのか。そういう「地力」みたいなところを無視して「今っぽい」とか、一つのアルバムの目立ち具合ばかりに注目するのは、それは批評としてどうなんだ、と思っています。フローレンスが勢い低評価になってしまっているのは、彼女のサウンドにアダルト・コンテンポラリーな要素を気にする人がいるからでしょう。それは僕も2009年のデビュー当時は気になりました。だけど2011年のこのアルバム以降、この人、他の誰もやってないサウンド、やってますよね。トレードマークのハープの音色生かした、神秘的な、時にその昔のジム・スタインマン(古いか)みたいな、ゴージャスなロック・オペラにシャーマニズム交えたみたいなサウンド。トレード・マークのドレイプのロングドレスも加えて、自分のやりたい路線もすごくハッキリしているし。このアルバムでの「Shake It Out」をはじめとした、神秘さと力強さを合わせたヴォーカルも聞いて誰か一発でわかるしね。彼女自身が勢いコンフォート・ゾーンで自己満足しがちなところがあるんですけど、このアルバムみたいに攻めの気持ちでアルバム作れば、まだまだ傑作は出てくるはずです。

42.U.F.O.F./Big Thief (2019)

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42位はビッグ・シーフ。今年のアルバムですね。彼らは今年、2枚のアルバムを出していますが、僕がどちらのアルバムの方が好きかはこれでお分かりだと思います(笑)。でも、年間ベストの方では両方、しかもかなり上位に入っているのでお楽しみに。ビッグ・シーフですが、今年の2枚に限らず、ここ数年、毎年何かしらのようにリリースがあるほど、今、創造的に波に乗っています。今のUSインディで間違いなく、最もパワーのあるバンドだし、それゆえ、もっと注目されなければいけない存在ですけどね。それを可能にしているのは、エイドリアン・レンカーの多作と、彼女を盛り立てる後ろの野郎3人のアレンジの才能ですけどね。このアルバムに限らず、彼ら「USインディ版レディオヘッド」みたいな表現ができるバンドなんですけど、それもトム・ヨークのようにフラジャイルなエイドリアンのリリックとヴォーカルを、他のメンバーの類稀なるパフォーマンス能力と音色センスで、ただでさえ力強い楽曲素材に輝きを与えているあのコンビネーションにすごく近いと思います。このバンド、解散さえしなければ2020sのかなり重要なバンドになるような気が僕にはしているんですけど、2029年くらいに「でも一番良かったのは2010sだよね」と振り返られ、このアルバムが大絶賛されている・・・みたいな未来が来ればいいな、などと漠然と考えたりもしています。

41.Joy As An Act Of Resistance/Idles (2018)

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そして41位はアイドルズです。2010sはとにかく「ロックに元気がない」と言われがちな時代でしたけど、その風向きを変えるような力を持ったバンド2010sの終わりにイギリスから出てきました。それがアイドルズです。彼らとシェイムと、フォンテーンズDCがセットになっている印象があって、僕、3つとも大好きなんですけど、今回はアイドルズに代表させていただきます。フォンテーンズは年間の方ではかなり上位ですけどね。アイドルズですが、本当に思いもよらぬところからフラリと現れました。出身は南部のブライトン。メンバーのルックスはお世辞にもいいとはいえず、年齢もあきらかに30過ぎ。だけど、いざ演奏させたら、その獰猛な疾走感はそれがハードコアとかポストパンクとか分類分けするのがどうでもよくなるほどの勢いがあるし、ジョー・タルボットのはなつ、ブリティッシュ・アクセント全快の、とにかくガラの悪い粗野なヴォーカルは破壊力があって、彼が呼び込むコール&リスポンスにも熱狂が溢れている。なんかクラッシュとか、日本でブルーハーツが出てきた時とか、そういうものに近い高揚感が彼らにはあります。加えて、ブレグジット、移民、福祉、LGBTと、歌うテーマがトラディショナルなパンクであり、同時に現在のイギリスで最も深刻な問題というトピック性においても不偏かつ現代的でもあるし。ビッグ・シーフでも同じことを言いましたが、2029年くらいに大物だと思われていて欲しいし、このアルバムが早すぎた伝説の名盤になっていればいいなと思っています。

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