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② 転職戦線異常あり

前回の記事はこちら(はじめに)

僕は新卒で大手の通信事業会社に入社をして、ちょうど4年目が終わろうとしていた。

以前も記事で書いたが、他の会社から執行役員でこないかと言われており、それをきっかけに自分の今後のキャリアについて考えるようになった。
「転職は、自分が職場で居心地が良いと感じている時にするべき」と聞いたことがあった。
僕もいろいろと仕事に慣れたり、会社についてよく知って、居心地が良いと感じるようになっていた。

まさに転職のタイミングであった。

次の仕事はコンサルティングかM&Aアドバイザリー(M&Aコンサルティング)のどちらにしたいと思っていた。
当時、M&Aの案件を担当しており、弁護士、コンサルティング、会計士、M&Aアドバイザリーなどのプロフェッショナルファームの人たちとやりとりがあった。

彼らはタイトなスケジュールの中、その業界や会社について調べて綺麗なレポートで報告してくる。
短期間で情報を大量にインプットして、整理して説明をする。そしてそのプロジェクトが終わったら、また次のプロジェクトへ。
そんな彼らのプロフェッショナルな働き方を見て、自分も一度はそういった世界に入ってみたいと思うようになっていた。

転職をしたいと思っても、やり方がわからなかったので、
まずは転職サイト数社にいくつか登録した。
簡単な経歴を入力すれば、あとは転職サイト経由で転職エージェントから僕に連絡が来るというサービスだった。

翌日、さっそくとある転職エージェントから世界最高峰の外資系コンサルティングファームで働かないかという連絡が来た。
僕の経歴を見たところ、マッチしているのでぜひ求人を紹介させて欲しいとのこと。

自分にはそういった可能性があると胸が高鳴り、転職エージェントと会うことになった。

後日、エージェント会社に向かうと、自分が想像してたイメージとは異なりビックリした。

そこはボロボロの雑居ビルであった。

今にも止まりそうなエレベーターに乗り、小さな事務所に入る。
しばらくして、奥から人の良さそうなおじさんが出てきた。
人は良さそうな人なのだが、とてもグローバルな外資系コンサルティングファームに関わるようには見えなかった。
名刺交換をすると、名刺にはシニアコンサルタントと書いてあった。

少し雑談をしてから、僕は本題であるメールでもらった求人について話を聞きたいと言った。

すると、すぐにためらいもなく学歴的に無理だと言われた。

話が違う。

仮に出しても書類選考で落ちる、もしくはオファーが出る可能性はかなり低いそうだ。
その会社は世界最高峰の外資系のコンサルティングファームであり、仕事柄、学歴も重視する会社だった。メインの学歴は東大、京大、早慶だそうだ。

社会に出ると、よく学歴は関係ないというが、確かに日々の仕事の実務をする上で学歴は関係はない。
だが、実務以外の採用や社内派閥、学歴を意識する上司だったりで関係するシーンはゼロではない。

自分が仕事でこれまで頑張ってきたのは一体何だったんだ。
自分がこれまでやってきたことが否定されたような気がした。
学歴については今更、仕事を頑張ってもどうしようもない。
諦めるしかなかった。

しかし、謎があった。
僕に連絡する段階で、エージェントは僕の経歴(学歴)が見れたので、
その時点で無理とわかったはず。
なぜ無理とわかっているのに連絡してきたのか不思議であった。

謎はすぐに解けた。

エージェントはこういった会社なら可能性はあると、僕の興味のない違う求人をすぐに出してきた。

つまり、僕は採用される可能性の低い求人で、おびき出され、まんまと釣られたわけである。

そもそも、当時の僕は転職エージェントのビジネスモデルをわかっていなかった。彼らもボランティアでやっているわけではない。ビジネスである。

転職エージェントのビジネスモデルは、僕たち(求職者)からお金をもらわず、代わりに企業からお金をもらう仕組みである。

エージェントが紹介した会社に、僕が入社すれば、
エージェントはその会社から、新しい職場での僕の年収の35% 程度がもらえる。
(例:僕が年収500万円で入社すれば175万円がエージェントの収入)
30% ~ 35%は一般的な相場である。

要するに、彼らは成功報酬型ビジネスであるため、僕がどこかに入社するまでは収入が0である。
となると、僕が入社したい会社よりも、入社できる可能性が高そうな会社を紹介してくるのは当たり前の行動である。
彼らもそれでご飯を食べているので仕方ない。

さらに企業によっては、人手不足が深刻化していれば、転職エージェントに払う報酬を少し上乗せをしたりする。(離職率の高い会社等)
当然、エージェントからすると、そういった会社に人を送るほうが、自分たちの売上が増えるので優先して求職者に紹介しようとする。
すべてのエージェントがそういうわけではないが、一部のエージェントは相談に乗りながら、そういった企業に行くように説得する場合もある。
一方で、本当にこちらが希望する求人を紹介してくれる良いエージェントもある。

結局のところ、他のビジネスと同様にエージェントは本当に人による。
この件があってから、人の発言、行動の裏には立場(ポジション)、インセンティブ(動機)があるというのを意識するようになった。

その釣られた日以降、僕は様々なエージェントに会ってみた。
大手転職エージェント、中小のエージェント、個人でやっている人など。

ちなみにエージェントというのは個人でもできる。
個人でやっている人はオフィスがないので、コーヒー1杯1,000円もするような有名なホテルのラウンジで話をしたりした。
そうして何名か会って、フィーリングを確認して、最終的に1人のエージェントに絞った。

様々なエージェントと会って思ったのが、特定の業界に特化しているエージェントが良い。業界に熟知しており、業界の中での会社の違い(給与、その後のキャリアパス、会社の状態)など、業界に特化しているだけあって、その業界について多くの情報を持っている。また、自分が全く興味のない業界を紹介されるリスクも少ない。
僕の場合はM&A、投資に特化しているエージェントを選んだ。

やっとエージェントが決まり、転職活動に向けた本格的な準備が始まった。まずは、エージェントに履歴書と職務経歴書を用意してほしいと言われた。

職務経歴書?

履歴書は大学生の時に就活で書いたことがあった。
経歴を書くだけなので大学以降は会社名を追加するだけだった。
一方で、職務経歴書というものをこれまで書いたことがなかった。

職務経歴書というのは自分が今までやってきた仕事を紹介するものだ。
職務経歴書は履歴書と異なってフォーマットが決まっていない。
事業会社の人であれば、部署と業務内容を記載したり、コンサルであればプロジェクト内容について記載したりと様々である。
職務経歴書で何よりも大切なのが「わかりやすさ」と「すごさ」である。
忙しい人事がパッと書類を見て、会いたいと思ってもらう必要がある。

僕は本やネットで調べて、職務経歴書を見よう見まねで作成した。
完成後、エージェントにレビューしてもらった。

エージェントからは言葉がそのまま過ぎるというので、修正が入った。
例えば、職務経歴書の業務内容に「月次資料作成」と記載していたら、その資料が使用されているのが経営会議だと「経営会議資料作成」
「月次資料作成」⇒「経営会議資料作成」

こうして見栄えの良い職務経歴書の準備して、興味のある会社に書類を送っていった。

2日後、書類選考通過の連絡が来て、初めての中途面接が決まった。

ー面接当日ー
面接の時はネクタイは着けたほうが良いと聞いていた。
しかし、問題があった。僕は普段、会社でネクタイを着けていない。
そんな僕が急に会社にネクタイをつけると転職活動がバレてしまう。

そのため、面接時間よりも少し早くに現地に行き、会場近くのよくわからない雑居ビルのトイレに駆け込み、個室でネクタイを結んだ。

そして、約束の時間になり、受付で中途採用面接で来たことを伝える。
定時後の面接なので、社員の人が続々と退社していくのを見ながら、会社の雰囲気を掴んでいく。
この人たちとうまくやれるかな~と思いながら。

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しばらくして、会議室に案内され面接官が来て、面接が始まった。

中途採用面接が新卒採用面接と異なるのは、最初から現場のお偉いさんが面接をしてくることである。学生時代にがんばったことみたいなことを聞かれずに、これまでのキャリア、実際にどういった業務をやってきたか、何ができるかを聞かれる。その部署で即戦力になるかどうかを見られる。

・あなたはこれまで何をやってきて、今後、具体的に何をやっていきたいか。
・自分がなぜ新卒でその会社を選んだか、そんな会社をなぜ今回転職したいのか。
などなど。

あっという間に、面接が終わった。

面接終了後、帰り道にある公園のベンチに座って、エージェントに電話した。
エージェントから面接の感想や雰囲気を知りたいので終わったら電話をしてほしいと言われていたためだ。

エージェントはすぐに電話に出て、僕は今日の面接の感想をエージェントに伝えた。

そうすると、エージェントは何やら言いにくそうに、


エージェント
「実は面接後、すぐに不採用の連絡が来ました。面接で何を話したんですか?」

つづく

サポートされたお金は、途上国の映画を観ることができない子供たちに映画を上映する活動に使わせていただきます。