8月はトニックシャンプーの季節
はじめてショートカットにしたのは、確か小学2年生のことだった。どうして切ることにしたのか、そのきっかけは忘れてしまった。でも、休み時間はおにごっこに励み、放課後は公園で走り回るような(今とは全くちがう)活発な子どもだったから、生活していて邪魔になったんじゃないだろうか。
柔らかくて長かった天然パーマの毛は、毛先だけがくるんと丸まっていて幼子だった私の髪は我ながら可愛らしいものに思える。
背中まで十分に伸びていた毛をバッサリ切ると、今までは髪の重さで抑えられていたクセが出まくり、ショートにしてから3日もしないうちにモッサモサになるようになってしまった。
朝に髪を整えるのが面倒くさくて、水でちょちょいと濡らして適当に手櫛をしてそのまま黄色の校帽を被っていた。今思えば実に不衛生である。ノー手入れの髪はどんどんゴワゴワになっていった。
そんな生活をしばらく続けていた小学校3年生の夏。私はあいつに出会ったのだ。近くのスーパーで安売りしていて、父が買ってきたリンスインのトニックシャンプー。青いボトルに白い文字で「COOL」と書いてあったそいつは、今まで使っていた女性用のシャンプーと全然違った。
ボトルを押すと白ではなく、透明の液体が出てきて、いつものシャンプーよりちょっと冷たい感じがする。頭に付けるともっと冷たかった。嗅いだことのない爽やかな匂いが自分から出ている。小学生の私は、トニックシャンプーを大層気に入って、家族には秘密でこっそり2プッシュ使っていた。
いつもならシャンプーを流した後にリンスをしないといけないのに、これは1回流すだけでいい。こんなに便利で素敵なものをどうして今まで買わなかったのだと、不満さえ感じていたほどだった。
さて、女性陣ならよくご存じかと思うが、リンスインシャンプーの髪のコーティング力は決して良いとは言えない。しかも男性用の安売り商品。「髪を豊かに」なんてことはこれっぽちも考えていないため、ただでさえバサバサの私の髪はもっとひどくなった。
ある日、お母さんにリンスをしてないことを指摘され、我が家のトニックシャンプーブームは秋の訪れと共に幕を閉じたのである。
ついこの間までそんな小学生の思い出もすっかり忘れていたのだが、実は最近、我が家に再びトニックシャンプーが舞い降りたのだ。今度は陸上部の弟のために。
久しぶりに使ってみると「夏はこれでしょ!」と頭皮が主張してきて、なんだか懐かしい気持ちになった。あ~、そうだった。これこれ。目に入ると痛いからギュッとつぶってたっけ。暑い日はシャンプーのあと、冷たい水で頭を流すともっと気持ちよい。
昔の反省を活かして、今ではリンスもきっちり。ドライヤーの前にはヘアオイルまでしちゃってるんだから、大したものだ。