榊原政常『しんしゃく源氏物語』三島由紀夫『卒塔婆小町』
『しんしゃく源氏物語』(黒澤世莉)
半世紀を超えて愛され続ける秘密を探る
どんなおはなし?
榊原政常は、高校教師をやりながら高校演劇向けの台本を書き続けた作家である。戯曲集も出版されている。
「しんしゃく源氏物語」は、1950年都立忍ヶ丘高校演劇部にて初演された。1952年には文学座上演で上演されている。
「源氏物語」末摘花を底本とした喜劇で、落ちぶれた姫は愛を交わした光源氏が都落ちしたにも関わらず、待ち続けてはや二年、身の回りの世話をする女房たちも待遇の悪さに限界を迎えつつある。もはやダメかと思われたとき、源氏の使者が訪れた、というところで物語は終わる。
Farce sentimentale
高校演劇では、いまでも大会で上演される。SPACにて上演されてもいる。高校演劇と公共劇場で上演される戯曲も、半世紀を超えて上演され続けている戯曲はそう多いものではない。不朽の名作と言っても差し支えないのではないだろうか。では、その魅力の源はなんだろうか。
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