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工学部の卒業研究ってどんな感じ?

皆さんこんにちは!航空宇宙工学専攻修士1年の阿部瑞樹です.

この記事では,工学部の卒業研究がどんな感じなのかを高校生の皆様にご紹介したいと思います!大学入学前の高校生・受験生の皆様には少し気が早いかもしれませんが,多くの理工系大学では卒業研究をして学位論文を提出することで大学を卒業することが出来ます.私もつい先日卒業論文を提出しました!今回は私の経験を基に,卒業研究とはどのようなものかを紹介します.

どんな研究をするの?

私の所属する研究室では,次世代の航空機や宇宙機を作るための先進的な構造物のモデリングや制御,エネルギー回収技術やスペースデブリなどの研究をしています.私は特に「宇宙構造物の振動制御」という分野について研究をしています.

皆さんはJames Webb Space Telescopeという,NASAが現在開発中の宇宙望遠鏡をご存じでしょうか?この宇宙望遠鏡は非常に大きな反射鏡を持っています.このような大きな反射鏡はロケットで打ち上げるために,非常に小さく軽量に設計して宇宙で展開して使います.

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James Webb Space Telescope (C) NASA

この時に問題になるのが,このような大きな構造物の振動です.大きくて軽量な構造物は振動が起こりやすくなります.振動が起こると反射鏡の精度が低下してしまいます.そのために構造物の振動を抑えてあげる必要があります.私の卒業研究では,出来るだけエネルギーを使わずに効率的に振動を抑えるための制御手法を研究しました.

卒業研究の内容は,学科や研究室によって幅広いです.私の友人では翼の周りの流れのシミュレーションについて研究した人や深層学習を利用した画像処理などを研究した人がいます.東北大学工学部には様々な分野の研究室があるので,皆さんの興味のある研究分野が見つかると思います.

卒業研究ではどんなことをしたの?

卒業研究でやることは研究分野や内容によって異なり,必ずしも同じ事をやる可能性は少ないかもしれません.ここでは私の経験をお話します.

まず卒業研究に先立って,自分が取り組む研究分野では過去にどのような研究が行われてきて,どのようなことが未解決なのかを論文を読んで調べます.そしてそれを解決するためにはどんなことが出来そうかを考えます.私はこの部分が卒業研究で最も大変でした.もちろん読む論文は英語が多いです.さらには内容を理解するために,様々なことを勉強しなおす必要がありました.時々先輩や先生の助けを借りながら,研究分野についての理解を深めるとともに,卒業研究で具体的にどんなことに取り組むかを考えます.

論文を読む作業と並行して,卒業研究で提案する手法の理論構築を行います.上記の課題を解決するためにはどのような工夫が出来そうかを考えて,理論を構築します.理論のアイデアは研究ミーティングで研究グループの学生と先生に報告します.ミーティングでは理論が正しいかどうか,研究課題を解決することが出来そうかを確認します.時には理論の不十分な点を指摘されたり答えるのが難しい質問を受けたりします.研究ミーティングは脳ミソをフルに使わないと乗り越えられないので,なかなか大変でしたが,このミーティングのお陰で研究が進みます.

私の卒業研究ではシミュレーションを作成しました.シミュレーションでは,構造物の振動をコンピュータ上で再現して,提案する手法を用いて振動を抑制できそうかを検証します.さらには既存の手法と比較してどのような差があるかを考えます.構造物の挙動を再現するための方程式を解き,制御ロジックを行うためのプログラムを作りました.シミュレーションでは様々なパラメータを変えて結果を見ることが出来るので,理論を構築する上でのたたき台になります.

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卒業研究で提案する手法の構築がある程度固まってくると,提案する手法が実際に使えるのかを確認するための実証実験を行います.私の研究室には実験を行うための設備が多く用意されています.私の卒業研究では,実際に構造物を振動させた状態で,提案する振動制御手法を用いて振動を抑制できるかを確認します.実験装置を動かすための準備や勉強はもちろんのこと,実験用のプログラムも作成します.

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実際にはこれらを順番にやるというよりは同時並行で進めているようなイメージです.どのようなことを卒業研究でやるのかは,分野や研究室のスタイルによって異なります.

研究スタイルを区分するのは難しいですが,機械系においては大きく理論系(シミュレーション含む)と実験系に分けられると思います.前者では,物理現象をモデル化するための理論(私の分野では構造物をどのように数式で表現するかやどのように制御を行うか)を考えて,シミュレーションによってそれを再現するといった研究やシミュレーションをするための技術といった研究がメインです.実験系では,研究対象の機械を模擬するための設備や装置を用いてデータを取得して,それをもとに考察を行うような研究がメインです.私の研究では,どのようにして所望の制御を実現するかの理論を考えてシミュレーションで検証して,実験によって手法を評価するところまでを行いました.そのため内容が盛り沢山でした.

卒業研究発表ってどんな感じ?

私の所属していた機械知能・航空工学科では2月の中旬に卒業研究発表会を行います.2020年度はオンラインで発表を行いました.

発表時間は10分で質問時間が5分です.この1年間で取り組んできた研究内容を短くまとめて発表します.発表会は同じコース(私の場合は航空宇宙コース)に所属する学生が参加します.同じコースでも研究内容は様々なので,自分の研究分野に詳しくない人でも研究内容を理解できるようにわかりやすくまとめる必要があります.なかなか骨が折れる作業でした.

発表本番は緊張しましたが,何とかうまく発表をすることが出来ました.質疑応答では,教授から難しい質問を受けて回答をするのが大変でした.

卒業論文ってどんな感じ?

卒業研究を完了するには,卒業論文を提出する必要があります.卒業論文は1年間の卒業研究で得られた知見を詳しくまとめて提出する論文です.卒業研究がある程度進んできたら準備を始めます.

私の卒業論文は最終的に7章の構成になりました.まず研究背景と研究目的について述べます.続いて卒業研究で提案する手法について詳しく述べます.私の場合はこの部分が一番長くて執筆に苦労しました.結局3章分の分量になりました.さらにシミュレーションの結果と実験の結果をまとめて,最後に結論を述べます.

私は卒業研究発表が終わってから提出までの3週間で卒業論文の大部分を書きましたのでハードでした.すべて書き終えて卒論を印刷したときは達成感がありました.

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卒業研究は大学で学んだことの集大成となる

卒業研究は大学での勉強の集大成となります.研究を通して,高校と大学で勉強した数学・物理の知識と,大学の専門で学んだ機械力学や制御工学という工学分野の知識やプログラミング能力などをフル活用します.東北大学工学部では,様々な分野の最新研究が行われているので,きっと皆さんの興味のある研究が行えるでしょう.もし興味のある研究があれば,研究室の扉を叩いてみてください!

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