新人弁護士向け刑事事件対処法(3)ー1回で結審を求める事件の起訴後~期日前日までの進め方

今回は,1回で結審を求める事件の起訴後~期日前日の自分の活動を大雑把に書いていこうと思います。
ビギナーズが今手元にないのですが,おそらくほぼビギナーズと重なっているように思います。
事案としては,被疑者段階から弁護人になっていて起訴されてしまった事件で,執行猶予がほぼ見込まれて,争点もなく1回で結審できそう,という事案を想定しています。
なお,私は大体以下のように進めていますが,現実にはもうちょっとバタバタしています……

0.起訴前
起訴される可能性があるならば,起訴された日に保釈請求できるように,被疑者段階から保釈の準備をするべきでしょう。
被疑者段階で身柄引受書を家族から預かり,また保釈請求書も作成しておく。
また,保釈保証金についても,キャッシュで払えるのか,全弁協や日本保釈支援協会を使うのか確認しておく(使うなら資料も家族から受け取る)。
偉そうに書いてますが,いつもバタバタしてます……
(保釈に関しては後日項を改めて書く予定です)

1.起訴直後
・起訴状の写しをもらう
・証拠の謄写請求
・(地域によっては)証拠等関係カードを交付するよう検察官に求める
・検察官に証拠の任意開示を求める
 任意開示の際は,「公判前整理手続を活かす【第2版】」(現代人文社)にどういう証拠があるかという表があるので,非常に役立ちます。
(※2018年1月28日追記 平成26年版以降の白表紙の「刑事弁護実務」もとても参考になる,との情報を頂きました!) 
・裁判所から期日の調整の連絡
 争いない事件なら,裁判所から40分間程度の期日を打診されることが多いように思います。
 期日は,大体1ヶ月後を指定されることが多いでしょうか。

2.起訴から約2週間後
・証拠の写しが手に入るので,コピーして依頼者に交付
 私は,事件後に返してもらうよう誓約書も書いてもらっています。あと,目的外使用をすると罰せられること(刑事訴訟法281条の4)も説明しています。
 交付する際は,関係者の住所等のマスキングも気を付けた方がいいですね。
・証拠を見て,弁論の大まかな構成を作成
 最初に弁論を考えると,尋問での獲得目標が明確になります。
 また,弁号証もイメージできます。
・被告人質問・情状証人の尋問の草稿を作れそうなら作る
・依頼者との打ち合わせに先立ち,証拠意見の草案も作る
 余談ですが,私はいつも前科の判決文については「不同意。必要性なし。」とします。それでもほぼ証拠とされてしまうものの,20年前の前科の判決文とかだと必要性なしで却下されることがあります。
・公判ですることを想定したメモも作成

3.起訴から約3週間後
・依頼者と打ち合わせ
  ・証拠の内容の確認
  ・証拠意見の確認
  ・被告人質問の練習
   ※2019年5月28日追記 
    かつては尋問事項メモを渡していたこともあったのですが,
    季刊刑事弁護95号の被告人質問特集を読んでから,
    メモを渡すことはなくなりました。
  ・被告人質問以外の裁判手続の練習(自作の裁判手続の流れを説明した
           紙を予め依頼者に交付)
・情状証人と尋問の練習
 依頼者にするのと同じ説明をしてます。
 あと,20分前に裁判所に集合する約束をし,印鑑の持参もお願いしてお
    きます。  
・依頼者や情状証人との打ち合わせを踏まえ,尋問事項の変更

4.公判1週間前まで
・検察官に対して
  ・証拠意見を伝える(刑訴規則178条の6第2項2号)
  ・弁号証開示,証人の氏名なども伝える(刑訴法299条1項)
  ・1回で結審したいという意向を伝える
  (刑訴規則178条の6第3項柱書の「連絡」と,同2号参照)
・裁判所に対して
  ・刑訴規則178条の6第3項2号の事項を伝える。
   今いる地域ですと,起訴後に裁判所から起訴状の写しとともに
   紙を受け取っており,検察官請求証拠に対する証拠意見の見込み,
   弁号証はどういうものがあるか,1回結審を希望するかなどを書いて
   出すようになっています。これは全国的な運用でしたっけ。
   東京にいたときの記憶がないです……

5.公判前日まで
・弁論の完成
・公判期日持参資料の確認
・公判ですることを想定したメモを確認

大体,以上のような感じで準備を進めています。
事案によって適宜変えますし,実際には結構バタバタすることが多いですが……

また,以上には書いていませんが,示談や環境調整など情状に有利な事情を作るための活動は最初から並行して進めています。

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