いませんでした

 いつも会っている人が見たら可哀想に思われるかもしれないぐらい髪を減らした。毛量こそ別にありえるほどだけれども、切る前と比べたら相当の量が減っている。髪を「切る」という言い回しはあまりにも自身を整え調子を良くさせるような雰囲気を感じ、なんとも言えないので、「減らす」という表現を使わせていただく。こちらとしては髪が長すぎて「えっ」と思われる期間をできるだけ少なくする延命処置として減らしているだけなのだけれど、バイト先の人は減った髪を見て「切ったね」とか言って、変わりたいと思っている若者を見る目で語りかけてくれるのだけれど、うーん、となる。考えが変なのはこちらの方であるのはわかりきっていても、髪を「切った」わけではないので返答に困る。というか髪型ひとつで人生変わってたまるか。髪型ひとつで人生変わった人いますか?いたら挙手お願いします。(いませんでした)

 もう学生も終わっちゃうのかという気持ちでキャンパスを歩こうと思っても、すでに授業で通うことも無くなっている状態なので特にそういった感情は湧かない。もう卒業してるようなもん、みたいな感じ。行くとしても講義が行われている時間帯が多いので、通りに人が溢れている様子をほとんど見ていない。なぜか遅刻をしているような気分になる。というか、取り残されているような気分。ふと今思ったけど、卒業してしばらく経ってから「大学を紹介してください」って言われたらどんな感じにするだろう。この四年間、ゆっくりとうまく過ごしてきたような気もするし、ゆっくりと失敗していった気もする。

 大学近くのよく行くお店で昼ごはんを買い部室へと向かっている途中、数年前に仲良くしていた人が向かいから歩いてきていることに気がついた。本当にすれ違うというまさにそのタイミングで気がついた。一瞬の判断で声をかけようと思い(回避できないぐらい細い道だった)、かなり大きめの声で呼びかけたものの、向こうの視線はこちらに移ることなく素通り。またその一瞬のうちに、相手はイヤホンを付けていて、一方こちらは普段かけていない眼鏡をかけてマスクまでしているという情報を処理し、「聴こえなかったし、気づかなかったんだ」と判断して、それから相手の肩を叩いたりすることもせず他人のふりをして歩き直した。遠くで自転車を止めて話しこんでいた高校生が、こちらを見ている気がした。

 なんか大学ってこれぐらいのもんなんですよね、多分。そうですよね?そう思う人、いたら挙手お願いします。(いませんでした)

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