新人弁護士向け刑事事件対処法(2)ー接見でどう聞くか

1.オススメ書籍
繰り返しになりますが,「刑事弁護ビギナーズver.2」(現代人文社),「取調べ対応・弁護実践マニュアル第3版」(日弁連),「刑事弁護の基礎知識」(有斐閣)はオススメです。
あと,私がとても勧めているのが,季刊刑事弁護の特集の「刑事弁護クリニック」です(特に,季刊刑事弁護87号と88号)。
実際の若手弁護士の活動に対するコメントという形をとっているので,非常に頭に入りやすいです。
季刊刑事弁護はバックナンバーを購入できるので,買って読むことを勧めます。
以下の記事も,季刊刑事弁護87号を参考にして書いています。

2.どう聞くか
自己紹介と弁護人の役割を説明した後,被疑事実に関する認否を尋ねるかと思います。
このとき,被疑者国選であれば勾留状の写しを持っているので,被疑事実を読み上げて「間違いありますか?」と聞いてしまう人もいるかもしれません。
しかしながら,被疑事実を本人に語らせることで,本人の認識を把握できますし,説明能力等も推知できることがあります。
極端な例ですが,認知症の影響で,被疑事実の日時が2週間程度ずれている依頼者もいました。
私は,「警察官から,何をしたと言われていますか?」と聞くようにしています。
その後,場所とか時間とかを聞いて被疑事実を確認し,それから認否を尋ねています。

認否を確認した後,犯罪に関する事実や逮捕の状況について聞くことになるかと思います。
新人向け研修でも言われると思いますが,ここはオープンに聞くべきです。
そういえば,先日,司法面接の技術を接見に取り入れるという内容の研修を受けました(司法面接とは,被害に遭った児童などを対象にした面接手法です)。
司法面接では,「○○について教えてください」と概略を聞いて,次に「Aの時点からBの時点までについて詳しく教えてください」と詳細を繰り返し聞いていき,それからやっと5W1Hについて聞くそうです。
5W1Hは,その質問に対する答えしか引き出せないので注意が必要だと,講師の方は仰っていました。
私も接見で司法面接の手法を取り入れるようにしています。
5W1Hのフェーズで聴取するべき内容については,私は今も接見後に「あ,あれ聞いていなかった……」となってしまうので,いい方法を模索しています。

逮捕の状況を聞き取った後,自分が来るまでに取調べにどのように対応したかを聞くことになるかと思われます。
取調べの対応については,調書の記載内容についてクローズドで聞くべきです。
というのも,「調書にどう書いてありましたか?」と漠然と聞いても,依頼者は全てを思い出せないからです。
むしろ,こちらから「○○と書いてありませんでしたか?」と聞いていきましょう。

その後,取調べに対するアドバイスをしたり,勾留決定に対する準抗告に必要な事情(勾留前なら,勾留請求却下を求めるために必要な事情)を聴取していくことになると思われます。
取調べに対する方針は黙秘が原則であることは,「新人弁護士向け刑事事件対処法(1)」で述べたとおりです。
準抗告に必要な事情は,季刊刑事弁護88号の「刑事弁護クリニック」をご覧ください。
なお,準抗告についても改めて記事を書く予定はあります。
もっとも,3年間で刑事事件を50件以上扱ったにもかかわらず,勾留請求を却下させたのは1件しかなく,勾留決定に対する準抗告を通したことは1度もないので,信憑性が乏しいかもしれませんが……

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