〔質問〕ボタンの謎
わりと、2023年まで学内のいくつかの教室の教卓には〔質問〕ボタンがあった。
これがなくなっていくので、大学史の(こまか〜い)記録の1つとして。
1968年9月に、現在の西棟の辺りに(旧)図書館が完成した。Google のストリートビューに、まだ写真が残っている。
この(旧)図書館の最上階には、1000人収容の大教室があって、例えば、経済学部の新入生を一同に集めたガイダンスなどを行っていた。老朽化によりこの(旧)図書館を取り壊すことになった際、問題となったことの1つのは、1000人教室で行っていたガイダンスをどこで行うか、である。
受講者が1000人いる科目はないので、1000人教室を作ったとしても、ほとんど使われない。しかし、1000人を対象にガイダンスを行うことはある。これをどう解決するか。
これを解決したのが「親子教室システム」という仕組みである。
Aという教室が「親」で、Bという教室が「子」だとする。A教室でガイダンスの担当者や講演者が話をし、その様子をA教室の天井に設置されたカメラが撮影し、B教室のスクリーンに生中継する。もちろん、A教室のマイクの声がB教室のスピーカーから流れる。これですべて解決するように思えるが、問題はB教室で質問などが出た場合。そのために、「子」の教室の教卓に「質問」ボタンを取り付けたのだ。「子」教室の1つは E-101 だった。ちなみに、その「親」は E-102。
2010年に竣工した東棟、2017年に竣工した西棟(創立50周年記念館)には、この「親子教室システム」がいくつか導入されていて、実際に各種ガイダンス等で活用された。
ところが、2020年コロナ禍になり、2020年度は全面遠隔授業。2021年度になり対面授業が再開されるも一部、遠隔授業。このため、全教室にカメラを導入し、全教員が使えるようビデオ会議システムであるzoomを契約した。
「親子教室システム」は、天井にカメラが設置されている教室と、そこから映像ケーブルが接続されている教室の間でしか利用できないが、zoomの場合には教室を問わない。双方向のコミュニケーションも可能である。一言で言えば、zoomのほうが自由度が高く、システム維持費も安かった。
こうして「親子教室システム」はその役目を終えることになり、「質問」ボタンは不要となった。だが、「質問」ボタンを物理的に撤去すると教卓に不自然な穴が残ってしまうので、「質問」の文字が書かれた紙だけを取り除き、ボタン自体は残すことにした。配線など一切つながっていないので、押しても何も残らないボタンとなった。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?