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シモーヌ・ヴェイユ ~奇跡の人

徒然に 538

見終わったお客さまから「こんな方がいたのですね・・」とパンフレットを買っていただいた。
チラシにあるこのコピー「世界を変えた、不屈の魂」この言葉が嘘ではない、
シモーヌ・ヴェイユのことをこの映画を観るまで知らなかったけれど、
心が熱くなりました。
人を信頼することの強さ、はじかれてしまう人たちを守り、環境を整えてゆくこと、
その行動力がどこから来たものなのか、
本当に驚きました。

「シモーヌ フランス最も愛された政治家」。


エディット・ピアフ、グレース・ケリー、世紀の女性を描くオリヴィエ・ダヤン監督3部作のラストを飾るのはラ・グランド・タム(偉大なる女性)、シモー・ヴェイユの奇跡の生涯。その誇り高き生き方に、胸が熱くなる感動の物語です。

1974年パリ、カトリック人口が多数を占め、更に男性議員ばかりのフランス国会で、
シモーヌ・ヴェイユはレイプにより被害や違法な中絶手術の危険性、
若いシングルマザーの現状を提示して

「喜んで中絶する女性はいません。中絶が悲劇だと確信するには、女性に聞けば十分です」

と、圧倒的反対意見をはねのけ、のちに彼女の名前を冠してヴェイユ法と呼ばれる中絶法を勝ち取った。

1979年には女性初の欧州議会議長に選出され、大半が男性である理事たちの猛反対の中、「女性の権利委員会」の設置を実現。
そして女性だけでなく、移民やエイズ患者、刑務所の囚人など弱き者たちの人権のために闘い、フランス人に最も愛された女性政治家です。

シーンの中でもエイズ患者と病室で語り合い、
囚人たちの劣悪な環境を目の当たりにして、人が更正でいる場所へと変えていこうとする、

その信念を貫く不屈の意志は、かつてアウシュヴィッツ収容所に送られ、
“死の行進”、両親と兄の死を経て、それでも生き抜いた壮絶な体験に培われたものだったー

冒頭、シモーヌ・ヴェイユは自伝のために、自分の過去を少女時代から思い出しながら、
記録し始めます。
家族との南仏ニースでの生活、夏は海辺の別荘で過ごした。
家族は同化ユダヤ人(現地に同化しユダヤ教に従わない者たち)で、父はフランス共和国を信じていた。
しかし幸せな日々は突然終わりを告げ、ナチス・ドイツに連行された苦しい記憶がよみがえる。

極右、右派の罵詈雑言を浴びるフランス国会で、断固、譲歩しなかったシモーヌには、
丸刈りにされ、腕には78651と入れ墨された、番号でしかなかった16歳の自分がいたのです。



監督は、「彼女の人生を掘り下げてゆくと、彼女のこだわりやたゆまぬ努力の根底にあるのは「伝達」であることが理解できました。
映画の冒頭と最後を飾るのは、シモーヌ・ヴェイユ自身の言葉、つまり彼女のスピーチからの抜粋です。
彼女の演説が、今もなお非常に適切だと思えるのは、彼女が常に人類を中心に据えているからです。
それこそが、彼女の強さなのです。
人類は彼女の闘いであり、政治はその闘いを日常的に行うための手段でした。
この映画もまたその目的によって導かれたものでした」と。

2017年に89歳で生涯を閉じた際には、国中がそのニュース一色となり、国葬が執り行われ、シモーヌはキュリー夫人やジャン=ジャック・ルソー、ヴィクトル・ユゴー、アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリなど偉人たちとともにパンテオンに眠っている。

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ある日若い女性に「ここ(キノ)ではどうしてほかの映画館でやっているような映画ではなくて、よく知らない映画をたくさんやってるの?」と聞かれたことがあります。
知らないことに出会うことって、わからないことに気づくことって、
なんだかとてもすごいこと、新たな扉の開く瞬間のようです。
「答えは映画の中にあるのでは?」。



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