岡安伸治『太平洋ベルトライン』・唐十郎『ビニールの城』・松田章一『島清、世に破れたり』

『太平洋ベルトライン』(担当:川口典成)

作者

おかやすしんじ 一九四八(昭和二十三年)・一〜。劇作家・演出家。東京都生まれ。トラック運転手などの職を体験しつつ京浜協同劇団を経て、 一九七三年に世仁下乃一座を結成・主宰し、自作を演出した。九六年に解散し、桐朋学園大学短期大学部教授を経て、二〇〇八年からユニット形式で上演活動をする。初期作のビル浄化槽清掃作業を扱った『別れが辻』以来、 一貫して過酷な労働現場で働く底辺労働者と、取り巻く社会環境の矛盾を痛烈に描いた。東京理科大学を卒業した経歴を生かし、戯曲には科学知識の裏付けがある。『太平洋ベルトライン』は長距離トラック運転手、『かちかち山のプルートーン』は原子力発電所から盗まれたプルトニウムが紛れ込むごみ清掃車の清掃員、「ネーム・リング』は軍事産業化する造船所の作業員、『洞道のヒカリ虫』は大都会の地下道作業員を主人公にした。『華のまるやま七人みさき』(二〇一三)では、東電OL殺人事件と原子力村の崩壊を背景にして女の怨みを描いた。労働のリアルな動きと、生活感あるペーソスと風刺の笑い、時空間が飛躍するユニークな構成力が特徴。戯曲集に『太平洋ベルトライン』(いかだ社)、『岡安伸治戯曲集』四巻(晩成書房)がある。
山本健一「岡安伸治」『日本戯曲大辞典』

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