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GW公開の大傑作「人間の境界」

おかげさまで「悪は存在しない」が大ヒットになりましたが、もう一本、同じく全国同時公開(キノは明日から)のGW作品が「人間の境界」です。素晴らしい傑作です。私には今年のベスト3に入るだろうと思うほどに優れた作品です。ぜひ観てほしい。
 暗い森の中に鉄条網付きフェンスで区切られたポーランドとベラルーシの国境地帯で、実際に起きた出来事をベースに、ポーランドの巨匠アグニエシュカ・ホランド監督が、難民たちが人間扱いされない地獄絵図を生んだ両政府に怒りをこめて告発し、人間の尊厳を訴え映画化しています。


 舞台となるのは、2021年秋、ベラルーシのウカシェンコ大統領が、アフガニスタンやシリアの難民をあえて自国に受け入れてEUに送り込み、EU側を混乱させる移民戦争を引き起こしていた。この作戦の背後にはロシアのプーチン大統領がいたとされています。EU側のポーランドは、国境警備を強化し非常事態を宣言、国境地帯での居住者以外の滞在や撮影などを禁止しました。
 映画では、ヨーロッパへの移住を夢見たアフガニスタンとシリアの難民が、希望をもってベラルーシの到着し、やがて森の中の国境からポーランドへ出ることができますが、国境警備隊にベラルーシに送り返されます。こうやって難民は両政府による押し付け合いが繰り返され、遺体までもが国境を行き来するのです。


 ですが、難民支援に向かうポーランドの人権団体や精神科医、良心の呵責に苦しむ警備隊員たちも登場し、決してあきらめない人々がいることも映画は語っていきます。
 そして2022年2月、ウクライナからの難民をポーランドの人達は引き受けていくのです。
 本作は、昨年のベネチア国際映画祭で審査員特別賞を受賞(ちなみに、この時の金獅子賞が「哀れなるものたち」、銀獅子賞が「悪は存在しない」なんですね)、世界から高く評価されましたが、ポーランドでは政府が激しい非難を展開しましたが、大ヒットしたそうです(読売新聞と東京新聞の記事を一部引用しています)。2時間32分、映画の力を十二分に味わってください。

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