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タイ語ブームで女性学習者が急増〜おじさん構文とポリコレを考える

先日、次のようなツイートをした

今、うちのタイ語教室では、毎週の授業で『タイ語中級読本』を使っているのだが、

「ちょっと男性向けの文章が多いんじゃないかな?」と感じていた


男性向けの文章とはつまり、

男はそれを自然に言うかもしれないが、女性は普段の会話では絶対に言わないような文

ということ


僕はこのツイートを、何気ない独り言のつもりで投稿したのだが、これが予想以上に反響があった


特に、女性の学習者から、
「私もなんとなくそう感じてました!」という返信が多く寄せられ、かなり意外だった


そうか、やっぱり女性のみなさんも、「文章が男性向けだ」と感じていたんだな


これは、僕にとっては新たな発見で、とても興味深い テーマだと思ったので、
今回、少し掘り下げてみようと思う


まず、男性向けの文章とは何か

それは、先ほども書いたが、

「男性は普通に言いそうだが、女性は決して言わないであろう文章」のこと


例えば、次のような例文だ

これは、男が見てもあまり違和感を感じない

男にとっては、わりと自然な文章だからだ


それどころか、

「日本のおじさんがタイの女の子を口説く時に使うんだろうな」
という実際の場面までが浮かんできそうだ


我々男たちにとっては、日本のおじさんがタイの女の子を口説く、というのはいたって普通のシーンであり、

むしろ、そういう目的でタイ語を学ぶ男が多いことをよく知っている

だからこそ、こういう例文が「自然に使えそうなフレーズ」として受け入れられる


しかし、女性の学習者にとってはどうだろうか

「タイの女の子を口説きたがる日本のおじさんが多い」と知ったら、

まず何よりも、その事実に対して
気持ち悪い!」という感想が出るだろう


そう、日本のおじさんが、タイの女の子に対して「君は綺麗だよ」と タイ語で話すことは、
語学云々以前に、気持ち悪いことなのである

それが世間一般の女性の感想だろう


だから、女性が監修する参考書には、おそらくそういう「ダイレクトすぎる」フレーズは、あまり出てこないんじゃないかと思う

ダイレクトな口説き文句というのは、あくまでも、男社会でのみ受け入れられる文章だからだ


以下は、続きのツイート


僕がこういうことに気がつくようになったのも、ひいては、女性のタイ語学習者が激増したからだ


タイ語の教室で、女性の学習者が過半数を占めている、なんてのはザラで、

過半数どころか、教室の8割9割が女性、ということもよくある


教室にいるのがほとんど女性なのに、勉強する例文は、おじさん構文…

こうなると、当然、違和感が生じてくる


しかし、昭和平成の世の中というのは、全体的に男社会だった

社会には男だけがいて、それで世の中が回っていた


そこで必要なのは、男の価値観だけ

女性の見方や考え方などは一切考慮されない


それは学問の分野も同様で、教える側も男で学ぶ側も、男だった

少なくとも、男性の学習者が想定されていたんだと思う


そうなると、今回のように、

「男性は普通に言いそうだが、女性は決して言わないであろう文章」
というものが、参考書に自然に登場するようになる


この文章、女性が見たら気持ち悪いんじゃないかな…
みたいなところにまでは、発想が及ばない

実際、僕も女子生徒に教えるまで、全く気がついていなかった


これが つまり、「世の中が変わった」ということなのである


男が教えて男が学ぶ世の中では、男向けの文章は自然であり、

今回のように、日本のおじさんがタイの女の子を口説く、というシチュエーションも、いたって普通のこととして受け入れられる


しかし、

ここ数年で女性のタイ語学習者が急増し、体感としては、男女比はとっくに逆転している


そうなると、先に述べたような「おじさん構文」、おじさんが言いそうな文章は、

「気持ち悪い文」として敬遠される、というわけだ


ただし、

ここで強調しておきたいのは、僕は決して、既存の参考書をディスりたいのではないということ

 ↑
これについても、先日ツイートで 弁解している


中級読本は素晴らしい良書であり、実際、この本を勉強することで、ものすごくタイ語能力が身につくと思う


ただ、出版当時はやはり、ここまで 女性の学習者が増えることは、想定していなかったのだろう

それほどまでに、昨今のタイ語ブームは、全く誰にも予想できない、稀有な出来事だったのである


だから、参考書は全然悪くない

社会の状況が完全に変わった、ということなのだ


せっかくなので、中級読本に出てくるおじさん構文を、もう1つ、紹介しておこう

これも、女性が見たらおそらく、
うわぁ〜、ひどいなあ😰
と引くレベルではないだろうか


令和のポリコレ的には、完全にアウトである

おそらく、女性同士でもこんなことは言わないんじゃないかと思う


実際、僕がこの例文を教室で教えた時、多くの女子生徒が苦笑していた


女性にとって、年齢というのは、センシティブなものだ

そのため、女性同士が年齢のことで相手をからからかう、というシーンは、やはり考えにくい


ただし、次のような意見もあるかもしれない

「タイ人女性はキツイ性格の人もいるから、こういうことを言う人もいるんじゃないの?」と

でも、僕はそうは思わない


タイの人はおしゃれが好きだし、
ある程度の年齢になっても、原色の服を着たり、若い服装をしたりする

そして、それを見た仲間は、
เฮ้ย น่ารักจังเลยอ่ะ.
(わぁ、なんてかわいいの)
と、相手のファッションを褒める


少なくとも、「年齢不相応だ!」などと言って相手をからかう、なんてことを、タイの女性はしないと思う


と、いうことは…

 ↑
こんな失礼なことを言うのは、やっぱり男なのだ

日本のおじさんが、タイの女性をからかう時に使う言葉、
おじさん構文、ということになる


なんとデリカシーのない言葉だろうか😢


タイで実際に使ったら、やっぱり冗談にならないと思う

ひどい!なんてこと言うんだ!」と、周囲からは非難ごうごうになるだろう


こういった相手の年齢をからかうようなフレーズは、タイでももちろんタブーなのだ


つまり、文法的には正しくても、タイの現地では使えない言葉なのである

使いたければ使ってもいいが、おそらく相手のタイ人女性を敵に回すことになる


こういう文が普通に掲載されているのは、今回何度も言っているように、
男の読者の方がこれまで多かったからである


男なら、おそらく普通の文としてスルーするだろう

でも女性が見たら、

えっ、さすがにこれはちょっと…😨
という感想になり、

おじさん構文、と言われてしまうのである


中級読本に限らず、タイ語の参考書は、全体的に、男性の読者を想定している、という傾向があったと思う


さらに言えば、

タイの女の子を口説きたい、という日本のおじさんは、わりと一般的な存在だった

 ↑
なにせ、『男と女のタイ語』なんていう参考書が、普通に本屋で売られていたぐらいだ


今見ると、「ポリコレ的にどうなの?」と言われてしまいそうだが、
当時は、これが全然普通だったのである


だから、必然的に、男が言いそうな文章、いわゆる「おじさん構文」の割合も増えていった、というわけだ


具体的には、

・おじさんがお気に入りのタイ人女性に言いそうな文章

・タイ人女性の容姿や年齢をからかうような文章

これらは、男社会が中心だった平成の頃にはスルーされても、

令和になって男女比が逆転してくると、「おじさん構文」と認定され、忌避される、というわけだ


…以上、タイ語の参考書に散見される「おじさん構文」と、それにまつわる社会の変遷について述べてきた


たとえ正しい文法を学んだとしても、その文がポリコレ的にどうかとか、それを言ったら相手が傷つくかどうか、ということにも、配慮が必要なのである


大事なことなので、
もう一度言う


文法的に正しくても、相手が嫌がったり傷ついたりするような言葉は、言ってはいけない 


でも、作者も読者も男だと、そういうことにまであまり気が回らないのだ

僕も男を代表して、ここで皆さんに謝っておきたい🙇


そのため、参考書の例文を見て、「ちょっとセンシティブかも…
と思ったら、実際に相手に言うのは避けた方がいいだろう


また、この文章はどうなんだろう?と気になることがあれば、いつでも気軽に質問してきてください

以上、最後までお読みいただきありがとうございました!



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