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グッバイ、俺の4本の埋まった親知らず

入院生活2日目はam5:52起床。隣の爺ちゃんが夜中に”家帰りたい〜”と嘆き続けていたのでバチこり睡眠不足である。くわえて昨日の18時から飲まず食わずで気怠さと苛立ちが脳内の7割を蝕んでいる状態で非常に辛い。点滴だけが、ぽとぽとと毎秒落ちているのを見て溜息がでる。

今日も元気なナースさんが検温にきた。35.4℃。今俺の体には最高にCoolな血が流れているということだけが分かった。手術は午後からとナースさんに伝えられて、読書とYouTubeで飢えをごまかす日中となった。ベッドでゴロゴロゴロ。

虚無。虚無。虚無。虚無。虚無。空は曇天。

15時頃やっと手術の準備ができたようでナースさんに誘導されながら手術室へ。銀色の自動ドアがウィーンと開きドラマで見るような深緑色の服を着ている人がたくさんいた。室内は独特の雰囲気が立ち込めていた。隣にいてくれたナースさんは居なくなっていた。いつの間に。。。

点滴台を握っていた右手にぎゅっと力が入った。

さらに奥の扉を開けると、

うわぁ〜。テレビで観る機材や手術台がズラリ。何故かバチくそにテンションが上がった。どれくらい上がったかっていうとアヴィーチーのフェス並みに上がった。知らんけど。

深緑色の服を着た気の強そうなお姉さんに従い、手術台に仰向けに横たわった。

「緊張してる?初めてでしょ?」

「えぇ。まあ少し」

「だよねー」

一連の会話にお姉さんの感情が全くこもっておらず、リアルを感じて背中がゾッとした。なんだろう。たわいもない会話でリラックスさせようとしてくれてるのにスイッチがオンに入ってることがバンバンに伝わってきた。

「マスクしますね〜。今から麻酔かけるよ?ちょっと苦いかもしれないけど、深呼吸してねー」

内心めちゃくちゃビビってた。その棒読みな感じもこえーから。思わず俺は口を開いた。

「い、いやぁ麻酔って本当にちゃんと効くんですか?根拠はないですけど、僕には効かな…」

全身麻酔ガンギマリ。噛ませ犬なとてもだせえ事をしてしまって恥ずかしい。本当に最後の最後、体と脳が引きちぎられる間際に

“きみ〜だけのぉ〜たんめぇ〜のHERO〜♫”って聴こえてきた。緊張のあまり今まで聞こえてなかったけどぎゃんぎゃんに安室奈美恵のHERO流れてた。

んにゃあ!感動的な選曲ぅ!勇気づけられるがな!

脳内で粗品風のツッコミを入れた。そして俺は飛んだ。

もうええわ。

「起きてください〜手術終わりましたよ〜」

15分くらい深い居眠りをしてた感覚。目を開けると天井が下から上へ走ってた。足に軽く痺れが残っていた、酸素マスク、指になんかついてる、全部が鬱陶しい自由が効かない。何故か、今すぐインクレディブルハルクになって暴れまわりたかった。不治の病、厨二病の再発により手術=謎の力を手に入れたHEROになるという淡い期待があったのか、それとも安室奈美恵のHEROを聴かされた効果だったのかは、駿河湾より深い謎である。未だ解明できていない。

歯の痛みは無かったけど口内が血液でどろっとしていて気持ち悪かった。そこからはナースさんがあれやこれやしてくれたけど朦朧としててイマイチ覚えてない。ただただ優しかったことは覚えてる。ありがたい。感謝しかない。いや、2割くらいスケベがあったかも分からん。

そこからは口内の出血との戦いだった。殴り合いの喧嘩一生分の血を吐き捨てたので、勝手にろくブル全巻読破したことにした。パラリラ。

兄ちゃんマブいね!あたぼうよ。

血反吐しながらも習慣であるオードリーのANNをリアルタイムで聴きいた。

「電気消しますよー」「寝てくださーい」

リアルナースさんがニョボ林(若林の嫁)と同じ口調で笑えた。

手術後の笑いは痛かった。

では、また。Tooth!!☝️(歯)







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