為替介入2022:基本&今回の展望
急速な円安が進行し、ドル円はいよいよ1998年に付けた147円66銭が視野に入ってきました。
日本銀行と財務省が円安に歯止めをかけるため、為替介入に踏み切るのではないかとの観測が市場関係者の間で再燃しています。
実際に為替介入は行われるのか、為替介入をして円安は止められるのかが注目ですが、今回は「為替介入の基本と、現在の状況でのポイント」を噛み砕いて説明します。
■為替介入の意味と目的
為替介入とは、通貨価値(為替相場)の急激な変動を抑え、安定化を図る目的で、通貨当局が通貨の売買を行うことです。
私たちの日常生活では日本円をつかいますが、企業や国が海外と取引や貿易をする際は日本円でなく米ドルにて取引を行うことが主流です。
円安にせよ円高にせよ、為替相場が緩やかに動く分には対応を準備することができますが、あまりにも急速な変動は経済に大きなショックを与えてしまいます。
それを抑えるために為替介入という手段が存在するわけです。
■円安・円高、それぞれの為替介入
為替介入の流れとしては、財務省が日銀に指示を行い、日銀が介入を実行します。
簡単にいえば、政府主導で為替市場で円を売ったり、買ったりするということです。
円安のケースで考えてみましょう。
現在起きているように、急速な円安は輸入価格が高騰し、国内物価も大きく上昇させてしまいます。
これを抑え込むために「円買い・ドル売り」を行います。
具体的には政府や日銀が保有するドル資産(外貨準備)を売却します。
外貨準備とは、政府や日銀が国外に保有するドル建ての資産で、主に債券などの証券になります。
円高の場合は、自動車などの日本製品が海外で売れにくくなってしまいますし、海外からの観光客も少なくなってしまうなどの影響があります。
輸出と観光を伸ばしたい日本にとって行き過ぎた円高は都合が悪いです。
なので「円売り・ドル買い」を行い、円安に誘導します。
具体的には政府が国債と同様の債務に該当する政府短期証券を発行して円を調達し、それを売るという形での円売りがメインのやり方になります。
ものすごくざっくり言えば「借金して円をつくり、それを売って円の価値の下げる」というやり方です。ちょっとイメージが難しいかもしれません。
■為替介入の種類
為替介入の基本がざっくり掴めてきましたでしょうか。
そんな為替介入ですが大きく2つの種類があります。
それは1国のみで行う「単独介入」と、複数の国で行う「協調介入」です。
例えば2011年の東日本大震災、詳しくは割愛しますがこの時は投機筋の動きもあり急速な円高でした。急速な円高を放置することは日本のみならず自国にも影響が大きすぎるということで各国が協力して円高是正のための協調介入が行われました。
このように協調介入は、各国の意見が合致して発動されます。
逆に意見が一致しなければ、協調介入に至りません。
さて、ここでとても重要なのは、「単独介入の効果は、協調介入に比べて効果は薄い」ということです。
複数の国が協力してはじめて、為替相場の流れを動かすことができるのであり、単独介入だけではその効果は限定的となるということです。
■今回の為替介入の展望
仮に今回、為替介入が行われた場合は単独介入になる見通しが強いです。
まず第一に、「為替レートは市場において決定されるべき」というのが先進国の共通認識であり、為替介入そのものが極めて例外的な措置というのが理由として挙げられます。
(そもそも為替介入は協調介入が基本であり、G20加盟国においても単独介入を過去におこなってきたのは日本、スイス、オーストラリア、ニュージーランドなどごく僅かになります)
そしてなによりも、今回の円安是正のためにはアメリカの協力が欠かせませんが、アメリカが為替介入に協力する可能性は非常に低いと言われています。
現在アメリカは約40年ぶりの記録的物価上昇に苦しんでいます。物価上昇の原因は複合的なものではありますが、原油をはじめとした輸入資源の価格高騰も大きな要因のひとつです。
足元のドル高は輸入において有利になります。歴史的なインフレをなんとしても沈静化したいアメリカにとってドル高は好都合であり、日本の協力をしている場合ではありません。
上記の理由から今回の為替介入は単独介入となると思われています。
単独介入の場合、一時的に円高に振れることあっても。大きな円安の流れは変わらないだろうという見通しが強いです。
円安の主要因はアメリカをはじめとした各国との政策金利差です。
各国がコロナで引き下げた金利を上げてきている中、日本のみが低金利を維持し、その方針も変えていません。
金融緩和のスタンスを日銀が変更しないかぎり、為替介入をしても円安の根本的な解決にはならないのです。
■過去からみえる為替介入の異例さ
ここで過去の代表的な協調介入を一覧でみてみましょう。
国際的な協調介入が最後に実施されたのは2011年です。このように並べると協調介入がいかに例外的な措置というのが分かりますね。
今回は為替介入の基本と、現在の状況での為替介入のポイントについて説明をしてきました。
メディアなどでは為替介入の単語が一人歩きしていますが、「単独介入の場合の効果は限定的」ということを意識して相場を観察することが大切になります。
今回の円安をうけて、外貨資産の重要性を意識されている方も多いと思います。
外貨資産が重要なのは間違いありませんが、冷静さを失って極端な行動を起こさないよう、為替をはじめ正しい経済知識を身につけていきましょう。
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