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Sweet Berry Story セルフライナーノーツ 前編 -アルバム全体編-


こんにちは。野口純史です。
2/14(日)に、ソロとしては初めてとなるアルバム
「Sweet Berry Story」が発売になります。
表題曲である「Sweet Berry」を発表してから、もう2年半。
ようやくこのアルバムを届けることができました。
当初の想定より、かなり時間のかかったアルバム制作。
発売できて本当に嬉しい。

そしてそれに合わせて、
今回所謂セルフライナーノーツというものを書きました。
前編はできるまでの経緯など、アルバム全体ついての話、
そして後編はそれぞれの曲について深く掘り下げる全曲解説になります。

アルバムをただ聴いてもらえるだけでももちろん嬉しい。
けれど作り手の想いや背景を知ってもらうことで、
また見える景色が変わると思うのです。

長文になりますが、ぜひ最後までお付き合いください。

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(1)このアルバムができるまで

このアルバムは、2018年6月〜2019年9月までの、自分の恋愛を描いた曲を実際の時系列に沿ってまとめたものです。元恋人と出会って、付き合い、別れて、その後恋人のいない日々を生きていくまでを描きました。そのコンセプトなので、2020年に発表した、「旅立ちの歌」や「サウンド・オブ・ミュージック」は未収録となっています(次のアルバムには入れたいと考えていますが)。

元恋人と付き合っている時から、恋愛に関する曲をまとめてアルバムにしたいな、とは思っていたのですが、当初頭にあったのは少し違う形でした。その時書きためていたラブソングを主軸に置いた、幸せなグッドミュージックが並ぶアルバムにする予定だったのです。

しかし昨年3月に恋人と別れたことで、当初の構想では作れないなと思い構想を練り直しました。考えた結果、当初書きためていた幸せな曲は前半に置き、そのあと恋人との関係がどのように変わっていったか、その推移を描くことで、付き合って分かれるまでの自分の心の移り変わりをそのままさらけ出そう、痛い部分も含めて自分の人生をそのままアルバムにしよう決めたのです。「Sweet Berry Story」というタイトルに決めたのもこの頃です。

最後の曲、「バイバイ、サンシャイン。」が完成したときに、このアルバムの大まかな全体像や構成はできていたのですが、そこから今作に収録されている、それぞれの曲を完成させるまでが大変でした。仕事で病んでいた時期の中で、かさぶたを剥がすように、付き合っていた頃に書いた曲や、別れた頃の心境を描いた曲を完成させていくのは、やはり時間のかかる作業でした。

当初、2019年末のリリースを考えていたのですが、全曲完成させるには至りませんでした。その時点で、残すところあと2曲までこぎつけていたのですが、その時期、自分が精神面でダウンしてしまったため、一度制作をストップしています。この頃は曲自体ほとんど作れなくなっていました。

その後、仕事での環境が変化したことや、山田玲司のヤングサンデーの主題歌制作がエンジンになり、残り2曲のうち1曲を完成させることができました。そして今年の夏から初秋にかけて、自分の苦しみを精算させるために「旅立ちの歌」、「サウンド・オブ・ミュージック」を書き、ようやく過去と少し距離を取ることができました。そこから最後の1曲の制作を開始し、アルバム全曲が完成した次第です。

制作に時間がかかったこともあり、このアルバムで描いた季節からは、今は少し遠いところに来ています。ですが当時から少し距離を開けたことで、自分の人生の生々しいドキュメンタリーを、とある男女が出会って別れるまでの普遍的なラブストーリーに落とし込めたのではないかと考えています。

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(2)アルバムの構成について

このアルバムは、大きく分けて三幕構成になっています。

「Sweet Berry」から「きかせて。」までが第1幕、幕間の「行方不明」を挟んで、「イケメンになりたい」から「ミッドナイト」が第2幕。そして幕間の「それは悪い夢のように」を挟んで、「loveless」から「バイバイ、サンシャイン。」が第3幕です。

第1幕では恋愛が始まりうまくいってる時期、第2幕ではお互いの価値観の違いに気付き「思っていたのと違うなぁ…」と段々お互いに思い始める時期。そして「それは悪い夢のように」を挟んで、第3幕では恋人と別れて感じたこと、その後の日々のことをそれぞれ描きました。

自分はもともと、アルバム1枚を通して一つの大きなテーマを描いているものが好きです。いわゆるコンセプトアルバムというもの。例えば、My Chemical Romanceの「The Black Parade」だったり、the HIATUSの「ANOMALY」だったり。アルバムを聴き終えたとき、1本の映画を見た後のような余韻が残るものが好きです。今回そういうものを作りたいという気持ちがありました。

とはいえ、自分自身の恋愛体験を語る以上、恥ずかしかったり、痛々しい部分も多分にあります。けれど、人に語るのをためらうような恥ずかしいエピソードの奥には、誰しもが心のどこかに抱いている普遍的な何かがあると、自分はどこかで信じていて。フィクションではなく、自分の人生を切り売りして、曲にし、アルバムにまとめるのは、そうしなければ、誰の目にも留まることのない自分の人生が、どこかで誰かの人生とつながる瞬間を求めているからかもしれません。このアルバムのそういったものになっていたら嬉しいです。

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(3)アートワークについて

今回ハイテクメロンさんにジャケットと、いくつかの歌詞カードのデザインをお願いしています。元々山田玲司のヤングサンデーをきっかけに知った、ハイテクメロンさんの絵のファンであったことと、一昨年のヤンサン美術展で描いていただいた似顔絵を、プロフィール写真に使わせていただいたご縁から、今年9月に「サウンド・オブ・ミュージック」を発表するときにジャケットをお願いしました。そのときハイテクさんの絵によって、自分の思い描く以上にたくさんの方に曲を広げてもらえたこともあり、今回再度お願いすることにしました。

今回アートワークを作る上で、最後まで悩んでいたのが、リアルとファンタジーのバランスです。アルバムの内容が実体験を基にしている分、どうしてもリアル過ぎたりキツくなってしまう部分を、アートワークによって普遍性のあるものにできないか、という考えがありました。その上で、歌詞カードのデザインで、自分が撮った写真をどこまで使うのか、どの曲のイラストをハイテクさんにお願いするのかは、悩んで決めた覚えがあります。結果、アルバム前半の自分が浮かれていた時期の曲には当時撮った写真を使い、後半に行くにつれてハイテクさんが描いてくださった絵が増えていくようなバランスにしました。

また他にも、「行方不明」の女の子のイラストを井上チカさんに、「それは悪い夢のように」のイラストを山中康成くんに描いていただきました。お二人ともハイテクさんと同じように、山田玲司のヤングサンデーがきっかけで知り合いました。

今回描いていただいたチカさんの絵は、以前チカさんがTwitterに上げていたものです。見た時から好きで、今回この「行方不明」という曲の主人公にぴったりなんじゃないか、と思ったので使わせていただきました。もう一人の山中くんは普段からよく遊んでいて、一昨年bar蜜柑で行ったライブイベントの宣伝のためのイラストを描いてもらったこともあります。今回、「それは悪い夢のように」の絵は、他の曲のイラストとはガラッと絵柄を変えたいと思っていたので、お願いしました。お二人にも改めて感謝です。

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(4)レコーディングについて

レコーディングは、全て自分の部屋で行いました。ボーカル以外の楽器もすべて自分で演奏したり、打ち込んだりしています。
自分は生楽器が好きなので、中心となるギター、ベース、ドラム以外の楽器も、オルガンやストリングスなどを使うことが多かった。逆にSEやシンセサイザー、打ち込みのビートを使う場所は限定的にして、より効果を際立たせるようにしました。

アレンジや曲調がポップになったのは、このアルバムだからなのかなと思います。ある種の寓話感・ファンタジー感というか。そういうものにしたかった。このアルバムは今日もどこかの街角で起こりうる、小さな小さな恋物語なのです。

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いよいよ後編はアルバム全曲解説。
こちらはアルバム発表後の2/21(日)に公開予定です。
お楽しみに!

2021.01.24 野口純史



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