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ピーター・グリーナウェイとマイケル・ナイマン、サッシャ・ヴィエルニ~唯一無二の映像美学

徒然に 577
80年代、日本ではじめて公開された「ZOO」に誰もが衝撃を受け、
その衝撃はトラウマ級、
唯一無二の映像美学、そこにマイケル・ナイマンが手掛ける音楽が加わり、
別世界のような美しい狂気に彩られてゆく。
ピーター・グリーナウェイ、という名前が脳を直撃する。

日本公開から30年余りになりますが
色褪せることがなく、あの時の衝撃はより加速されたように感じるほど、
グリ―ナウェイの世界は完璧だった。

「ZOO」(1985)のヒットから「英国紙庭園殺人事件」(1982)が公開された。
屋敷の庭を描いた画家の12枚の絵の中に浮かび上がる、完全犯罪の謎。
主人を殺したのは誰? グリーナウェイの名を有名にした初期の傑作ミステリーです。

只今上映中の「哀れなるものたち」のヨルゴス・ランティモス監督は
前作の「女王陛下のお気に入り」の衣装は「英国式殺人事件」を参考にしたと語り、

「ミッド・サマー」「ヘレディタリー 継承」、現代の鬼才アリ・アスター監督は
「グリーナウェイに映画人生を狂わされた」と影響の大きさを語ります。



グリーナウェイのほとんどの作品の音楽を手がけたのはマイケル・ナイマン。
なくてはならない人です。
グリーナウェイとは若き日、彼が仲間と借りていた部屋でゴダールやアラン・レネ、
黒澤明などの
映画を一晩中上映する会で知り合い、ナイマンにとって「ZOO」が初めての映画音楽
となったのだそう。
その後ジェーン・カンピオンの「ピアノ・レッスン」では世界中で大ヒット、今や巨匠。

そしてアリ・アスターもいっていますが
グリ―ナウェイ作品にとって重要な存在、撮影監督のサッシャ・ヴィエルニ。
アラン・レネの「夜と霧」「去年マリエンバードで」、ルイス・ブニュエル「昼顔」
など、名作の数々を撮られた方です。
「去年マリエンバードで」の撮影手法に魅了された彼は
「ZOO」の撮影を依頼。
それがきっかけで2001年に亡くなるまでグリーナウェイ作品を手がけています。

作品特有のフレームの中にフレームが存在する、
回廊のように奥行きを強調した映像空間、
画面に並行して横長にカメラが移動してゆく動きは、
ヴィエルニだからこそなせる業として、世界中の映画ファンを魅了しています。

ちなみにヴィエルニの最後の仕事となったのはグリーナウェイ作品ではありませんが
ジョニー・デップとクリスティーナ・リッチ主演、監督はサリー・ポッター
「耳に残るは君の歌声」でした。
大好きな作品です。

映画の世界がつながっていきますね。

こんなに世界を虜にしたグリーナウェイの世界を覗いてみたくなりますね。
はじめての体験という方も、80年代青春期に洗礼を受けた方も、
スクリーンで観られるまたとない機会です。
一晩中とはいきませんがどうぞお楽しみください。

●美に憑かれた鬼才による毒に満ちた
ピーター・グリーナウェイ レトロスペクティブ

4月12日までの上映です。

初日に友人が見て「すごく映像が美しい」と言っていたので見に来ましたと若い女性、
衝撃の「ZOO」(85)はどうだったかな?

3人の女による殺人を描きカンヌ国際映画祭芸術貢献賞受賞「数に溺れて」(88)

シェイクスピア最後の戯曲を原案に、魔法書を手にした男の豪華絢爛な復讐劇を描く
「プロスペローの本」(91)(※衣装はワダエミ)



~4月5日(金) 「ZOO」16:15~
6日(土)      「プロスペローの本」16:05~
7日(日)~9日(火) 「数に溺れて」   16:05~
10(水)~12日(金)「プロスペローの本」16:05~

※「英国式庭園殺人事件」は4月2日(火)で終了しました。


キノロビーより



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