【自分用】TSLPとアレルギー

J-STAGE 総説
山梨大学医学部免疫学講座 中尾 篤人 先生

https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/62/5/62_KJ00008686832/_pdf


はじめに
2002年に上皮細胞から産生されるtymic stromal lymphopoietin(TSLP)がTh2の分化を誘導することが報告されて以来、様々なことが判明し、今ではアレルギー性炎症の"マスタースイッチ"と言われている。
TSLP産生細胞、受容体、細胞内シグナル伝達経路
・TSLPはB細胞増殖因子として同定されたIL-7様サイトカインである
・その受容体はIL-7受容体α鎖TSLPRの2つのサブユニットから構成される
・産生細胞は多岐に渡るが、特にアレルギー疾患との関連で言えば上皮細胞である
・受容体は主に血球系の細胞に選択的に発現している
・シグナル伝達経路の詳細は不明だが、下流のNF-κBJAK1/2STAT5/6PI3K経路の活性化が報告されている
TSLPとアレルギー性炎症
・ケラチノサイトにTSLPを発現させるTgマウスを作製すると、アトピー性皮膚炎の病態に類似したマウスが出来る
・ヒトにおいても、TSLPは病変局所で顕著に増加している
TSLPによるTh2細胞分化誘導のメカニズム
・最も有力なのが、樹状細胞におけるOX40L分子の発現誘導を介したナイーブT細胞からTh2への誘導である(図2)
・上皮細胞から産生されたTSLPは未熟樹状細胞に作用しMHC分子やCD80/86などの副刺激分子の発現上昇のみならずOX40Lの発現も誘導させる
・通常のTLRからの刺激のみではOX40Lの発現は誘導されずIL-12の産生増加とともにTh1への分化が誘導される
・このTSLPによるOX40Lの発現誘導には、樹状細胞におけるSTAT5の活性化が重要である報告がある
TSLPの発現調節機構
・ケラチノサイトでは、TLRリガンドRNAウイルス粒子そのものがTSLPの発現を誘導することが報告されている
パパインなどのタンパク質分解酵素がPAR2を介して気管支上皮細胞からTSLPを誘導する報告もあることから、タンパク分解酵素活性をもつダニアレルゲンがアレルギーの発症に寄与している可能性
アレルギー性炎症維持期においては、アレルゲンに対する暴露があると上皮細胞で再度TSLPが誘導され、アレルギー性炎症が惹起される。この発現誘導にはマスト細胞のアレルゲン特異的な活性化によるIL-13などの産生が一部関係している(図3)

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