くろいまなざし

 今しているアルバイトの前、塾で事務員のアルバイトをしていた。すごくすごく学ぶことが多かったけれども、仕事に対する期待があまり持てなくなったり、感情があまり大きく出ることがなくなったのもこの時期が境目であるような気がするので、考えものである。仕事を共にする人はいいものの、その環境の良さが人をむしばむことがあることを知って、当初大学の四年間だけにとどまらず、ここで骨を埋めようとまで思っていたこのアルバイトを、二年間でやめた。

 そんな所で半年間ぐらい電話対応を受け持っていた時期があった。他の人が担当していた頃のことを思い出して参考にしたり、家にあった社会人マナー本の電話対応の項を何度も読んだりしてなんとかやっていた。そんなとき、「懇談の日程を取り直してほしい」と講師からの依頼があり、電話をかけた。このあたりで講師と自分との連携ミスがあって、日程を決めたはずなのに懇談の予約が取れておらず、こちらから改めて親御さんに電話すると、出たのは今まで一度も聞いたことのない男性の声。あーまずい、これお父さんか。と思ったのもつかの間、ほぼずっと怒鳴り声で状況説明を迫られ、本当に担当に聞かないとわからないことがあったためその旨を伝えても逃がしてくれず、最終的にお母さんの方が強制終了させるような形で永遠のように感じる20分間が幕を閉じた。その後、泣きながらいわゆる上の人に電話で相談したり、泣きながら教室にいた講師の方にチョコレートをもらったりした。いままでの人生でトップレベルで情けない一日だった。

 この出来事を思い出して、これって親としてあるべき行動をとってただけだよなーと思った。向こうにとっては子どもの予定がたらい回しにされてるわけだし。とはいえ、父親という大きすぎる男にボコボコにされた、はたちになるかならないかぐらいだった当時の自分は普通にかわいそう。てか父親ないし男ってこんなにも強くならないといけないんですかね?色々な不都合も別に怒らなくていいかなーと思ってしまっている自分ってもしかしてまずい?どうしようかな。

自分自身の人間のあり方まで考えさせられる、深く苦い思い出である。

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