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足るを知る。

僕は、ニットブランドを運営しています。商品の開発担当であって、ブランディングや広報担当もやってて。POP UP SHOPでは販売員として店頭に立ってるし、通販サイトの更新や発送作業もしています。つまり、工場での生産以外の一切をやっています。欲しいものを作って、それを毎シーズン楽しみしてくれている人がいる。そういう人が増えている、規模が大きくなっていく、その楽しさは、広告や雑誌編集とは、まったく違う種類の感動があります。

今年も新作をリリースしてますので、こちら是非よろしくお願いします。

なぜ、ものが売れない、この時代にあって、なんで、わざわざニットを作って売っているのか。そもそも今、新しい服なんて必要なのか。毎年、作る必要なんてあるのか。この問いかけは、とても重要で、定期的に自分なりの、もしくは、自分だけの答えを出していくことは、服飾業に携わる上で避けて通れない思考だと個人的には思ってます。

それについての、今年の答えの第1校を書いてみたいので、よかったら読んでみてください。


下記


足るを知るは富む。満足することを知っている者こそが精神的に豊かで、幸福である。そんな意味の言葉です。でも、実際のところ、こんな悟りの境地に達するのは無理なんじゃないか、って思ってます。だって、誰にとっても欲求に際限はないわけで。

「やっぱ、あれ欲しいわー」「おお、これも買っといてイイかも」「今、安いなら、一応、買おうかな」。

この感情は、小さな子どもだって持ってるし、どんな経験を積んだご年配の方にとっても、少なからず、そういう気持ちはあるはずだから。でも、その気持ちに、正直に生きることを、誰が責められるんでしょうか。だって、欲求を満たすことって、気持ちいいじゃないですか。実際、僕らは幸せになるために生きてるんだし。

ただ、それにしたって、今は、無駄なもの、不要なものが多過ぎですよね。クローゼットには服が溢れ、玄関には靴が溢れて。とか言っている、僕のデスクの上には、溜まった仕事が、書類が、メモが溢れています。自分を律することが出来ないとモノは溢れていきます。

僕らが、あまりにモノを求め過ぎるから、便利な社会は、それに十分に応えてくれています。あまりに大量に生産して。あまりに早く消費する。

僕は、スーパーマーケットに行くと、ときどき圧倒されて半ば呆れて。そして、最後には思考を閉じます。あまりに多くの食料が置かれていて「このうち、どれだけ捨てられるのかな」とか思うと悲しくなる。農家が、酪農家が、配達業者が、スーパーの従業員が、それぞれの手を経て、店頭に並んだはずなのに。このうちの何割が捨てられるんだろう。

だから、toiroは、大量に作りません。品質と価格のバランスを適正に保つためにも、余剰在庫を抱えることなく、毎シーズン完売を目指しています。この目標は、ほぼ達成しています。だって、そんなに大量に作っていませんから。

あえて流通に乗せずに、少ないスタッフの小さなブランドとして、安心価格で提供し続けることで、少しずつ、少しずつ、いろんな場所で、いろんなファッションを楽しむ人たちが(国産ニット、全然、ありじゃん)と思ってもらうために作っています。

僕の本業は、広告デザインであり、雑誌の編集者です。toiroを作っている工場に、最初に行ったのも、取材と打ち合わせのために行きました。その現場で見たものは、驚くほどに、手作りで、割に合わない細かい作業で、定食屋のおばちゃん(失礼)みたいな女性たち、うちのオフクロくらいの人たちが作ってるんだけど、でも間違いなく職人。恐ろしく正確で、丁寧。

この仕事の対価として得たお金で、おばちゃんたちの息子さんたちが、高校に進学したり、塾に行ってるんだもんなあ、て思ったら、すごくニットが身近に感じた。ここで作られるものを正しく伝えたいって気持ちが動きました。それが僕がニットブランドを始めるキッカケ。だから、このニットでは、それほど儲ける必要もないという裏事情があります。

足るを知るは富む。

これくらいの品質で。これくらいの価格帯で。これくらいの数量を生産して。これくらいの人たちの目に触れて。これくらいの幸せを感じてもらう。

僕は、その「これくらい」のちょうどいいバランスを知っているブランドを作りたいと思ってます。ほんの少しだけ、日常に彩りを添えるベーシックウェアを今年も作りました。どうぞ、新潟県五泉市の工場直販ブランド「toiro(トイロ)」をお見知りおきください。


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