二つが天職

 最近のマクドナルド、店内BGMのチョイスが異常にセンスいいの何なんだ。Clairoの「Pretty Girl」とか、Dayglowの「Can I Call You Tonight?」とか(どちらもYoutubeでインディーズ洋楽のMVを見漁ると、早い段階で必ずぶち当たる金字塔的な曲である。)が当然のように流れている。

 すごく良いんだけれど、これが、それぞれの店の人が好きに選んで流しているのだとしたらと考えた時に、思い出すのは中学の頃。給食を食べているタイミングで放送部が生徒のリクエスト曲を流す時間があって、それにサカナクション好きの後輩がよりにもよって自曲のリミックスという中学生には何とも理解しがたい曲をリクエストして流し、クラス内がざわつき(同じフレーズが何度も繰り返される部分があり、それを曲として中学生が理解するのは至難の技である)、なぜかサカナクション好きの自分に説明を求められ、冷や汗だくだくで自分なりの解釈を語った、という経験である。マクドナルドでサカナクションのリミックスが流れて、中学生がこちらに説明を求めてこなくてよかった、と思いながらゆっくりとサムライマックを口にほおばる。セットのドリンクは食べ物の量に対してあまりにも量が多いように思う。

 「そんなことより "マクドナルドでの受験勉強は必ず受験を成就させる一方、マクドナルドでのデートは必ず恋を成就させない" っていうアメリカのことわざがあったね」とかこちらに言われても困るので一旦ここに置かせていただくんですけど。

 今月から社会に放り出され、今までと明らかに環境が違う場所で平日のほとんどを過ごしている。今まで何らかの表現を通してしか聞かなかった「課長」という言葉がリアルで飛び交う。まだコントだと思ってやまない。働いている人を働いている所しか見ていないと、どうしても服を買っている姿を想像できなくって、「服って買ってますか」と尋ねたくなってしまう。
 働きだして、今やってることに手がつかなくなったらどうしようと考えていた。避けるようになったりしたらどうしようと。でもそんなことは特になく、週末に向けて働いて、ライブで存分に自分の思う表現をする、というサイクルがあまりにも心地いい。平日とそれ以外の日で、全く違った脳を働かせるのである。

 なんとなく、「もう一つの顔」的な要素に憧れていた自分がいたので、自分のできる唯一の「もう一つの顔」をできているのは本当に嬉しい。それぞれが理解されなくてもどうでもよくって、これは間違いなく生きていくための策。働かないと生きていけないし、ライブに出ないと生きていけない。不可分の関係である。これはただ、一つにしぼる勇気が無いだけなのではないかと思われるかもしれない。それはそう。かなりそう。ただ、どちらも失敗させないために、仕事の行き帰りでライブのネタを考え、業務内容を整理し、コーナーの立ち回りを考え、資料を確認しているところに本気を感じてほしい。

これが天職。2つやるのが天職。2つともうまく進めてこその天職である。これは同時に、後がないとも言える。

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