月ミるなレポート③

夏の初めにプールで泳いでいると、空から月ミるなが降ってきた。月ミるなは落下の勢いのままプールに着水したけど、勢い余ってプールの底に穴をあけた。空っぽになったプールに月ミるなだけが残った。

月ミるなシーズン2が始まる。

世界大戦の頃、月ミるなのクローンを作る計画が旧ソ連の研究所で進められていた。皮膚細胞からDNAを採取して、何千何万の月ミるなを作る。しかし、実験中の事故で月ミるなの亜種が逃げ出して、計画に携わっていた研究者諸共、行方不明となった。

書いたり、歌ったり、なんか表現することにどうしようもない虚しさを感じたり、何をしてもつまらないような時は、月ミるなのペガサス幻想を思い出すのがいい。内なる小宇宙が輝き出す。

月ミるなは裏立体曼荼羅である。大日如来を中心とし、菩薩と明王で説明された世界を再構築する。キャラクターと役割で構成された世界をやり直す。

月ミるなを食べるなら、じっくりコトコト。

月ミるなは月明かりの下で子供たちに物語を聞かせる。子供たちは月ミるなが大好きだし月ミるなも大事な子供たちが風邪をひかないように薪を焚べて暖を作る。

命題:僕は月ミるなに恋をした

夜中に目が醒めると、ケージで眠ったはずの月ミるなの姿がなかった。月明かりに照らされた部屋を目を凝らして見ると、机の引き出しが半分開いていた。

ガタガタと机が動いて中から月ミるなが顔を出した。引き出しから飛び出した月ミるなを窓からそそぐ月の光が照らした。月ミるなの手元で懐中時計が光った。

月ミるなは穴を掘る。わき目もふらずに掘る。

人は生涯のある時期に必ず月ミるなを通る。しかし一度、月ミるなを通り過ぎてしまったら再び月ミるなに帰ることができない。帰れないからこそ、重要な内容を持って存在しうる。

月ミるな 月ミたいよ 月ミるな 月ミるか 月ミない 月ミるな 月ミそう 月ミないよ 月ミるな 月ミるの 月ミてるよ 月ミるな 月ミないか 月ミるよ 月ミるな 月ミてよ 月ミよう 月ミるな 月ミせて 月ミえる 月ミるな 月ミたよ 月ミえた 月ミるな

受付の中年女性が穴場だと言っていた席に座っていると、若い男性が隣に座って話をした。世界について説明していたが、僕の知っている世界とは違っていたのであまりよく分からなかった。ひと通り話し終わると、部屋を移動しないかと言われた。僕は待ってる人がいるからと断った。その後も何人かの人と同じやりとりをした。僕は月ミるなを待ち続けた。

僕は月ミるなの銃をくわえて、引き金を引いた。

月ミるなは路傍の石やただずむ木、虫に人格を与える。ある人間はその人格と自らの意識に切実な観念づけをして、以降そのものはすべて人格化されて考えるようになる。

このことは、先祖の霊などと結び付けられて、口伝されることが多く、何故か蜘蛛に親近感を覚える家系やカラスを憎む家系などが生まれる。

月ミるなvs月ミるな…自分の力を信じるんだ。自分の小宇宙を。お前の心の希望の光で、俺の小宇宙の力に耐えてみせよ!レディ…ゴー!天昇脚!天昇脚!斬影拳!ペガサスローリングクラーッシュ!ヨガファイア!ヨガファイア!ヨガフレイム!飛燕疾風脚!受けろ!絶対零度の真髄を!オーロラエクスキューション!竜巻旋風脚!竜巻旋風脚!パワーダンク!オラオラオラオラオラ!くらえ!シャドウ!バイキング!タイガークロー!覇王翔吼拳!龍撃拳!くらい…やがれ!アテナと共に冥土に逝くがいい!半月斬!ダブル!烈風拳!俺の小宇宙よ!奇跡を起こせ!ペガサス流星拳!K.O.命にはリミットがあるんだ!だったら俺はこの命、自分の選んだ場所で使い切る!!

月ミるなはゆっくりとバスタブに身を沈めた。

月ミるなが尋問されている。手錠は月ミるなの自由を制限していたが、月ミるなは少しも不安や恐怖を感じていなかった。

頭痛腰痛に月ミるなが効く。

あなたが短い人生で、本当は誰を愛していたか。月ミるなは知っている。きっと銀の針のような雨がこの街に夏を連れてくるように、いつか胸をさす痛みも月ミるなが優しい想い出に変えてくれる。

ここだけの話。よく船首に像が付いてる船があるでしょう。あれって月ミるななんだぜ。

月ミるなのクローンに記憶はなかった。それでも胸に耳をあてたとき、その鼓動には心地よい懐かしさを感じた。

たとえ月ミるなのことが好きな人同士であったとしても、その信仰の度合いや解釈の違いで対立してしまうことはある。他人との共鳴の気持ちよさを知っているが故に、完全な共鳴を求め、自分が創り上げた月ミるなとの世界が破壊されるのを怖れる。

月ミるなはほんの少しの共通点を喜ぶ。

背中越しに感じた月ミるなの温もりに反応して、心臓がバカみたいに大きく鳴り出した。月ミるなに伝わってしまう気がして顔まで熱くなる。遠くで月ミるなの声が聞こえた。

まだ助かる、まだ助かる、まだ助かる