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『「負けたことがある」というのがいつか』 4年 柿本音王

はじめに。
今シーズンも東京学芸大学蹴球部への多大なるご支援とご声援をいただき、ありがとうございました。チームを関東リーグから降格させてしまい私自身申し訳ない気持ちですが、今後もご支援・ご声援をいただけますと幸いです。



平素よりお世話になっております。
佳から紹介を受けました、E類生涯スポーツコース4年の柿本音王です。


佳紹介ありがとう!
佳といえばあの試合。一人の選手の人生を大きく変えたという伝説は、ノンフィクション武勇伝としてこれからも語り継がれることでしょう。
佳は自分の実力と正面から向き合える人間で、貪欲にうまくなろうとする姿が印象的でした。お世辞もお情けもなしに、すごく頼りになる、一緒にプレーしたいと思えるディフェンダーだったよ。最後の1か月間は、佳が怪我無く練習を終えているのを見るのが嬉しかった。お疲れさまでした。



わりかし余裕を持って提出できた卒論とは打って変わって、卒業ダイアリーは期限に追われています。というか、期限過ぎちゃってます。ごめんね健太。
文章を書くのが好きな自分の文字を打つ手が、まさかこんなに進まないとは。書き出してもなんだがしっくりこず、書いて消しての繰り返し。題名は「本日もお日柄よく」にして…とか考えてたけど、もう腹を括るしかないのかな。



ということで、今の自分から出る言葉を素直に綴ることにしました。この先に待ち受ける文章たちに最後まで付き合っていただけたら幸いです。



ちなみに次は鎌田大慶(たいけい)の番です!
生粋のシティボーイでありながら、坂道オタクかつグーナーの大慶。貴公子という言葉がピッタリハマるハンサムボーイです。
キレキレのドリブルが特徴的な選手だけど、個人的には大慶のミサイルシュートが好きだったな。
スペイン語に英語に、大慶は4年間言語に振り回されてたね。卒論も全文英語で書かなきゃなんて聞いただけでしんどい。
そんな大慶が母国語の日本語で書く卒業diary。優しい大慶がどんな文章を書くのか楽しみです!




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両親は共にバスケプレーヤーだった。
必然的に、と言っていいのかわからないけど、漫画「SLAM DUNK」を読むことになる。何周読んだかわからないし、いつ読んだときにその言葉に目が留まったかも覚えていない。



はいあがろう。「負けたことがある」というのがいつか大きな財産になる



湘北vs山王工業戦後に山王工業の堂本監督が言った言葉。なぜか自分の中に強く刻まれた。その理由はきっと、負の感情は記憶に残りやすいから。なんて単純なものだけじゃない。










縁に縁が重なって入学した静岡学園。
寮が新設されるということもあり、滑り込みの一般入試で入学を許された。文字通り底辺からのスタートだった。



そこから2年と9ヶ月後。
幸運に幸運が重なり、なぜか「全国高校サッカー選手権優勝メンバー」になっていた。
何万人、もしかしたら何十万人といるサッカー部員の中で、毎年30人だけが見ることを許される景色を見た。



そしてまた2か月後。
選手権決勝から5日後のセンター試験と2月下旬の二次試験をこれまた幸運が重なって突破し、東京学芸大学に入学する権利を得た。




今もそうだけど、昔から運と縁だけは強く、恵まれている。




運と縁に恵まれて入学した東京学芸大学。
全国制覇してしまうようなメンバーの中にいたから、正直学芸サッカー部のレベルが高いとは思わなかった。




それでも、自分がいくら追いつこうとしても追いつけないくらいうまい先輩が何人もいて、同期にはヤスと健太がいた。そこでは毎日新たな学びがあってすごく楽しかった。





2年時には、アミノバイタルカップ、総理大臣杯、入れ替え戦の権利を勝ち取った関東2部最終節、あと一歩1部に届かなかった入れ替え戦、全てを経験した。あたり前のようにJリーグに内定している人たちの中でプレーしても、十分できることに気づいてプロの舞台を意識した。

















時は経て3年になり、幾つもの大きな経験をさせてくれた2つ上の先輩たちが引退。そこからの2年間でチームは何度負けたのだろうか。



奇跡的に勝ち上がった今年のアミノ杯を除いて、カップ戦はほぼ1回戦負け。リーグ戦の連敗記録がいくつだったかはもはやわかわない。この2年間リーグ戦で積み上げた勝ち点を足しても、今年の関東3部の自動残留ラインに届かない。









運動会の徒競走で断トツビリになるような、能力とセンスのかけらもない子ども。どこに行っても負けてばかりで、常に自分の周りは、対戦相手は、少し強くなったと勘違いした自分よりも強かった。



高校時代の経歴のおかげでエリートだと勘違いされるけど、地区トレセンにすら入ったことがないし、高校や大学で推薦をもらったこともない。成功や栄光の数とは比にならない数の負けを毎日経験して、なんとかここまでやってきた一般市民。




だから、負けることには慣れている。




でも、どれだけ負けてもそれを乗り越えて成長することに喜びを感じたそれまでの十数年とは違って、この2年間はしんどかった。






試合で負け続けたのに対して、日々の練習で何度負けを経験できただろう。
自分のやっていることは変わらない。歩き方や姿勢まで常に気を配って、昨日より今日、少しでもうまくなっていられるように過ごす。それなのに自分がうまくなれている実感がなくて、どう足掻いても虚しさは付きまとった。





自分が点を取って勝てれば状況は好転すると思って、得意とは言えないプレーを得意なプレーに変えようとした。





そして仲間を頼った。ピッチの上で誰よりも自分がチームのことをよくみている。その自負があったから、ピッチ上でチームの100%を出すことを考えた。自分と違って情熱を前面に押し出せる同期たちがいたから、それがチームに還元されればきっとチームは強くなる。そう思って、なるべくみんなに火を灯し続けられるようにした。訴えかけたりもした。あの時は伝えたいことをうまく伝えられなかったな。ごめんね、みんな。





この二つをずっと繰り返したけど、結局うまくいかなかった。







自分のプレーができていないことに悩んだ。







そして、チームの勝利を誰よりも強く願ったヤス、健太、昂生、トキ、陸斗(もちろんほかのみんなも)の気持ちが報われないことに打ちひしがれた。そんなものが簡単に報われないことはよくわかっていたけど、自分の将来のためにもどうにかチームの結果を出したかった自分の心は強く抉られた。





虚しかった。



悲しかった。




そして悔しかった。




だがらと言えばいいのか、それでもと言えばいいのか。なんとか前に進もうとしたけど、心の中の糸は何度も「プツッ」と切れて、その糸をなんとか結び直してグラウンドに向かうことしかできなかった。





幸運にも価値のある負けを経験し続けた20歳までの期間。20歳以降の2年間はそれ以上に結果としての負けは多いはずなのに、未だにその負けによる成長の実感ははっきりと見えてこない。



だけど、



敗北が

現実が

孤独が

痛みが

苦しさが


それでも歯を食いしばって前に進まんとする日常が




そんな目を背けたくなるような事実が、成功や栄光以上に自分を成長させることはよく知っている。











映画マトリックスを観た両親が「カッコいいじゃん」という単純な理由でつけた“音王”という名前。主役の“ネオ”を演じたキアヌ・リーブスは、多くの苦しみを経験したスーパースターとして知られている。


さすがに照らし合わせるのは烏滸がましいけど、きっと自分も、多くの負けから成長する宿命を背負ったのだと思う。






大学4年間で経験した負けは、どのような財産となって自分に還元されていくのか。きっと自分次第で大きく変わってゆく。





だから今は、前を向いて歩み続けることを決めた。





今日の自分が昨日の自分より少しでも進んでいられるように。








そしていつか



「この負けが大きな財産になった」



そう胸を張って言えるように。










最後に少しだけメッセージを



家族
聡明でユーモラスな父と、度胸と愛嬌を兼ね備えた母。そしてかわいいかわいい2人の妹。運と縁には恵まれてきたけど、そんな自分の人生で一番の幸運は、この家族の長男として生まれたことだと思います。22年間支えてくれてありがとう。これからもよろしく。



高校までの恩師の方々
ほんとうに私は縁に恵まれたと思います。未熟であり続ける私を育ててくださり、ありがとうございました。今でもよくしてくださる方ばかりで、感謝してもしきれません。今後ともよろしくお願いします。


学芸でお世話になったスタッフの方々
学芸に来たことで、とりあえず足元の技術はそこそこあるくらいの選手だった私が、考えてサッカーをすることができるようになりました。専門的な視点から得た学びを、今後の人生でも活かして精進します。ありがとうございました。



先輩
大学時代はもちろん、今もかわいがってくれる先輩ばかりで、ほんとうに自分は幸せ者だなと思います。飯でも飲みでも、喜んで行くのでまだまだかわいがってください!これからもよろしくお願いします!



後輩
先輩としてカッコいい姿を見せられなかったのが、ちょっぴり心残りです。優秀なみんなに関東リーグの舞台を残してあげられなくてほんとうにごめん。みんなうまくなったけど、自分たちの弱さに向き合う強さを持って、強いチームになってくれることを期待しています。先輩に名前を挙げてもらって嬉しかった経験があるから自分もやってみようかな。
はると、らいき、りく。頑張って。
長澤、しょうま、きずく。お前らにも期待してるよ。



同期
「このメンバーで何か成し遂げたい」本気でそう思える同期だった。強さと同じだけ弱さや脆さも抱えた学年で、その弱さが出る場面のほうが多かったね。でも、その弱さにしっかり向き合うことができることも俺はわかってたよ。これもまた苦い経験。不器用だけどまっすぐなみんなが大好きです。同期として出会ってくれてありがとう。
同期へのメッセージはもうちょっと細かく書こうと思ってたけど、もう時間ねえわ。まあまた飯でも飲みでも行って話そうぜ。



ほんとはもうちょっと文構成考えて着地を綺麗にしたかったから大慶の紹介文を序盤に書いたけど、そんな必要もなかったようです笑
ただ、もう期限が来ているので大慶の紹介文を移動させる余裕もありません!校閲もできないな笑正直満足いく文は書けてない気がするな笑
でもまあブログは飾らない文章のほうがいいよねってことで。



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ほんとうの最後に



ここまで読んでくださってありがとうございます。
もうちょっとサッカーがうまくなりたいという気持ちが捨てきれなくて、来年も上を目指してサッカーを続けます。またぜひ応援に来てください。





4年間ありがとうございました!


#紫志尊々 #jufa #大学サッカー

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