海賊の宝物

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海賊の宝物

高校生の頃の話。僕は九州の長崎に住んでいて、
みんなが“マチ”と呼ぶアーケードから一本横道に入ったところにある
セレクトショップに行くのが大好きだった。
とは言っても高校生にはそんなに服を買う余裕はなく、
毎週のように通ってはお店の人とおしゃべりをして、
時々試着をさせてもらっては「子供にはこの良さはわからない」なんて言われたりして。
その時間が最高に楽しかった。

そんなある日のこと。
お店の人が「大人の事情で店頭に出せなくなった商品がたくさんあるから
ストックルームで見てみる?安く買えるよ」と声をかけてくれて、
それまで上がったことのない、お店の上の階に連れて行ってもらった。
服の山に埋もれ、バッグやアクセサリーかき分けるような……
それはもう、海賊の財宝が眠る洞窟そのものだった(今思い返しても、そんな景色に思える)。
たった一枚の壁の向こうにこんな並行世界があったのか!と、忘れられない記憶になった。

そして月日が20年ほど流れた、旅先のブルックリンのヴィンテージショップでのこと。
とても状態の良い品揃えにかなりテンションの上がってしまった僕が、
これも良いなー!あれも良いなー!と夢中で楽しんでいると、
見かねたお店の人が「ストックも見ます?」と奥の部屋へ通してくれた。

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