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リーガル・プロンプトの可能性(法律事務所のためのChatGPT利活用ガイドブックを読んだ)

表題の通り、「法律事務所のためのChatGPT利活用ガイドブック」を読みました。仕組みから解き明かすリーガル・プロンプトというサブタイトルだけあって、めちゃくちゃ読み応えがありました(それにもかわらず、今更ながらのnote書き起こしです)。

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ざっくり書籍の内容

実際の弁護士の方が執筆された書籍です。個人的な興味は小難しい法令文章の理解をサポートする用途でした。事前に文章を読み込ませた上で専門家への相談前の整理および留意点洗い出しなどの可能性に関心がありました。

紹介した書籍はChatGPTの限界を推し量るために、 簡易的な法令ケースを想定しつつも、どの部分に応用可能性があるのかを検証していく内容が盛り沢山でうってつけでした。具体的にはChain-of-Thought(CoT)プロンプティング(*1)やTree of Thoughts(ToT)フレームワーク(*2)を用いて、「法的推論における法的三段論法」を前提にしてLLMの可能性を検証していきます。

このように、法的三段論法においては、通常の三段論法の場合とは異なり、ルールを機械的に適用すればそれで足りるというケースは稀であり、圧倒的多数の事件において解釈、評価、規範的判断といった多段階に亘る推論が要求される。

法律事務所のためのChatGPT利活用ガイドブック


これを経験豊富な弁護士の方が試行錯誤しつつも解説(解釈)しているので、LLMの法律活用の知見や将来的な応用について示唆が得られます。

また、この書籍発刊の2023年6月時点以降(2023年11月)に大きなアップデートがあり、なんとGPT-4が取り扱えるコンテキストウィンドウが128k Token になりました。書籍で取り上げていた「文字数の制約」の懸念がいきなり改善されることになります。さらには2024年3月にリリースのClaude3 では200kまで対応となっています。

このアップデートにより、ChatGPTは大量の文章を参照可能になります。それにより前提となる法令関連の文章や判例を読み込ませた上でChatGPTに推論させることが可能です。つまりFine-Tuningなどの追加学習を行わずとも、ChatGPTなどのLLMに一時的に外部知識を与えることが可能になる時代に突入した(かもしれない)のです。

そうした経緯から、128k超のコンテキストウィンドウを持つ大規模言語モデルの新しい活用法について、以下の記事で掘り下げていきます。ぜひ読んでいただけたら嬉しいです。

2024/3/20追記:CoTを踏まえつつ、ToTの可能性と課題についても書いてみました🚀


注釈

(*1)Chain-of-Thought (CoT) プロンプティングは、推論タスクの解決のために中間ステップを設けるようにプロンプトを工夫する手法です。「Step by Stepで考えて~」と指示するだけのお手軽なZero-Shot Cotと呼ばれるものが多く紹介されています。

(*2)Tree of Thoughts(ToT)フレームワークは、複雑な問題を構造化し、論理的に考える方法を提供するフレームワークです。このフレームワークを用いるようにプロンプトを工夫することで複雑な推論タスクの解決率が向上したという報告がされています。

参考文献


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