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東北大工学部から学部生なのに研究留学してみた

皆さんこんにちは.航空宇宙工学専攻修士1年の阿部瑞樹です.今回は,私が学部2年の時に経験した研究留学についてご紹介したいと思います.

まずお断りしておきたいのは,この留学経験は東北大学の留学プログラムによるものではありません.大学で留学する方法には大学が主催する短期留学プログラム大学間の協定に基づく交換留学などが多いと思いますが,私の紹介する留学は,外部の民間財団が主催する留学プログラムでした.もし東北大学の主催するプログラムについて知りたい場合は,東北大学グローバルラーニングセンター東北大学工学研究科・工学部国際交流室の情報を参考にしてください.

東北大学の関係がない留学にもかかわらず,この記事でそれを紹介する理由は,大学に入ると学内だけでなく学外でも様々な活動のチャンスがあるということをぜひ知って欲しいからです.高校生・受験生の皆さんは,大学入学後に挑戦してみたいことがたくさんあると思います.その時は学内だけでなく,学外にも目を向けてみると可能性が広がるかもしれません.実際にこのプログラムで様々な経験をすることができました.

どんな留学を経験したか

私は学部2年の夏休みに,中谷医工計測技術振興財団が主催する国際学生交流プログラムに参加して,アメリカのRice Universityでリサーチインターンシップを行いました.このリサーチインターンシップでは,Rice Universityの研究室に参加して,5週間研究活動を行いました.私は機械工学科の研究室に所属していました.留学当時は2年生でそれまでに研究を行った経験はありませんでした.専門の知識もあまり無いままいきなり留学先の研究室に放り込まれるというなかなかハードな留学でした.

Rice Universityはアメリカのヒューストンにある私立大学です.アメリカの私立大学の中でも名門校の一つです.学生数は東北大学より少なくキャンパスの規模も小さいですが,非常に優れた教育・研究機関として高い評価を受けています.下の写真のように,綺麗な色合いのレンガが印象的なキャンパスです.実はRice Universityはジョン・F・ケネディがアポロ計画について一般向けに演説した,所謂ムーンスピーチをした場所です."We choose to go to the Moon"という演説をもしかしたら聞いたことがある人もいるかもしれませんね.

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Rice Universityのキャンパス

留学先での研究活動

初めて留学先の研究室に行ったときは非常に緊張していました.しかしながらホストの教授とメンターの学生の皆さんに温かく迎え入れていただきました.教授は陽気な人で逆に緊張が吹き飛ぶくらいでした.その日のうちに研究室にデスクを構えました.

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留学先の研究室のデスク.メンターの学生と同じ部屋になった.どちらかというと物置に近い部屋だった.

留学先で取り組んだ研究内容は,部材のばらつきによって構造物の変形量がどのくらいばらつくのかをシミュレーションするというものでした.今思えば研究と言っていいのかわからないくらい初歩的な課題でしたが,当時は苦労して取り組んでいたような気がします.留学先の研究室ではシミュレーションのプログラムを作成するのをメインに行っていました.

シミュレーションを作る際には,その背後にある物理現象を数式で表現する必要があります.しかしながらそれだけでなく,どのようにしてそれをコンピュータ上で再現するのかを考えなければなりません.そのためにはどのようにして計算を行うのかを考えて,実際にプログラムに落とし込む必要があります.この作業にはかなり時間がかかりました.

シミュレーションと並行して数理統計学の知識を勉強し,それを用いてシミュレーション結果を評価する必要がありました.数理統計学に関しての事前知識があまりなかったので,一から勉強しました.時にはメンターの学生に教えてもらいながら,シミュレーション結果の評価を行いました.

当然ですが,これらの研究はすべて英語のやり取りで行いました.まずメンターが言っていることをキャッチする必要があり,その後数学の知識や計算と結びつける必要がありました.最初は全く理解できず,何回も説明してもらいました.さらに自分が話すときは,力学や統計学で使う専門用語や英語の言い回しを知らなかったので,初めはどのようにして相手に伝えればよいのかがわかりませんでした.そこで話す前に用語を調べて、話す内容を英語でメモしてからメンターや教授とディスカッションに行くようにして乗り越えました.

研究のポスターセッションでの発表

5週間のリサーチインターンの最終日には,これまでで行ってきた研究内容をポスターにまとめて発表するセッションがありました.ポスターセッションでは,機械工学や土木工学から生化学など全く異なる分野の学生や先生などが聞きに来ます.専門が異なる人にも理解できるようにポスターを作るとともに,専門的な質問をされたときに答えられるような準備もする必要があります.研究発表のポスターを作ったことは今までなかったので,どのようにしてまとめようか悩みました.できるだけ要点を絞ってポスターを作り,難しい内容は必要があれば英語で説明できるような準備を行いました.

本番で一番最初に僕のポスター発表を聞きに来たのは,なんとポスターセッションの評価をする大学教授でした(笑).予想していなかったことなのでとても動揺しましたし,まだ審査員を迎える準備もできていませんでした.しかし発表は思いのほか上手く行うことができました.これは自信を持って自分のアイデアを発表するための起爆剤のようなものとなり,その後は自信を持って発表をすることができました.途中で土木工学の学生から鋭い質問を受けて回答に窮することもあり,研究発表の難しさを痛感しました.

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ポスターセッションセッションの様子

学部生でも研究留学のチャンスがある

学部生で研究目的で留学に行くという人はあまりいないかもしれません.

僕にとってRice University での研究留学経験は,今後自分がどのようなことを学び考えていくべきなのかを知る指針になりました.また実際に研究をすることで,その大変さ・難しさ・そして愉しさを知ることが出来ました.

大学に入ると高校時代とは比べ物にならないほど多くことが出来るようになります.東北大学の中にも外にも,様々なことに取り組めるチャンスが転がっていて,それを生かすかどうかは貴方次第です.

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