青江舜二郎『ゲイとルン』八木柊一郎『三人の盗賊』秋浜悟史『英雄たち』

『ゲイとルン』(担当:日比野啓)

青江舜二郎の人生を考えるたびに、私は松尾芭蕉『笈の小文』序文(1687年)を思い出す。

百骸九竅のうちにものあり、かりに名付けて風羅坊といふ。まことに薄物の風に破れやすからむことをいふにやあらむ。かれ狂句を好むこと久し。つひに生涯のはかりごととなす。
 あるときは倦みて放擲せむことを思ひ、あるときは進んで人に勝たむことを誇り、是非胸中にたたかうて、これがために身安からず。しばらく身を立てむことを願へども、これがためにさへられ、しばらく学んで愚を悟らむことを思へども、これが為に破られ、つひに無能無芸にしてただこの一筋につながる。

青江舜二郎は芭蕉が(多少の自己演出をもって)自称するのと違い、多才多芸の人だった。その著作の一部を紹介しよう。

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