へんな兵ども

 プラスチックのカップに入った杏仁豆腐と、これまたプラスチックのカップに入ったブロッコリーとタコのサラダを左手に挟んで歩く。とにかく体を疲れさせてから眠るべく、退勤のあと一時間ほど電車に揺られながら帰宅し、晩ごはんをたんと食べてから、散歩をしていた。今日は少し遅く帰ったので、がっつりではなく近くのコンビニへデザートを買うのと、母の酒のつまみのおつかいをするという形で済ませる。

 来たる二日後の旅行に備えて、何か旅行前のワクワクを味わいたいなあと考えた。別に何かするというわけでもないんだけれど、思い出したのは、この日に行ったコンビニの近くにある公園についてのことだった。その公園は母の実家へ向かう電車の線路沿いにあり、それを利用して母の実家へのお泊まりの前日、当時小学生だったわたしと兄はそこへ向かい、地面に大きく文字を書いて(何を書いたのかは忘れた)、次の日、電車の車窓からその大きな文字を見ようと企んだのだった。結局よく見えなかったのでがっかりしたのを覚えているが、これに関しては結果はどうであれ「する」ことが重要だったように思う。

 そんなことを思い出しながらその公園を通りかかると、何やら工事で全く入れないようになっていた。生まれてからずっと住んでいる町はあらゆる所が変わってきている。これに関してもっと言うと、家の近くにある川沿いの広場はもともと、立ち退く立ち退かないでモメていた(と聞いていた)家があったのに、今や見るたび違うカップルが座る場所になっている。何?へんな兵どもが夢の跡?あんなに立ち退かなかった家が立ち退いてできた広場に、カップルが無限に沸いて出てきているのは、完全にへんな兵どもが夢の跡でしかないだろ。

書いていて思った。わたしはこの町を、ほんとうに、ほんのちょっとだけ捨てて旅に出る。そういうことにする。わたしは変わるのが怖くって、だから、一泊二日だけ旅に出る。そういうことにする。(2023/7/13)


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