アステロイド・シティの小感想

   ダージリン急行を別にすれば、めずらしく監督は何かを言おうとしている感じがした。それが何なのかはよく考えていないのでくわしくは書かないけれど、近年の作品とはまた少し違った感じがする。ウェス・アンダーソンが好きな人は観にいくのが良いと思う。
   隕石とは何かの象徴だろうか?と自己言及的なセリフがあり、そういったものがよくわからないまま、さまざまな思わせぶりも作中内の原作者が急死することでわからないままとなる。本作全体が(監督が死んでいるわけではないけれど)そのようによくわからないまま終わる。自分の人生で起きたあれは、これは、何かの象徴だったのだろうか?と観客に思わせたかったのかもしれない。
   公開前にバーベンハイマーが炎上したが、カジュアルに自分の映像に組み込みたいがためだけに核実験のシーンを組みこむほうがよほど炎上してもよさそうなのに、特にそうはなっていないことを見ると、実際核兵器を持っているわけでもなければ、持たないようにしようというための議論も含めて特になにもしていない現代の日本人は基本的に核兵器には関心がないんだろうと思った。本作の核実験のシーンは、その前後も含めてラストと呼応する形でくりかえされているので、ウェス・アンダーソンのポップでコミカルな感じがあらわれていて良かったと思う。オッペンハイマーを公開できないことが何より問題だと感じている。
 

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