別役実『マッチ売りの少女』・斎藤憐『赤目』・清水邦夫『真情あふるる軽薄さ』・宮本研『美しきものの伝説』

『マッチ売りの少女』(担当:黒澤世莉)

「なんとなく」で動く世界への警鐘

どんなおはなし?
別役実の作品は、現代日本戯曲大系にて「象」につづいて2作目の収録となる。故に作者略歴については「象」資料を参照されたい。

本作初出は1967年4月「新劇」にて。初演は1966年、早稲田小劇場において、鈴木忠志の演出で上演された。1968年『マッチ売りの少女』『赤い鳥の居る風景』で第13回岸田國士戯曲賞を受賞している。

あらすじというほどの筋はない。テーブルと椅子だけがある舞台上で、姉弟を名乗る男女が、夫婦を名乗る初老の男女二人の家を訪ね、自分たちはその家の子供であると主張する、ラストは姉弟あるいは女子供二人が死んだような状況で終わる不条理劇である。

不条理劇は、主人公の成長や変化を追っていくことで成立するドラマとは異なり、主人公のステータスが変わらないものである。このレポートも、ドラマを分析するのとは異なる姿勢で書かねばならない。

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