「景の海のアペイリア」感想

量子力学、生命倫理、タイムリープ、多世界解釈、技術特異点などレベルの高いテーマを多く取り扱っているだけあってシナリオはかなり難解です。
自分もプレイ中はバックログで何度も読み返し、メモを取りながら進めていました。

簡単なあらすじ
主人公、桐島零一は偶然にも自我を持つAI、「アペイリア」の開発に成功する。
全世界717億台のパソコンを使役する彼女の「アペイリアネットワーク」によって完全没入型VRMMO「セカンド」を構築し、これによりデジタルの存在である彼女は実質的な生身の身体を手に入れることに成功する。
最初こそ自分達の作り上げた第二の現実でただ遊ぶだけであったが、次第に何者かによってアペイリアが狙われていること、そしてこの世界の核心に迫ろうとするとタイムリープによって時間と記憶が飛ばされてしまうことに気づいていく.....

と、SAOとシュタゲを足し合わせたみたいな感じですね、前者については見たことないですけど

前述しましたがこのゲーム、とにかくシナリオが凄いです。
膨大な伏線と緻密に練られた世界観、それでいて無駄な設定や矛盾点はほとんど見られません。
というのも主人公含め登場人物の論理や行動には基本的にそれ以前の情報による裏付けがなされています。
また、私達プレイヤーが思いつくであろうある程度のことは大体先回りされ、論理の穴を突かれてしまいます。
行動のひとつひとつが合理的で所謂「納得感」が半端じゃないです。
常に最善手を打ち続けて戦っているようなものです。

また、量子やタイムリープの説明については、視覚情報として図やスライドが用意してあるので、ある程度は理解しやすいと思います。

多くのタイムリープものが「目標の未来になるまで改変を続ける」のに対し、本作はタイムリープの原因そのものの追及に主軸を置いています。
そのため、プレイヤーは犯人探しという主人公達と同じ目的でこのゲームを進めていくことになるので彼らの行動や思考に共感を得やすい作りになっています。
また、タイムリープを重ねるごとに発生する既出の体験や情報を最低限に削ぎ落としているため、この手のゲームでありがちな「マンネリ化」状態を感じにくく、かなりストレスフリーで読み進めることができます。

ここまでの説明だと、めちゃくちゃシリアスなゲームだと勘違いされそうなので誤解のないように書いておくとこのゲーム、最初から最後まで下ネタ全開です。
戦闘スタイルは精液を使って戦うものであり、しょうもなさはディルドを使って戦うぬきたしと大差ないです。

攻略ヒロインは4人ですが、一般的なマルチエンディング形式のエロゲと違い、ゲームクリアまでに全てのルートを経由する必要があります。
[三羽→ましろ→久遠](順不同)→アペイリア

ルートの感想です。ネタバレは極力控えます。

共通
世界観や設定を少しずつ明かしていくと同時にシンカー(敵組織のボス)やタイムリープについてなど、物語の主軸となる謎を明確化していくといった感じです。
プレイヤーの引き込み方が本当に上手いですね。

三羽√
主人公の義理の妹。

サブヒロイン3人のなかではぶっちぎりでインパクトが強かったです。
基本的にどのルートも
①元の世界で恋人になる(1年前の時間軸)
②セカンドにログイン
③タイムリープが発生する
という一連の流れで進みます(アペイリア√はもう少し複雑)

母親との歪な関係や義兄である主人公との向き合い方を通して自身の存在意義や家族の在り方について考えていくといった感じです。
このルートではセカンドよりもどちらかと言うと現実世界の方に焦点を当てており、謎に近づくというよりはむしろ新たな謎を与えられたような感覚です。

ましろ√
主人公達属するAI研究部の古参メンバー。

自分に自信がなく臆病な自分を自己嫌悪していた前半部分(現実世界)とアペイリア救出の為セカンドの中枢に到達したものの力尽きる寸前まで追い詰められた零一を助けに行く後半部分の対比が良くできていると感じました。
他のルートと比べてもセカンドの攻略、特にタイムリープの謎解明について大きく前進した印象です。

久遠√
幼なじみのお姉ちゃん。

折角幼なじみという強ポジを持っているなら過去回想を入れるなどもう少しそれを活かしても良かったのでは?という感じはありました。
後半パートは文句なしの100点満点です。
共通から溜めに溜めた布石を一気に解き放ってきましたね。
シンカーの正体、というかこのゲームの核心部分に最も近づいたルートです。

アペイリア√
主人公の作り出した自我を持つAI。

答え合わせのお時間ですね。
これまで撒かれてきた伏線が次々と回収されていき二転三転どころじゃないほどの怒涛の展開ラッシュが続いていきます。
ただ唯一不満があるとすれば最後の部分がかなり投げやりになってしまった点ですね。
プレイヤーの解釈に委ねる感じにしたかったのかは分かりませんが、最後まで頑張って欲しかったのが正直な感想です。

総評
シナリオがトップレベルなのは間違い無いんですが如何せん説明部分が多すぎるのとそもそも話が難解すぎるのでかなり人を選ぶゲームだと感じました。
私としてはここ最近やった中で1番面白かったです。いずれfdの方も買おうかと思っています。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?