偶然は必然か偶然か

名古屋の旅
行き道と帰り道で
めったにない偶然があった

・行き道
公演会場の徒歩10分のライブバーで
友人がライブすることを知っていたので
ちょっと顔を出そうと思っていた

バスを降りて名古屋駅に向かう
最初の信号を渡ろうとする
ふと見ると大荷物の上に座るヤツが

ヤツだ
会いに行こうとしていたアイツだ
声をかけるとびっくりして
少しして互いに笑う

実はこの人物とは
ライブ会場以外で偶然会うのが2回目だ

「もはや俺たち結婚するんじゃね」
「いやもうしてるんじゃね」

いやしてないししない
さておき、先の約束なんかをしながら
互いの会場に別れた

・帰り道
会場の厚意でゆっくり寝て
名古屋駅前でのんびり朝食を摂り
さて帰りのバスを待つ

バス停は女子率が高く
ギターを抱えた半世紀男は
居心地の良さもなく棒立ち

最初は日向であったかいな
なんて思っていたが
すぐにこれは暑いと日陰に移動

太陽が昇れば割と日陰者だ
俺には日陰が丁度いい
なんて思いながら棒立ち

していると
こちらに向かって走ってくるガールが

なにごとかと思うと
これまた旧知の友人
互いに瞳孔開くか如く目を丸くする

彼女は年に一回会うかどうか
そんな人なのだが
とても良い空気の人で
人見知りな俺には貴重な友人だ

数年前に結婚して
便乗して幸せな気分にさせていただいた

そんな彼女は友達と大阪に向かうらしく
偶然同じバスを待っていたのだ

びっくりして嬉しくて
鯖折りが如くハグしたい気持ちになったが
早朝のバス停、実はまだ風呂に入っていない
しかも相手は人妻だ
分別のある大人になって良かったと
ほっと胸を撫で下ろす

いやしかしびっくりした
びっくりして惚れそうになったが
相手は人妻だ
分別のある大人になって(以下略)



この行き道と帰り道の偶然
これほど偶然が重なると
ひょっとして何かの必然ではないか
神の導きなのでは
などという気持ちになる

しかし偶然は偶然なのだ
予告のないボーナストラック
偶然の一場面を心から楽しんで
また会おうとゆるやかな約束をして
互いの人生に帰っていく
偶然とはなんと儚く素敵なのだ

理由もなにもない偶然
必然には存在しない一片の価値
偶然は偶然でいい

いい気分だ

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