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クィアとSF①ディアスポラ

ークィアとSFについてー
トランスジェンダーでSFが好きで物語も好きなITSUKIくんが「クィアでSFな作品」をかんたんに紹介するだけのコーナー。みなたち読んでほしい。そして感想が聞きたい。

科学は人間を救わない?そこの中にいるマイノリティはさらに関係ない?
いや、そうではない。というはなしをしたい。

今回の作品についてひとこと感想:
「人類はいくよどこまでも。(3次元を越えながら)」

目次
1.作品紹介
2.クィア的におすすめしたいところ
3.「すくい」の部分

[1.作品紹介]
第1回
ディアスポラ」!ハードSFとして名高い作品です。
https://www.amazon.co.jp/dp/B00RSPXLT2/ref=dp-kindle-redirect?_encoding=UTF8&btkr=1
あらすじ
>30世紀、人類のほとんどは肉体を捨て、人格や記憶をソフトウェア化して、ポリスと呼ばれるコンピュータ内の仮想現実都市で暮らしていた。ごく少数の人間だけが、ソフトウェア化を拒み、肉体人として地球上で暮らしている。“コニシ”ポリスでソフトウェアから生まれた孤児ヤチマの驚くべき冒険譚をはじめ、人類を襲う未曾有の危機や、人類がくわだてる壮大な宇宙進出計画“ディアスポラ”などを描いた、究極のハードSF

ハード?ソフトもあるの?
(自分的体感意訳:ハードSFは作品世界を現実の科学でハードコーティングしていて、ソフトSFは“ちょっとこうだったらいいね”とか、科学の仮説を積み上げていくよりフレーバーとして使っている感)
ディアスポラって意味なに~~Google先生~~

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*日本語版Wikiが信用ならんので英語で調べるひねくれもの(ITSUKI)
元の用語としてはイスラエルからユダヤ人が離散したことを指す言葉なんですね。
この小説でいうディアスポラは離散というのがキーワードです。

ソフトウェア化?仮想現実都市?どういうこっちゃ。
ソフトウェア化とはいってしまえば人間の全部の情報をコンピュータの世界に複製したものだと思ってください。
仮想現実都市とは、まあ人間がコンピュータの世界に複製されたんだから人間が住むための都市も必要だよね、というイメージで捉えてください。建物がそのままあると思っているとちょっとびっくりします。(非ユークリッド幾何学での構成うんたらとか出てくるけど、宝石の比喩表現等で表されているからまあどちらかでイメージできれば読めなくもない。)
哲学的な問いが至るところにありますが、それらは他の人も書いているので今回はさておき。

[2.クィア的におすすめしたいところ]
クィア的におすすめしたいのは、登場人物のヤチマです。
ヤチマは性別がないです。
合理的な帰結として、ベーシックな人間という知性に性別がないという結論。

他の人間は元々人間からソフトウェア化したことにより、つまり個人をコピーしたのでその人の性別があるんですね。ちなみに描写を見るに、ヤチマ以外クィアっぽい人達は出てこないし、異性愛規範があります。注意。

[3.「すくい」の部分]
私がこの話で掬(すく)われたと感じた部分です。
人間としての意識とは何か。意識が発生するまでを描き、その結果”性別のない”ヤチマが誕生しディアスポラの物語がある。
そして物語は物語の外へと・・・。
どういうこっちゃねん。
ITSUKIくんはSFの人間という存在へのある種の冷ややかな目線と、知性の可能性が掬(すく)いに感じています。
掬(すく)いとは、救済を信じる方ではなく、たまたま表現していたら自分の人生のなにかもその物語の中に入ったよ。ということです。(京極シリーズが好きな人は榎木津をイメージしてほしい。)
Q:なんで掬いに感じるのか?
A:とりあえずの生の指針としての光景がみえたから。
生きることは虚無です。
その虚無の中に法則を見いだすこと、何かを発見すること。
それらに意味がないとしても、物語ができる。
その物語に、生殖も性別も関係がない。その上で、人間とは何かを論じることができる。

人間と生殖が結びつけられがちだからこそ、この物語を掬いに感じました。


捕捉:なんでこんなに掬いを感じている1冊なのかの根拠もう1つとして、実はSFって結構ジェンダー的にアレな部分の作品も多いし、書いている人間もアレな人間も多いんです・・・
(詳しくはサッドパピーで検索検索)
https://youshofanclub.com/2015/09/06/hugo-sad-puppies/
(科学者として有名な人間に男性があげられがちで、女性が家族の領域に押し込められてきたこと等をお考えください)

追記:ちょっと若いITSUKIくんはなんとなく背伸びがしたかったのでハヤカワSF文庫の海外執筆者の作品からSFに入っていきました。

https://bookriot.com/queer-science-fiction-books/
最近だとこういう特集もあって、あ~~~(ITSUKIくんの人生の伏線が回収されていく)

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