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32.フロー状態に入るために

今回も関東遠征の後に多くの素敵な社会人の方とお会いしたので共有します。

◉スポーツドクター 辻秀一先生

辻先生は北海道大学出身でバスケでインカレを経験し、卒業後医師として活躍。その後映画「パッチアダムス」がきっかけとなり、QOL(Quality of Life,人生の質)のサポートを志すようになったそうです。そしてQOLはスポーツに詰まっていると考え、応用スポーツ心理学を通して幅広い分野で活躍されています。詳しくはオフィシャルサイトをご覧ください!

◉何を、どんな心で?

辻先生は「人間は24時間365日なんらかのパフォーマンス(行動)を行っている」と仰っていました。僕たちは「食べる」・「寝る」といったパフォーマンスをしたり、「関学でサッカーをする」というパフォーマンスを行います。辻先生にとっては「死ぬまで生きる」ということもパフォーマンスとして考えます。


パフォーマンスを構成する要素は2つ。
1つ目は戦略です。「何をするのか」という行動の内容です。
2つ目は質です。「どんな心でするのか」という行動の質を指します。
そして以下の通り、2つの要素でできたパフォーマンスが結果につながるそうです。

そして、辻先生は「人間のパフォーマンスは心の状態で決まる」と仰っていました。「どんな心で?」という質の部分も大事であるにもかかわらず、「何をするのか」という内容に固執してしまうのが人間だそうで、こういった人間の仕組みを理解することが重要だと学びました。

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◉個人や組織のパフォーマンスを、最適・最大化する心の状態「Flow」

では、どんな心の状態がいいのか?

"Flow"という言葉を教えていただきました。

Flow:自然体、機嫌の良い感じ、揺らがず、とらわれず

という意味で、
逆に機嫌の悪い状態を"non-Flow"と定義しています。

そして人間は例外なく心がフローに傾くと機能が上がり、ノンフローに傾くと機能は下がるそうです。

これは今までの感覚にもありますよね。楽しい時って何も考えずに1つのことに没頭できるし、ストレスを抱えていたりするとサッカーに集中できなくなったり病気にかかったりする。

だからいかに自分の心をマネジメントし、フローに自ら整え、導き、機能を上げて生きるかが大切であると辻先生は仰っていました。ここでいう「自分の心をマネジメントする」というのは、まずは自分のパフォーマンス(何を・どんな心で)に責任を持つということです。

辻先生が仰っていて面白かったのは、

「自分で自分の機嫌をとる、ということが自立で、それができない大人は大人の着ぐるみを着た赤ちゃんだ。」

です。なるほどって思いました。でもずっと機嫌のいい人なんていないじゃないですか。だから多分大事なのは、「今フローなのかノンフローなのか」ということを点検して気づけることなんだと思います。


◉ノンフローを作り出す”認知脳”、フローを作り出す”ライフスキル脳”

人間の脳には”認知”という機能があり、この機能がパフォーマンスの内容を決め、外界に意味づけを行います。これがノンフローを作り出す人間の仕組みです。

例えば「後半40分、0-2」という今ココの状況を見て「やばい」という苦しさ(ノンフロー)を作るのはこの認知脳のせいです。

この”認知脳が第一の脳だとすると、第二の脳に当たるのが”ライフスキル脳”です。これは認知脳が外界などの外側を向いているのに対し、ライフスキル脳は内側を向いています。

多くの人は基本的に認知脳しか使わず不機嫌(ノンフロー)になるそうです。しかし超一流のアスリートたちはこのライフスキル脳が発達しており、不機嫌な状態にある自分を受け入れ、ライフスキルを働かせて意識を自分の内側に集中させてフローへと傾けていけるそうです。

(心を整えてパフォーマンスを向上。人と会社を変えるフロー理論 www.worksight.jp より)


◉ライフスキル脳の育て方

じゃあどうやってライフスキル脳を鍛えるのかという話で、辻先生から教わったのは4つです。そしてすべての項目は認知によるノンフローと常にせめぎ合っています。認知脳と折り合いをつけ、ライフスキルを大きくしていくことが大切です。


①ご機嫌の価値を考える vs 不機嫌の理由を考えている

「雨降ってきた、地獄。」「今日暑すぎ、終わり」などなど、人間は不機嫌の理由を考えがちです。そこで「機嫌が悪いよりも機嫌がいいとどうなるか」について考えてみよう、というものです。人間の脳は最後に考えたものが脳内に残るので、ご機嫌の価値(My Flow Value)を考え、持っておくことで機嫌の良さが残るようになります

僕のMy Flow Valueは①サッカーのパフォーマンスが上がる、②アイデアが出る、③人とコミュニケーションをたくさんとれる です。これを価値として置いておくことでご機嫌になれる仕組みを作るようになりました。上げ日のときも元気よくプレーすることを心がけています。逆にこれができていないときはノンフローなので、立ち止まって振り返る必要があると学びました!


②「今に生きる」と考える vs 過去・未来を考えている

これは誰しも感じると思うのですが人間の思考の構造上、過去と未来のことばかりを考えてしまいがちです。

「ハーフタイムに”前半のことは忘れて切り替えていこう!”って言ったりするけどさ、その時点で過去に引きずられちゃってるよね」という辻先生の言葉には図星でした。

過去は変えることができないし、未来はどうなるかわからないのだから、「今どうするのか」について考え続けるのが大切なんだと学びました。

1日は84600秒だそうです。「84600回今に生きろ」とおっしゃっていたのが未だに強くのこっています。「うまくいかないときは大抵”今ココ自分”を裏切っている」そうです。


③「一生懸命を楽しむ」と考える vs 結果を楽しむと考えている

結果はビッグだけど刹那的で不安定
by 辻先生

この言葉は結果を軽視していいという意味ではなく、今を一生懸命楽しんだ先に結果がついてくるという考え方です。心を落ち着かせるためには、結果を楽しむのではなく一生懸命を楽しむことが重要だそうです。

辻先生がレスリングの吉田沙保里選手に世界大会決勝残り2秒で逆転勝利をおさめたときに何を考えていたかを聞いたところ、「私はただ、とにかく元気よく今この瞬間を一生懸命楽しもうと思っただけです。勝とうと思ってもどうにもなりませんから。」と答えたそうです。間違いなくそう思えるほどの努力があったからに違いありませんが、「これこそがチャンピオンの思考なんだ」と辻先生はおっしゃっていました。


④「ありがたい」と考える vs 文句・愚痴・言い訳を考えている

「ありがたいな」と思う気持ち、感謝の心を持つことは、そういう小さな幸せを手にするチャンスをたくさん作ってくれる。
by 長友佑都

文句・愚痴・言い訳は全て”認知脳”からくるもので、ノンフローへとつながります。だからこそ常日頃からありがたいと考えることでフローへと自分を傾けていけるそうです。
辻先生は「人のためではなく、自分のためにありがたいと考えることが大事」と仰っていました。

一個上の先輩で篠◯先輩という方がいました。ある日木鶏会で「プレーが全然うまくいかないときにどうするのか」というお題で話をしたときに

「世界にはご飯すら食べられない子供達がいるわけだから、俺の悩みなんてちっぽけだよな、ありがたいと思って切り替える」

と言っていたのを聞いて驚いた(普段めっちゃふざけてるから。笑)ことを思い出しました。


◉スポーツは元気・感動・仲間・成長をもたらす

ライフスキルもあくまでスキルでトレーニングが必要です。何度もなんども考えて習慣化させることが大切です。

そして最後に辻先生は「スポーツで元気・感動・仲間・成長を得られる。これのないスポーツは”作業”だ」と仰っていました。いい言葉だなと純粋に思いました。


学びが多く、長くなりましたが関学サッカー部も一人ひとりが自らをフローにマネジメントし、”フロー”なチームに成長していけたらいいなと思いました!

辻先生ありがとうございました!


最後までありがとうございました!