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映画の魅力に溢れた「墓泥棒と失われた女神」公開

明日20(土)~公開になるのは、夢や幻想にギリシャ悲劇、民間伝承から考古学、でもってロマンチックという、映画のありとあらゆる映画の魅力に溢れた「墓泥棒と失われた女神」です。
 まず、電車の座席で眠っている主人公(ジョシュ・オコーナー)から始まるのが、もうそれなんですね。夢を見ているのでしょう。この彼は昔の墓をなぜか発見できる特殊な能力を持っていて、墓泥棒の仲間と掘り出した埋蔵品を売りさばいて日銭を稼いでいる。


 その墓というのは、紀元前のイタリア中部で高度な文明を築いていたエルトリア人の墓なので、考古学的にも需要な歴史が題材になっています。かといってそれを生真面目に描いているのではなく、コメディ的でもあり、見えないものを追い求める人間の可笑しさ、不思議さをも感じ、さらには忘れられない恋人の影も追うのですから最高です。


 「フランシス・ハ」で出会って「レディ・バード」や「ストーリー・オブ・マイライフ」「バービー」と最も好きな監督の一人になったグレタ・ガーウィグ監督が「今夢中になっていて、この『墓泥棒と失われた女神』に陶酔し、彼女(アリーチェ・ロルヴァケル監督)にしか作れない映画だ」とまで語っているように、アリーチェ監督はイタリアの巨匠たちの遺伝子をたくさんもらっているのではないでしょうか。戦後イタリアネオリアリズムの巨匠ロッセリーニ、その後継者のフェリーニやヴィスコンティなどの血を受け継いで、彼女にしかできない表現が生まれているように思えます。


 技術的にも35ミリ、16ミリ、スーパー16ミリのフィルムを、幻想と現実などを使い分けて使っているなど、この若き才能に惚れ惚れしてしまいます。
 映画の魅力に溢れだす「墓泥棒と失われた女神」をご堪能ください。

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