会計士の視点で見た"Dappi"運営企業②
前回の記事で、Twitterアカウント"Dappi"を組織的に運営しデマを流し野党を攻撃し続けてきたされる都内の企業(以下A社とします)が非常に厚い利益を積み重ねてきた可能性が高いことを解説しました
前回も掲載した記事ですが、改めてご覧ください(画像は筆者により加工)。
中央がA社の、左がA社によって吸収合併された会社(以下B社とします)の「貸借対照表(B/S)」です。
(貸借対照表の見方については前回の記事で解説していますので、ご参考下さい)
今回はB社に注目してみましょう。
「純資産(株主資本)」の△はマイナスを表します。
資産12,755千円に対し負債55,076千円、純資産がマイナス42,321千円(貸借対照表
では、資産の合計=負債の合計+純資産の合計が必ず成立します)、さらに純資産の詳細を見ると公告における決算時(令和元年7月)に至るまでに4千5百万円を超える損失を出し続けていたことになります。
いわゆる「債務超過」です。
積もり積もった赤字が元本(=資本金3百万円)を上回ってしまい、借金で会社の資金をまかなっている状態でもあります。
では話を戻しますと、A社は一体何のためにわざわざB社を合併したのでしょう?
起業したてで軌道に乗ってはいないが将来成長する見込みがあるのであれば、現状で赤字でもお金を出してでも買う意義はあるはずです
実際はどうなのでしょうか?
B社はA社と同じく、合併時点で18期。
もちろん設立当初から当時の主力事業を行っていたのではなく合併の数年前から始めていた可能性もありますが、将来の成長が見込まれるスタートアップ企業と言えるのかどうかは微妙に見えます。
では仮に事業の買収が目的でないとしたら、何のためにB社を買収(合併)したのでしょう?
直接または間接の支配関係のある会社同士の吸収合併であれば、事業の継続などの一定の要件のもとで「繰越欠損金」を引き継ぐことが出来るのです。
税務上の繰越欠損金とは簡単にいえば、9期前~前期までの赤字の合計が例えば1千万円で当期の課税所得(利益)が3千万円あるときは、差し引き2千万円の所得があったとみなして税金を計算するというものです。
9期という制約があるため、貸借対照表の利益剰余金のマイナスと税務上の繰越欠損金は必ずしも一致はしませんが、利益が出過ぎて税負担に困っている会社であれば、このような赤字の会社を活用することで税金を減らすことが可能ということになります
しかしそれを無条件に認めてしまっては、税金を減らすためだけに赤字会社をどこからか見つけてきて吸収合併するといったような手法が横行しかねません。
それゆえ、吸収合併する会社とは一定の資本関係(5年間継続してなど)がある、事業の継続がある等の一定の制約が課されています。
ちなみに、5年間という形式要件を満たさなかったがゆえに、元代表取締役を被合併会社の役員にするなどして事業活動の承継の要件を満たそうとしたが、結局国に認められず繰越欠損金の活用も否認されてしまった事例があります。
ヤフーの事例です。
ヤフーの場合、繰越欠損金を用いるための形式要件を揃えようとしたものの、その一連の行為に経済合理性があると認められなかったことも敗因の一つでしょう。
話を戻して、A社・B社との関係はどうなのでしょうか。
おそらく、株式を5年間保有するといった等の形式的要件は満たしていると思われます。
しかし、一連の行為に経済的合理性が認められないことを理由に否認される可能性だって否定はできません。
もちろん手続の中身までは外部者は知る由もありませんが、税額への影響が大きい分、課税当局も無視はできないはずです。
もしA社と課税当局が争うことになった場合、例えば5年間の株式保有や合併の目的も厳しく問われることでしょう。
形式要件を満たしていても、その行為に経済的合理性が認められなければ、やっぱり租税回避ありきとみなされ却って重い税負担を背負ってしまうことだってありえます。
この辺りは想像によらざるを得ないのも事実ですが、節税対策を考えざるを得ないぐらいA社は儲かっていたということなのでしょうか。
A社とB社との資本関係にもよりますが、多少危ない橋を渡ってでも税金を減らしたいというインセンティブがあった可能性は高いといえるでしょう。
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