ピンチをアドリブで乗り越える技 20/100(アニマル)

自問自答を繰り返しながら、
アドリブと演技の関係を
追求していってみようと思い立ちました。
100回(?!)連載にて、お送りします。


今を読む解像度 その3

前回、傾聴する解像度を上げるためのポイントとしてご紹介した
クロスボディーは、実は本来、役者が役作りをする上で使うツールです。

しかし今回、ピンチを抜け出すための技としては、人間観察のためのポイントとしてご紹介しました。

今回も同様に、本来は役者が役作りに使うためのツールなのですが、

これは、相手を傾聴するときにも使えるのではないか?

と思うのでご紹介します。

アニメの『アグレッシブ烈子』や『BEASTARS ビースターズ』、『オッドタクシー』をご存知でしょうか?

ご覧の通り、これは私たち人間社会を
様々な種類の動物に置き換えてストーリーが展開していくものです。

これらのアニメをご覧になったことのある方ならば、

「あー確かに私の上司ゴリラっぽい」

や、

「うん、そーいえば彼は猿だ」

もしくは、

「私ってもしかしたらひつじ的かも?」

と感じた事はあるのではないでしょうか。

イギリスの演劇学校では、一年生の時に
ロンドン動物園の年パスを与えられます。

これを使って3ヶ月の間、週いちで動物園へ行かなくてはいけません。
通常の授業もあるので、週末を返上することになります。

動物園では、まずはあらゆる動物を観察することから始め、そして気に入った動物を見つけて先生に報告します。
すると、ほとんどの場合において、

「その動物じゃない違う動物にしなさい」

と言われます。
さて何のことでしょうか?

3カ月ほど動物園に通いつめ、毎回数時間、じっと、
ひとつの動物の前で徹底的に観察します。

そして、その発表として45分間、その動物の真似をしなくてはいけません!

私の場合は、カワウソを選びました。
最初に気に入った動物が何であったのか、今となっては思い出せないのですが、先生から小動物系を選ぶようにと言われ、カワウソにした覚えがあります。

さぁ、なぜ先生は私に小動物系を選べと言ったでしょうか?

以前お話しした通り、私は能狂言で培ってきた体感や動作が既に染み付いていたので、足腰の筋肉、また背骨がフィットまっすぐになっていて硬い傾向にありました。
あえて、その間逆の体遣いを取得せよと言う意味で、小動物と言われたんだと思います。

45分間の発表では、自分で小麦粉をこねて作ったはまぐりのような街を用意しておき、発表中に、それを上げて勝ち割って食べたり、急に四つ脚で走り回ったりと、かなり体力を消耗するアクロバティックな動作を続けることとなりました。

同級生には、ライオンや、ゴリラ、ミーアキャット、虎、グリズリー、ベアなどがいましたか、特に印象に残っているのは、王蛇を選ぶんだ同級生です。

彼は、私が貝を作ったように、食パンを用意し、それを咀嚼することなく、丸ごと飲み込むと言う以上を成し遂げました。

様々な動物があふれる教室になりましたが、そこには鳥類だけはいません。
何故かと言うと、鳥類はあまりにも分かりやすく活用できる動物だからです。

この発表が終わてからが本番です。

ここから、役者としてのツール習得というかたちに活用していきます。

発表で行った45分間の動物の状態を「10」とし、標本的な無味の人類を「1」としたとき、日常生活での私たちは大体「3から6」ぐらいの動物性を持っています。

例えば、鳥類は胸を張る特性があります。
そして、首を長くし、自分の美しさを人に見せるような行動をしています。首の動きは、もしかしたら直線的で断続的かもしれません。

どうですか?
心当たりありませんか?

さて、ピンチに陥っている時、あなたの相手は、どういった動物の属性を持っていますか?

どの動物っぽいなと、気がついたところで、特にピンチの解決にはつながりませんが、
前回も述べた通り、自分事から意識をそらすという意味では、このアニマル・スタディーの観点も役に立つかと思います。

それこそ、相手の全裸の状態を想像する(18/100参照)ことによって、状況に滑稽さをもたらし、気持ちを軽くする役割もあるかもしれませんね。

ああ、今思えば、このアニマル・スタディーって、もう一つ重要な点を教えていますね!

観客の目が、なぜかそっちに行ってしまうような存在。
魅力とは何か?という重要な問いです。

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